第39話 おっさん、砂嵐の時を過ごす

 びゅうびゅうと風が吹き、ザーザーと砂が木窓に当たる音が聞こえる。

 外は砂嵐になっているのだ。

 脱走兵をオアシスに収容したタイミングだったのは、運が良かったとしか言いようがない。


 一時的な休戦といった所だろうか。


 さて、パソコンを買おう。

 安いノートパソコンだと4万円か。

 表計算とワープロソフトが3000円の追加でいける。

 プリンターは1万しない奴でいいだろう。


魔力通販メールオーダー


 パソコンとプリンターが現れる。

 何故パソコンを買ったかと言えば事務処理が大変だからだ。

 手書きでやって電卓をポチポチやるのは勘弁してほしい。


「外字を作るから協力してくれ」

「はいな」


 アルマが手を挙げてくれた。


「あから順番に文字から作るぞ」

「うちは文字の表を紙に書けばええんやな」


「そうしてくれ」


 ドットをポチポチ打って文字を作る。

 文字が46個しかなかったのは幸いだ。

 作業が思いの他早く済んだ。


 次に問題になったのは紙だ。

 正式書類はなんと動物の皮。

 プリンターに無理やり突っ込んだが、案の定くちゃくちゃになった。


 仕方ないので、コピー用紙に印字して皮に清書してもらった。

 清書は文字が書ける人間なら誰にでも出来る。


「清書が終わりました」


 脱走兵の一人が皮に清書した物を持ってくる。

 ざっと目を通し、間違いがないか確認して印鑑を押した。


「持ってってくれ」

「はい」


 ふう、これからは事務仕事がかなり楽になるな。

 外の様子を窺うと砂嵐は収まってなかった。


「三人とも見回りに出るぞ」

「はいな」

「えー、こんな中を行くの?」

「嵐、なんて心を揺さぶるフレーズ。悪魔の咆哮が肌を叩く。恰好良い」


「とにかく、行くぞ」


 砂がうっとうしいが魔力壁があるので目に入ったりはしない。

 アルマ達も生身じゃないので、問題ないようだ。

 歩いている人間はほとんどいない。

 俺達はオアシスを出て、流砂地帯までやってきた。


 石塔が微かに見える。

 ふむ、異常なしだな。

 俺ならこういう時に攻め込むんだがな。


 しばらく立っていたが、俺の心配は杞憂だったと思いオアシスに戻った。

 相手の参謀はさほど優秀ではないらしい。


 アルマ達アシスタントのビーコン機能は優秀だ。

 砂嵐の中、迷うことなくオアシスに帰還できた。


 家に帰り、砂を落とす。

 着ている物の中までしつこく入り込んでいるので、洗濯する事になった。

 アルマ達は帰還させたら砂を残して消えた。

 帰還は便利だな。

 食べた食べ物は残さないので、体内に入ればどこか別の空間に持っていけるみたいだ。

 これを使えば異世界間交易ができるかもな。


助手アシスタント、来いアルマ、エリナ、モニカ。突然だが実験したい事がある」

「なんですやろ」


「飴を渡すから飲み込まないでほしい」

「変な実験ね」

「何や意味があるのとちゃいますか。エリナはん、やりましょう」


 飴を渡して口に入れ帰還させる。

 おー、飴は落としてない。


助手アシスタント、来いアルマ、エリナ、モニカ。どうだ、飴は口の中にあるか?」

「ある」

「私もあるわ」

「存在」


 別の世界に行ってこれが出来れば、魔力通販が使えなくても品物が出せる。

 覚えておこう。


「実験に協力したんやから、うちはカップ麺が食べたい」

「私はカレーね」

「牛丼」


「はいはい」


 流砂地帯のそばに小さい砦が欲しいな。

 俺は餃子を食いながらビールを飲み、そう考えた。


 建設費用が出ないな。

 砦一つ分のコンクリートを出すには魔力がかなり要る。

 それこそダンジョンでも攻略しない限り賄えない。

 戦闘が終わらないとダンジョンまで遠出は出来ないし。

 戦闘を終わらすのにはダンジョンの魔力が要る。

 あちらを立てればこちらが立たずだ。


 いっその事、戦闘は無視してダンジョンに遠征するか。

 いいや、その間にオアシスが落とされたら本末転倒だ。

 ここは我慢だ。

 我慢するしかない。

 勝負事はしびれを切らした方が負けと相場が決まっている。

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