第36話 おっさん、アドバイスする

 爆竹をぶら下げたドローンが敵モレク騎兵を追う。

 懸命に逃げる騎兵。

 馬鹿だな逃げ切れる訳ないのに。

 至近距離で爆竹が鳴り、モレクが暴れ騎手を振り落とす。


 これは配備決定だな。


「なんか敵兵の体調が悪そうなんだが」


 ロバスが不思議そうな顔でそう言った。

 そうなんだよ。

 最近の敵兵は覇気がない。


「砂漠病だと思うぜ」


 ラバルが答えをくれる。


「これが砂漠病か? 人体実験したいから、敵兵士を捕らえるぞ」


 爆竹を使いモレクを驚かせてから、メイスで打ち倒し敵兵士を捕まえた。

 見た目は病気という感じではないな。


「これを飲め」


 俺はビタミン剤を差し出した。


「毒か。俺達を殺すのか」

「いいから飲め」


 剣で殺されるのも毒で殺されるのも同じと思ったのだろう。

 敵兵士はビタミン剤を飲んだ。


「よし、お前らは捕虜だ。きりきりと歩け」


 捕まえた敵兵士はビタミン剤を飲ませていたら、1週間ほどで良くなった。

 何故か感謝されて彼らは元気に労働している。


 やっぱりビタミン不足だったか。

 オアシスでは野菜は高いからな。

 普段から摂取量が少ないのだろう。


 味方の戦士はオアシスに頻繁に帰って、野菜を食っているから問題ないが。

 交易に出かける奴らにはビタミン剤を支給するようにしよう。


「けっ、やってられねぇ」


 今日もいつもの様に戦闘へ出かける準備をしていたら、バドンが吐き捨てるように言った。


「やさぐれるなよ」

「隊長はいいよな。奥さんが三人もいるんだから」


「なんだ彼女が欲しいのか」

「欲しいけど、チビの俺じゃあ」


「気になる子がいたら声を掛けたらいい」

「無理だよ。できっこない」


 困った奴だ。

 俺もキューピッド役は御免こうむりたい。

 だが、こういう奴は他にもいるんだろうな。

 戦闘が長引いているので不満が溜まる。


 仕方ない。

 あれを使うか。


 俺は水着写真集を出した。


「うほっ。隊長に一生ついていきます」


 暑いと薄着のイメージだが。

 砂漠では日焼けを防ぐために長袖でズボンやスカートも丈が長い。

 そのぶん、生地は薄いがな。

 何が言いたいかというと水着は十分に刺激的って事だ。


「う、美しい」

「良いねぇ」

「おで、気に入った」

「かぁ、たまんねぇ」

「見ろよ、これなんて凄いぞ」


「まったく、男はこれだから」

「エリナ、男なんてみんなこんな物だ。余裕がある奴は面に出さないが、それだけだ」


 さて、戦っている味方に水着写真集を配備するのは決定だな。

 ヘアヌード写真集なんてのもあるが刺激が強いから、水着に飽きたら使おう。


 やっぱり、これだけだと不味いよな。

 ムラムラして犯罪を犯す奴も出そうだ。

 仕方ない、次の手を打とう。


「アズリ、婚活パーティを主催してくれ」

「私がやるの」

「ああ、こういうのは独身がやるものだ」

「そんな決まりがあるのね。知らなかった」


 めんどくさい事を押し付けられそうだ。


「頼む」


 で、どうなったかと言うと。


「駄目だ。俺はやる気を失った」


 婚活パーティから帰って来て、ラバルがそう言った。


「どうしたんだ」

「アタックがことごとく失敗した。俺達の小隊は全滅だ」

「いくつかアドバイスしてやるよ。まずは身だしなみだ。小ぎれいにしろ」

「湖の水で水浴びして行ったんだけど」


「駄目だ。湖の水は臭い。嫌われるぞ。仕方ないな。ボディシャンプーとシャンプーを出してやる。ついでに水道水もだ」

「隊長、恩に着るよ」


「それだけだと不十分だな。液体歯磨きも出してやる。これで匂いは良いだろう。後は髭だな」


 充電式の髭剃りを出して、ヘアスプレーも出してやった。

 着る物はこちらの世界には合わないな。

 今回は見送ろう。

 アクセサリーは安い腕時計で良いだろう。


「おー、仕上がったな。お前ら、男前になった。よし、ハートを射止めて来い」


 そして。

 全員に彼女が出来た。

 この事を知った他の男達が、色んな物を要求してきて大変だった。

 贅沢を知ると始末に負えないな。


 女達もボディシャンプーとシャンプーを要求。

 結局、その二つは衛生上必要だという事で配給する事になった。

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