第35話 おっさん、ゲリラ戦をする

 砂に潜って敵を待つ。

 まだか。

 来た。


「うぉー。撃て」

「食らいやがれ」


 砂から身を起こし、ボウガンを撃つ。

 モレクには当たったが致命傷には程遠い。

 ヴァンパイヤモスキートの針が通らないほどの皮膚だ。

 頑丈なのは仕方ない。


「敵襲」


 敵兵が叫ぶ。


 敵小隊は弓をつがえると撃ってきた。

 モレクが俺達が放ったボウガンの矢で、興奮していて暴れているので、全て外れた。


「ボーラを投げろ」


 結局は原始的な道具に頼るのか。

 ボーラはくるくる回りながら飛び。

 モレクの足に絡まる。


 モレクはもつれて敵兵と共に倒れ込んだ。

 俺達は落馬した敵兵に止めを刺した。


 鹵獲したモレクをアルマに預けオアシスまで運んでもらう。


 次はもっと上手くやってみよう。

 双眼鏡で敵兵を探しながら進む。


 居た。


「砂に隠れるぞ」

「了解」


 砂に隠れて待つ。

 10メートルぐらいに寄ってきた。

 俺は爆竹にライターで火を点けて投げた。

 それが開戦の合図になった。


 爆竹の音に驚いて敵兵が乗っているモレクが暴れる。

 俺はモレクを倒して回った。


「隊長、全部やっちまうなんて、酷いですよ」

「つべこべ言わずに、落馬してうめいている奴に止めを刺せ」

「了解」


 爆竹でモレクをパニックにさせてから、やる方が効率が良い。

 爆竹とライターは安いから他の隊にも支給しよう。


 そして、数日が経った。


「モレクを捕まえて来る他の隊も増えた。モレクも余っている。俺達もモレクに乗りたいと思うがどうだ?」

「なら、俺は隊を抜ける」


 ライムがそう言った。

 こいつはモレクが嫌いだったな。


「モレク嫌いに理由があるのなら話してみろ」

「子供の頃、モレクに噛まれたんだよ。それ以来1メートルぐらいに近寄られると、体が硬直しちまう」


 うーん、トラウマの克服は難しい。

 餌を持って優しく世話しろよと言いたいが無理だろう。


「そうだ、子供のモレクなら怖くないだろう」

「おう、やってみるよ」


 モレクが繋がれている厩舎から子供を一頭連れ出した。

 モレクの子供はくりくりした目でふさふさな毛並みをしている。

 成長すると毛足が短くなる。

 たぶん砂漠の夜が冷えるので、子供のうちは体温を奪わせないようにする為だろう。


 子供は何でも可愛いな。

 たとえ、モンスターの子供でも可愛い。


「怖くないだろ。自分より小さいのだから」


 俺は魔力通販でリンゴを買いライムに持たせた。


「ああ、怖くない」


 強がってはいるがライムは震えている。


「餌をやって撫でてみろよ」


 ライムは恐る恐るリンゴを差し出し、子供のモレクは平らげた。


「うひっ」

「ほら、後は手を伸ばして撫でるだけだ」


 ライムがぎこちない手つきで子供のモレクを撫でる。


「簡単だろう。犬を飼っていると噛まれるのもコミュニケーションだと分かる。強く噛む時は不快なだったり怒っている時だ。軽く噛むのは甘える時だと思う。言葉が喋れないから言葉の一種だな」

「そうなんですか」

「ちゃんとしつければ噛まなくなる。噛まれた時はよっぽどだと思った方がいい」

「撫でると嬉しそうなのは人間の子供と一緒ですね」

「それも彼らなりの言葉だ」


 後は段々と育ったのと取り換えて行くだけだ。

 日が暮れる頃にはライムはモレクに触れるようになった。

 後はアダドが太っているので、モレクが長時間、走れないという事だな。

 この解決は簡単だ。

 空のモレクを用意して

 頻繁に乗り換えるだけだ。


 モレクに乗ると広範囲の移動が出来るのは良いのだが、爆竹は使えないな。

 自爆するかもな。

 走っている状態で投げても、見当違いの所に行く可能性が高い。

 何か考えないと。


 ボーラもボウガンもモレクに乗っていると命中率が下がる。

 槍を持っての突撃はしたくない。

 遠距離攻撃で命中率の良い物が必要だな。

 ドローンが使えるかも。

 爆竹をドローンに付けて飛ばせば敵兵に近づいた所で爆発させられる。


 これでやってみるか。

 爆竹を付けるのならカメラ搭載の奴でなくて良い。

 3000円ほどで買える。

 3人の魔力で一個出せるから、全員に装備するのも容易い。

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