第141話 おっさん、さらに強くなる
「依頼が来ましたよ」
古代文字科の研究員がそう言って来た。
「遂にダカードの尻尾を掴んだのね。これで実家に迷惑を掛けずに済むわ」
「パティ、慌てるな。誰の依頼か聞いてからだ。それで誰からの依頼だ」
「フェビル子爵家からです」
「そうかありがとう。世話になったこれで一杯飲んでくれ」
そう言って銀貨を押し付け研究員を帰した。
「最悪ね」
「どういう事だ」
「フェビル子爵家ってのはダカードの実家よ。殺された子息の話では勘当されているはず。戻ったのね。許されたとすれば手出しできないわ」
「ふん、構うものか。俺はやるぞ」
「どうやって」
「おびき出せばいいだろう」
「上手くいくかしら」
「やってみるまでだ」
さて、どうする。
古代文字の研究家が依頼に応じれば、フェビル子爵家に呼ばれるはずだ。
金属板は今もダカードの手の内だろう。
俺は一計を案じる為に古代文字科を訪ねた。
「悪い事は言わない。フェビル子爵家の依頼に応じてのこのこと行ったりすると解読した瞬間にばっさりだ」
「えっ、そんな。どうしたら」
「古代文字の写しを送れと言うんだ。学園を離れる事はできないとな」
「そうですね。それなら、失礼にもならないかと」
「時間稼ぎしている間に俺が決着をつけてやる」
そう言って俺は古代文字科を後にした。
そして、迎えの馬車が来ている所に行った。
この馬車は俺達が使っていた奴だ。
ええと、車輪の跡を取った透明なテープがあったはずだ。
照合すると新しい傷は増えてはいるが、確かにこの馬車だ。
やっぱりダカードは実家に帰ったのだな。
これで確信が持てた。
作戦を立てる必要があるな。
「パティ、古代文字の研究家として乗り込んでみたらどうか」
「駄目よ。私はダガードと面識があるから、会った途端にばれるわね」
「うーん、それはあてが外れたな」
さて、どうしようか。
研究家を名乗れないとすると、別の手が必要だ。
それは後で考えるとして、向こうにとりあえず行くとするか。
案外ダガードは護衛もつけずに遊び歩いているかも知れないし。
研究員は依頼に応じないだろうから、時間は稼げた。
急いで行く必要もないな。
よし、ダンジョンを攻略しよう。
きっと切った張ったの展開になるはずだから、レベルは高い方が良い。
近場で良いダンジョンは蟻の巣ダンジョンだな。
「よし、蟻の巣ダンジョンに行くぞ」
「分かったわ、戦力増強ね」
ビッグスクーターを走らせるとダンジョンまではあっという間だった。
さてと、まずは中に入って。
出て来た蟻のモンスターの足を折って動けなくして生贄の魔力回路の上に置いた。
その魔力でホウ酸と砂糖と小麦粉と水を買うのだ。
一時間ほどで攻略に必要な材料は揃った。
「まさかダンジョンで団子作りをするはめになるとはね」
「これを撒けば蟻なんてイチコロさ」
通路にホウ酸団子を撒くと蟻のモンスターが群がって食べた。
毒に弱った所を生贄にして魔力を吸い取る。
ホウ酸団子を作るの無限ループだ。
ボスは流石にホウ酸団子に見向きもしなかったが、100レベルを超えた俺の敵じゃなかった。
通路のモンスターはホウ酸団子で一掃。
ボスはレベルに任せたごり押しの攻略。
簡単だった。
まあ、こんな攻略を金を払ってやれば破産すること間違いなしだ。
「この豪華な扉を見るに、ここがラスボスだな」
「団子を見るのはもう嫌よ」
「よし、入ろう」
ダンジョンのラスボスは女王蟻だった。
次々に産み出される兵隊蟻。
「ホウ酸団子が効くかな」
「えー、こねるのはもう嫌よ。腕がパンパン」
「仕方ない。まずは今まで作ったホウ酸団子を全てばら撒いて」
よしよし、食ってる食ってる。
「パティは弱った兵隊蟻を生贄にしてくれ」
「任せて」
生贄により魔石に魔力が十分に溜まった。
「
本来ならセメントをこねる奴だがいいだろう。
よし、こねるのが追いつかなくなるか勝負だ。
「バリバリ、ホウ酸団子作るぞ」
「こういうのがあるなら早く出しなさいよ」
「まあ事情があるんだよ」
兵隊蟻にホウ酸団子を食わせる闘いが始まった。
そんな攻防を二時間ほど続け。
遂に女王蟻は兵隊蟻を産み出さなくなった。
メイスで女王蟻の頭をかち割り、ダンジョン攻略完了。
「ステータス」
――――――――――――――
名前:山田 無二 LV271
魔力:18158/27100
スキル:
収納箱
魔力通販
次元移動
分解
想像強化
――――――――――――――
よし、レベル300近くなった。
「パティもレベルが上がったか」
「ええ、5上がったわ」
「よし、フェビル子爵領に乗り込もう」
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