第112話 おっさん、子供達を使う

 宿に引き上げるとパティが帰って来た。


「どうだった」


 俺の問い掛けにパティは無言で首を横に振った。


「俺の方はギルドとダンジョンをあたったが駄目だった」

「私は商人と情報屋をあったってみたけど、芳しくないわね」


「どうする? 他の街に行くか」

「他の街に行くとしても、何か手がかりをつかまないと」

「じゃあ期限を決めよう。十日間、粘ってみて駄目だったら次の街に行く」

「ええ、そうしましょ」


 さてどうするか。

 焦っても仕方ない。

 地道に行こう。


「リータちゃん。近所の子供達を集めてくれるか」

「うん、いいよ」


 程なくして10人ほどの子供達が集まった。

 俺はスーパーボールを魔力通販で買い、一つ手に取り壁に投げた。


「すげぇ。弾んだぞ」

「こんな事も出来る」


 俺はスーパーボールを地面に投げつけた。

 屋根より高く上がるスーパーボール。

 子供達の食いつきようといったら、俺の一挙手一投足に注目していた。


「このスーパーボールをあげよう。知り合いの子供達を紹介してくれたら、一人につき一つ。この人相書きの人間を見つけたらなんと1000個上げよう」

「ほんと。おいら友達は多いんだ」

「どんどん連れてきてくれ」


 程なくして。


「連れてきたよ」

「五人だな。じゃ五個だ。連れて来られた子には一個だ。知り合いの子供達を紹介してくれたら、一人につき一つ。この人相書きの人間を見つけたらなんと1000個上げよう」

「すげぇ」

「女の子にはビー玉だ」

「わぁ綺麗」


 スーパーボールは女の子の食いつきが悪かったからな。


「おいら、長く遊べる物がいいな」

「スーパーボールはお気に召さないかい」

「投げ合うのも楽しいけど。取りそこなうとすぐどっか行っちゃうんだ。もう三個もなくしたよ」


 投げるとスーパーボールはどこかに行ってしまう率は高いな。


「じゃ、メンコだ。地面に置いて叩きつけると風でめくれる。めくったら勝ちだ」

「これほしい」

「今回は特別に五枚あげよう。友達をいっぱい連れてきてくれよ」


「私、女の子も遊べる物がほしい。ビー玉は眺めて遊ぶものでしょ」

「いやいや、ビー玉を投げてぶつけて遊ぶ遊び方もある」

「傷が出来ない?」

「出来るな。それじゃゴム紐だ。ピンと張って飛び越えられるか競うんだ」

「体を動かすのはちょっと」


 難しい注文だな。


「じゃ知恵の輪だ。これは外せるかどうかを考えるんだ。力を入れて外したらだめだぞ」


 かちゃかちゃとやり始める。


「これ面白いわ。気に入った」

「人相書きの人間を見つけたら、もっと難しくて面白いのをあげるよ」

「ええ、頑張ってみつける」


「僕は体と頭を使うのが良いな」


 また難しいの注文が来た。

 戦略性があって体も使うと。

 そしてただで上げるのだから安い物と。


 祖父さんから聞いたあれにするか。

 俺は五寸釘を魔力通販で買った。


「これを地面に投げて刺す。交互に刺す。刺したら線で結ぶ。線を跨いだら負けだ。相手をいかに上手く囲むかが重要だ」

「試してみて良い」


 子供が熱心に遊び始めるのを見る。


「やった勝った。これ頂戴」

「人探しも忘れるなよ」


「俺、札遊びが良いな」


 また難題が来た。

 一枚で遊べて、ギャンブル性があるような奴か。

 デッキを組むような奴はだめだな。

 トランプの系統は札がそろってないと。

 難しく考えるからいけないのか。

 子供ってのは遊びの天才だ。

 道具さえ与えてやりゃ勝手に遊ぶ。


 俺はボール紙とボールペンを魔力通販で買った。


「紙とペンをやるから自分で作れ」

「貰ってもいいの」

「ああ、友達を連れてきたら紙を一人に付き一枚やろう」

「連れてくるから、待っててね」


「ちょっと、その子はさっき連れてきたわよ」

「ちぇ」

「ずるはいけないわ」


 勝手に規則違反を見つけてくれる子も現れる。


「よし、ビー玉一個やろう」

「私の目の黒いうちは不正を見逃さないわ」


 子供達のネットワークが順調に構築されていく。

 これはひょっとしたら、子供達があいつらを見つけてくるかもな。

 見つけても手を出さないようにきつく言っておいたから、危険な事はないだろう。

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