第113話 おっさん、遺跡を見物する
次なる手は。
「ガイドさん、今日はよろしく」
「あんたも酔狂だね。遺跡街に住む予定もないのにガイドなんか雇ってさ。まあ、こっちは金がもらえりゃなんでもいいが」
「どんな感じなのか知りたかったんだよな」
俺は遺跡街と呼ばれるビル群の一つにガイドと共に立ち寄った。
まずは人が実際に住んでいる部屋だ。
「こんにちは」
「こんにちは、今日の住宅見学はその人なの」
「いつも部屋を見せて貰って悪いね」
「いいのよ。お金も貰っているし」
「どうだ。良い部屋だろ。一部屋借りてみちゃどうだ」
「この街にいつまで居られるか分からない」
「気が変わったら事務所まで来て声を掛けてくれよ」
「ああ、その時はな」
部屋は現代の暮らしが異世界によみがえったようだ。
ガラス張りの窓に木工の家具。
そして、ステンレスであろうキッチン。
電化製品の代わりにある発掘品の数々。
床は木で、その上には絨毯が敷かれていた。
なるほどね。
この街の上流階級はこういう暮らしをしているのか。
「参考になったよ。奥さんありがと」
「おかまいもしませんで」
「ガイドさん、空き部屋に案内してくれ
「はいよ」
ここの遺跡は発掘され尽くしているとは言え10階から上はお宝の山だ。
あいつらがいないとも限らない。
俺は11階の空き部屋の一つに案内された。
確かに人が住んでいない。
なぜ分かるかと言えば扉が壊されているからだ。
「扉が壊されているのはなんで」
「元々は鍵がかかった扉があったんたけど、入れないものだから力ずくで」
「入居者が入る時に扉を直すって訳か」
空調の発掘品を観察する。
小型の冷蔵庫ほどの大きさで空気の取り入れ口と吐き出し口がある。
手を掛けて重さを確かめる。
冷蔵庫ほどの重さだな。
ケーブルが壁につながっていて操作パネルが壁にある。
たしかにこれは切断すると使えなくなる可能性大だ。
家具は全て持ち出されているようで部屋には何もない。
操作パネルを前に俺は分解してみたくなった。
「
「ちょっとお客さん。困りますよ。この部屋に入居を希望する人が出るかも知れない」
「後で元に戻しておくよ」
スキルで分解すると魔石が現れた。
魔石の中には魔力回路がある。
異世界アルリーの物とも違う魔力回路だ。
形はこの世界の文字に酷似していた。
俺はまだこの世界の文字が読めない。
非常に興味をそそられたが読めない物は仕方ない。
俺は操作パネルを元の状態に戻した。
ガイドは空調の発掘品が作動するか確かめている。
「勘弁して下さいよ。壊れてなかったから良かったものの。壊したら組合に睨まれちまう」
「悪かったな。もっと上の階に行きたい」
「上の方なら無茶しても大丈夫なんて考えないで下さいよ」
「ああ、無茶しない」
階段を上り最上階の33階に行った。
部屋の間取りは下と変わりない。
家具や一切の物がないのも同じだ。
「エレベーターがあるだろ」
「エレなんですって」
「ああ、悪い。昇降機だ。部屋の上と下を行き来するのがあるだろう」
「それは使えませんよ」
「いいから、案内しろよ」
俺は一階のエレベーターの扉の前に立った。
扉を手でこじ開ける。
中は空洞で暗闇の世界だ。
俺はライトで上下を確かめるように照らした。
ゴンドラはちょうど上の階で止まっている。
上の階に行きエレベーターの扉をこじ開け中に入り込んだ。
ボタンがいくつかあるので適当に押してみる。
「駄目でしょ。さんざん学者なんかも来て試してます」
「そのようだな。ロック解除」
俺は赤いボタンを押してマイクに向かって言った。
ボタンのアイコンは通話を意味する電話の形だったからな。
「管理者パスワードをどうぞ」
「えっ、何が起こったんですか」
「災害が起こるとこの手の機械は止まる。止まると再び動かすには手続きが必要だって事だ」
「だんな、詳しいですね。さすが冒険者。遺跡にもお詳しいので」
「少しな」
「それで昇降機は動くんですかい」
「駄目だな。パスワードがないと」
さて、ここの遺跡の現状は分かった。
これは稼げないな。
やつらも同じに思うはずだ。
これならギャンブルの方がまだいい。
そうか賭場をあたってみるのもいいか。
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