第7話 おっさん、街に着く
街道を進む事7日。
モンスターとの戦闘は度々あり、今日もゴブリンと遭遇した。
「そっちに行くぞ! 気をつけろ!」
「かまへん。レベルも大分上がったさかい」
アルマの撃ったクロスボウによってゴブリンが倒れた。
俺は素手で目の前にいるゴブリンを殴る。
ゴブリンの頭が陥没し、辺りに肉片やらが吹き飛ぶ。
地上のモンスターは倒しても肉体が消える訳じゃないから、俺は嫌いだ。
棍棒を振りかぶってきた相手を棍棒ごと粉砕する。
何か後ろで触られた感触があったので振り返った。
棍棒を振り下ろしたゴブリンがあっけにとられ固まっていた。
ゴブリンの頭を掴むとゴブリンを武器代わりにして他のゴブリンに叩きつける。
ゴブリン相手だと無双だな。
振り回してしたゴブリンがボロボロになった時にはゴブリンの集団は全て死んでいた。
「レベルは幾つになった?」
「レベル4や」
アルマに俺は尋ね、アルマは得意げに答えた。
ゴブリンの安い素材は無視する。
クズ魔石を取り出す為に血まみれになるのが嫌だったとも言う。
◆◆◆
日が暮れる頃には街が見えてきた。
しばらく、ここを拠点に活動しよう。
「宿泊二人だ」
「あいよ。部屋は一緒にするかい」
「別々にしてもらおう」
アルマをみるとホッとした表情をみせた。
正しい選択だったようだ。
「アルマ、俺は用事がある。先に寝ていても、いいぞ」
「はいな」
夕暮れのスラムに出かける。
スラムはどこも同じ様な場所にある。
城壁近くの日の当たらない場所だ。
じめじめしていて、嫌な臭いがする。
「顔役に会いたい。頼めるか」
子供がいたので話し掛けた。
「おっちゃん誰」
「他所の街のスラムにいた。事情があって街を移ったから挨拶したい」
「うん、分かった」
顔役が話の分かる人だと良いんだが。
スラムの奥に連れられて、ぼろい家に入った。
「ケイムのおっちゃん! お客さんだよ!」
子供が奥に向かって声を掛ける。
俺は子供にお駄賃の銅貨5枚を渡した。
「おう、遠慮せずにはいんな!」
奥の部屋からだみ声がした。
「じゃまする」
俺は声を掛け緊張しながら奥の部屋に入った。
薄暗い部屋には壮年の男が椅子に腰掛けている。
「ケイムだ。まあ、座ってくれ」
ケイムは顎をしゃくった。
「じゃあ遠慮なく。ムニだ」
俺は椅子に腰掛け言った。
「で、おまえさんは何をやらかした?」
「いえね。ポーターをしていたんですが、パーティの犯罪の現場を見て殺されそうになりまして」
「それはつらいな。スラムの人間は信用がないから、訴えるのも難しい」
「ええ、そんなところで」
「なにをして欲しい?」
「そちらは追々とりあえずは闇商人がきたら仲介してもらいたい」
「ああ、いいだろう」
ケイムは頷いた。
「それと追っ手が来るかも知れない。怪しい奴らが来たら知らせてくれ」
「分かってるよ」
連絡の取り方を決めて、御礼の品、コピー用紙、瀬戸物とガラスの食器、包丁、タオルを渡した。
この世界の人間に魔力通販の物を渡す時に気をつけている事がある。
食料品は絶対に渡さない。なぜかというと魔力で出した物がいつ元の魔力に戻るか不安だからだ。
血肉になった食品が魔力に戻ったら大惨事になる。
俺は自分のスキルで死ぬのなら良いと決心したから、平気で食っていたけど。
メシまずに耐えられず誘惑に負けたともいう。
魔力通販の物が魔力になるのは俺が死ぬ時だと最近は考えている。
永遠に物体でいる可能性もあるが危険に他人を巻き込みたくない。
それとこちらは解禁しても良いと考えているが現代知識がなくては明らかに作れない物は避けている。
魔力通販の有用性が他人にばれた時に監禁して道具として使われるのを回避したかったからだ。
レベルが100を超えたので危害を個人レベルで加えるのはまず無理だから、今後は少し考えたい。
殺されかかった事で俺の中でタガが一つ外れたような気がする。
ダンジョンを一つ討伐したのだから、全て討伐してしまえば良いんだという考えになった。
どうせ、ばれれば死罪なんだ。この糞ったれの異世界に愛想が尽きたのかもしれない。
その為に討伐してもばれ難いダンジョンを探すとしますか。
レベルが上がって手がつけられなくなるまでばれなきゃいいんだ。
明日は情報を得る為に冒険者ギルドに行って、ついでに退職金代わりの魔石の代金を頂くとしますかね。
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