第8話 おっさん、ギルドに行く

 次の日アルマを連れて冒険者ギルドに出かけた。

 冒険者ギルドは花形ギルドだけあって小奇麗で受付には可愛い女性が揃っている。

 アルマを空いているベンチに座らせ、俺は窓口で魔石の伝票を差し出した。

 受付嬢は銀髪のタレ目の女の子で眠たそうな目をしている。


「換金を頼む」

「はい、これはどうなさったのですか? ここから離れたダンジョンの伝票ですけど」


 俺の言葉を聞いて伝票を手にとり受付嬢は目を少し見開いた。


「盛大に喧嘩して逃げるように街をでたから、お金に替える暇がなかったんだよ。何か文句があるのか」

「さようですか、金額も少ないようですし、問題ありません」


「銀貨41枚です」

「ちょっと少ないんじゃないの」

「お客様、ポーターですよね。ポーターは冒険者の半額しか受け取れません」


 格差社会ここに極まれりだな。


「噂話とかあったら聞かせてくれるかな」


 俺はトレーに乗っている銀貨を3枚摘まむと受付嬢に握らせ言った。


「アルフォスのダンジョンで一日、機能が停止したらしいですよ」

「俺がいた所だ。それで?」


「復活したのは良いですけど、モンスターが弱くなって、魔石も凄く小さくなったらしいです」


 復活したのか、あのダンジョン。でも元通りとはいかないみたいだ。

 復活するなら魔力を抜き取る方法で討伐しても問題が小さいな。


「原因を現在、調査中です」


「ところで、どこか未発見のダンジョンとかないかな?」

「お客様は一攫千金を夢みているのですか。ロマンですよね」

「そうそう、あやしい所を掘ってみるかなと」

「あー、掘るのは辞めといた方がよろしいかと」

「なぜ?」

「封印されたダンジョンがあるからです」

「それはどういう?」

「危険すぎるダンジョンは死亡率が高く大抵、討伐が成功しないので埋めます」


 しめしめ、良い情報を貰ったぞ。

 後は封印ダンジョンの位置が分かれば討伐やり放題だ。

 ギルドの資料室で情報が手に入れば良いけど。

 まあ、駄目でも古い事を知っている冒険者をおだてて情報を引き出せばいいや。


「そうなのか、ありがとう勉強になったよ。俺はムニあなたは?」

「エティです」

「それじゃあ、もう行くよ」


  ◆◆◆


 俺は残りの銀貨を財布に入れ、ギルドの資料室に向かった。

 ギルドの資料室はカウンターがあり鉄格子で客と隔てられ、鉄格子越しに話せる作りになっている。

 眼鏡を掛けた茶髪で三つ編みの女の子が一人いた。


「封印ダンジョンの情報が知りたい」

「それは誰でも閲覧出来る情報ですけど、なんでまた?」

「ダンジョンを察知するスキルを持っている男がいるんだけど、無駄を省きたい」

「そんなスキルが。分かりました。閲覧料、銀貨1枚になります」


 俺が銀貨1枚を渡すと鍵を開け奥の部屋に彼女は行き、しばらく経ってから資料を持ってきた。

 用意してある机で、紙に必要な情報を書き写す。

 この近所で都合の良いのはアンデッド・ダンジョンだな。


 出てくるアンデッドは弱いが、しぶとい。

 なぜかというと、一階で出てくるスケルトンやゾンビなんかは動きが鈍くてその上脆い。

 しかし、体をバラバラにしても死なない。

 復活してしまう。倒すには光魔法か、魔力を沢山使った火魔法で包む必要がある。

 光魔法の使い手はこの国には一人しかいないそうだ。

 貴重な使い手は浪費できないのでアンデッドダンジョンは封印された。


 火魔法だと魔力切れをすぐ起こして駄目。

 倒せる人間が居なくなったパーティはすぐにモンスターに殺される。

 そういう危険なダンジョンらしい。

 トラップのたぐいが一つもないのが俺達にぴったりだ。

 魔力通販でアンデッドがなんとかならないか試してみよう。


  ◆◆◆


「アルマ待たせたな」

「そないでも」


 なんかデートの待ち合わせみたいで照れくさいな。

 これから行く所は色恋に無縁の所だが。


「邪魔するよ!」


 俺は武器屋のドアを開け中に入る。


「こんにちは」


 アルマは俺の後から武器屋に入り、こういう所が珍しいのか盛んに辺りを見回している。


「なんじゃ?」


 のっそりと店の奥から老人が出てきた。


「使える武器を探してる。初心者だ」

「そりゃ、見れば分かる。立ち方が素人丸出しじゃ」


「頑丈で扱いが容易いのが良い」

「それだとメイスじゃ。持ってみろ」


 老人は俺にメイスを渡す。

 俺は握りを確かめ上下に軽く振る。


「軽そうじゃな。こっちにしろ」


 差し出したメイスと交換して軽く振る。


「まだ軽いか。これ以上だと金額が跳ね上がるがどうする?」

「これで良いよ」


「お嬢ちゃんは木の棍棒じゃな。すまんがうちの店には一種類しか置いてないのじゃ」

「ああ、それで充分だ。ありがとよ」


 さて、いよいよアンデッドダンジョンだ。

 鬼が出るか蛇が出るか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る