第6話

 「これは、いったいどういうことなんです。なんで、このケープを羽織ると、あたりの様子が変わるんですか。なんで、あなただけは変わらないんですか。ここはどこなんです。あなたは何者なんですか。」

彼女は問い詰める僕の目をみつめると、さびしそうに徽笑みました。

 「あなたは夢を全部なくしてしまったんですね。」

 それは、質問ではなく断定でした。

 確かにそうです。僕の夢は、全てこわれてしまっていたのです。生活に困ることはありませんでしたが、生きることに希望も興味も失ってしまっていたのです。はじめのうちは、夢のあるふりをして自分をごまかしていましたが、その頃には、もうどうにもならないところまで追いつめられていたのです。自殺という言葉のもつ誘惑に、だんだん耐えきれなくなっていたのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る