第3話

 やがて美術館に着くと、彼はある大きな絵の前に僕を案内しました。それは深い森におおわれた丘の頂にある館を描いた風景画で、「夢織り人の館」という題がついていました。

 「この絵は、あなたにはどうみえますか。」

Mは真剣な口調で言いました。

 その絵は、もう少し詳しく言うと、晴れた雲ひとつない青空を背景に、さんさんと降り注ぐ陽に照らされた美しい森を描いていました。木もれ陽の中には多くの小鳥や動物が見えかくれしていて、心暖まるような風景でした。僕は彼にみたままを話しました。

 彼はため息をつきました。

「僕には、この絵は真冬の暗欝な曇り空の下で、生き物の影一つみえない凍りついたような暗い森にしかみえないんです。」

びっくりしている僕に、

「あなたも、そうみえだしたら気を付けた方がいいですよ。」

そう言った彼の顔は、真剣そのものでした。

 いったいどういうことだと詰問する僕に、彼が話してくれたのは、とてもふしぎな物語でした。

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