踊り子、また助ける。
俺が助けた女の子の名前はルナ、近くの町に住んでいるらしいが、なんで子供がこんなところに?と尋ねたら、
「私、お母さんとお父さんがはやくに死んだんです。でも、私と妹はお母さんの知り合いに孤児院の院長先生がいたから、今は孤児院にお世話になってます」
いきなり、重い話からはじまったなっ!
正直、これ以上聞きたくないが、そういう訳にもいかんし、とりあえず続きを聞く。
「ただ、最近孤児院のお金がなくなってきたので、私、内緒で冒険者ギルドの依頼を受けてきて……」
「そうか」
めっちゃええ子やん!
ただ、こんな子供に依頼(受けたのは薬草採取)をやるなよ。
受理するならせめて護衛をつけろよ。
……にしても、
「えらく深い森だが、よく迷わなかったな」
彼女のバッグの中は結構薬草が入ってる。
この森に詳しくないとまず、迷うし、薬草の事を知らないとこんなに採れない(雑草や毒草に似た外見、俺ば解析゙で分かった)。
ゲームでもそうだった。
「両親は元冒険者だったんです。さすがに町の外には連れていってもらえなかったんですが、話を聞いたり、薬草の実物や薬草以外を持ってきて目の前で見比べたりしたので、この森や薬草には詳しいです」
なるほど、なんか辛いことを思いださせてしまった。謝るとびっくりして「謝らなくていいです」と慌てて頭をあげるよう言った。
しかし、
「この森はおかしいな」
「え?」
「いや、グレイウルフはこんな深い森には出ない。浅い林や山によく出る」
「あっ!そういえば、そうです!」
「なんだ、知ってたのか?」
「はい。いろんな話を聞いていたので、この辺りは確か、ウルフですね」
そう、こういう森に住むのは狼系統の魔物の中で最も弱い個体だ。常に集団で行動するのは狼系統の魔物にはよくある習性だが、ウルフは武器を持った人間や一度戦った相手の前には現れず、森の中に隠れる。
ちなみに同じウルフとはいえ、縄張りがあるのでウルフでもグレイウルフでも争う時は争う。
「この近くに林や山はないか?」
「いえ、反対側は山ですが、少し遠いですし、この辺りは全部森のはずです」
じゃあ、何か問題が起きてこの辺にきたか送られたかしたんだろう。
後者だった場合、人がやったってことだよな〜。
っていうか……
「そんなに俺に話してよかったのか?俺たち初対面なのに家族のことや自分のこと話して」
「はい、お姉ちゃん?は私の命の恩人ですから」
うっ、笑顔が眩しい!
これは、信頼を裏切る訳にはいかん!
そう意気込んだ時、
「あっ、もうすぐ出られるよ」
「っ! おおっ!」
ちょいとまぶしかったが、すぐに目が慣れ、目に入ったのは簡素な道と遠くに町が見える。
ここを通れば、あの町に行けるのか。
やっと、人がいるところに行ける……
………が行く前にやることができた。
今目の前でグレイウルフに襲われてる馬車があった。
……俺の周りって本当にトラブルばかりだよな。
はああぁぁぁーーー
「ちょいとあれをどうにかしてくるわ」
「は、はい、その、お気をつけて」
「カッカッカッ、あの程度、俺にかかればひとひねりよっ」
と俺は不敵な笑みを浮かべる。
まあ、実際ルナの時の倍いるが、それでも所詮グレイウルフ、正直そんなに手間はかからない。
まずは、こちらに意識を向けさせるか…
俺はその辺に落ちてた手のひらサイズの石を拾い、そのまま、グレイウルフに投げた。
できるだけ殺さないようにそっと投げた。
石が一匹に当たった。そのまま、こちらを向く。そして、残りのグレイウルフもこちらを向いた。
そして、全員新しい獲物が見つかったと言わんばかりに吠えた(石を当てた一匹だけ怒った感じで唸ってた)。
そのまま、こっちに襲いかかってくる。
馬車からは何やら叫んでる声が聞こえるが、内容までは聞き取れなかった。
それより、今はこっちだ。俺はポケットに手を突っ込み(さっき石を投げたので片手は外だ)、棒立ちのまま、迫ってくるグレイウルフの群れに右手の手のひらを向け、
【舞闘術:焔炎の紅蓮】
手のひらから火が出て、その手をそのまま前に突き出す。
すると、あふれんばかりの火が火炎放射のようにでて、グレイウルフをおそった。
ただ、この技見た目に反して威力は低い。
だが、この技の長所は威力ではなく……
ボボボボボ
「ギャンッ」
グレイウルフについた火だ。
あの火は俺が自分の意思で消すかMP…魔力がきれるまで消えることはない。
たとえ、俺が寝てたり、気絶したとしても、魔力がきれるまで消えないことも分かっている。
ただ、この火は相手が死んでも燃え続けるので自分で消さないと魔力がもったいないんだよな〜。
昔、この技を作った時、勘違いして敵が死んだら消えると思って放っておいたらMPがきれかけるまで放置してしまって、寄ってくる雑魚モンスターにも死にかけた。
あれで久しぶりに死んだと思ったわ。
とか感慨にふけっている場合じゃない。
俺の方に来たグレイウルフは全部倒した。
火を消して、ルナのところに戻った。
「じゃあ、行こっか」
と俺は笑顔で言った。
「……いえ、声ぐらいかけましょう」
「え〜、だって見てよあの馬車、絶対貴族だぞ」
「うっ、それでも……」
ルナの平民魂(失礼)に訴えてみたが、彼女の真面目精神がそれを許さないようだ。
そう、俺が救ったのは馬車からして貴族だろう。
助けておいてあれだが、関わりたくない。
アニメやゲーム(Free Grand World略してFGW)でも性格ねじ曲がってんのが多かった。
来たばっかの世界の貴族が良い奴とは思えんが、ルナがめっちゃ懇願する目で見てくるから、声ぐらいかけるか……
そういや、クラスの連中は大丈夫かね?
つっても、仲良いやつは少ないが……
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