case2-2 カフェ店員・芦田潤奈
あの日はカフェを出た後近くで買い物をしたりぶらぶらと歩いたりして、健全な時間に家に帰った。そしてあれから香澄さんとは毎日1通ずつくらいメッセージのやり取りをしていて、もしかしてあと3人も攻略しなくても付き合えるんじゃないかとか、生意気な考えすら浮かんでいた。
でもあわよくば話をしてみようと思っていたのに、結局芦田潤奈とはレジでしか接触できなかったことがどこかで引っかかっていた。
もしかしてと思いつつもどこかでプログラムをちゃんと進行しなくてはと思っている真面目な俺は、次の週、お客さんのところに行くついでにあのカフェに行くことにした。
「いらっしゃいませ。」
お昼時でも何でもない夕方。
平日という事もあって、やっぱり休日より数段静かな空間が広がっていた。でも今日も出迎えてくれたのはあの子ではなく別の店員さんで、もしかして今日はシフトにすら入ってないかもしれないなと思った。
「お好きなお席にどうぞ。」
「あ、はい。」
店に入ってからひたすらキョロキョロしている俺を、その人は席に座るよう促してくれた。思えばこの人も良く見る店員さんだなと、薄情にもその時やっと気が付いた。
この間は違う席に座ったけど、比較的すいている休日はいつも角にある一人用の席に座る。店内に背を向けて座るようなスタイルで座れるから、ここにいるとなんとなく落ち着くし、処理したい仕事がある時も集中できて助かる。
「ホットコーヒーで。」
「かしこまりました。」
いつも通り、水を持ってきてくれた店員さんにそのままオーダーを伝えた。そしてカバンからタブレットを取り出して、真剣に仕事をすることにした。
仕事を始めてしばらくしてから気が付いた。
思えばこうやって背を向けて座っているから、まともに店員さんの顔も覚えてないんじゃないか。それにこのままじゃ、あの子がいるかどうかも見られないじゃないか。
何しに来たんだと、考えが浅い自分に嫌気がさした。
とはいえ今から席を変えてもいいですかなんていう勇気も俺にはなくて、ため息をつきながら淡々と仕事をするしかなくなった。
「お待たせいたしました。
ホットコーヒーです。」
「ありがとうございます。」
もう半ばあきらめて仕事に集中しながら、コーヒーを持ってきてくれた店員さんにお礼を言った。朱音がやめてからというもの、その仕事が全てと言っていいほど俺のところにきたせいでめちゃくちゃ忙しい。
何やってくれてんだよほんとにと心の中で文句をいいつつ、店員さんには目もくれないまま今日の報告を打ち込んだ。
「いつもありがとうございます。」
その時、後ろからコーヒーを持ってきてくれた店員さんに言われた。
さすがに不愛想すぎたかなと反省しながら「こちらこそ」と言って店員さんの顔をみると、そこに立っていたのはなんと、芦田潤奈だった。
「すみません、お仕事中に。」
「い、いや…。」
正直驚きすぎて、うまく言葉が出てこなかった。
なんていうかテレビでいつも見ていた人が突然目の前に現れたみたいな気持ちになって、頭が真っ白になっていた。
「この間、
休日にも来てくださいましたよね。」
「あ、はい。」
芦田潤奈が、俺のことを認識してくれていた。
そのことにも驚いて、なんとか返事をするしか出来なくなった。そんな俺の様子を芦田潤奈はクスッと笑って、「この間の方…」と話を続けた。
「彼女さん、ですか?」
「いや…まだ…。」
「まだ?」
生意気にも「まだ」なんて言葉が出てきたことを、俺は心底反省した。
最近デートできてるからって、何調子乗ってんだ。
プログラムも満足に進行できてないのに、中途半端な自分がいつしか特別な存在になったみたいに感じてしまっている事が急に恥ずかしくなって「違います」とはっきり答えた。
「すごくおきれいな方ですよね。
モデルさんかと思いました。」
「ですよね。
僕もそう思います。」
やっぱり香澄さんは他人から見てもそう見えるのか。
多分俺たちが一緒に歩いている姿は、恋人というよりマネージャーとモデルみたいに見えているんだろうなと思うと、少し悲しくなった。
「すみません、突然お仕事のお邪魔して。」
「あ、いえ…。」
「失礼します。ごゆっくり。」
俺が付け入る隙なんて全く見せることなく、芦田潤奈はにっこり笑って仕事に戻ってしまった。
いやいやいや、この状況でどうやって連絡先聞くんだよ。
もしかしたら香澄さんとここに来たのは失敗なのかもしれないとようやくそこで気が付いたけど、気が付いたところでもう遅い。
俺はもう一回自分自身にため息をついた後、相変わらず淡々と仕事をすすめて、1時間ほどで席を立った。
「ありがとうございます。
420円です。」
「は、はい。」
レジの対応をしてくれたのも、芦田潤奈だった。
もし何かのきっかけを作るとしたらこのタイミングなんだろうけど、ここで急に「連絡先教えてもらえませんか」なんていう事なんて出来るはずもなくて、ただただ動揺しながら520円を出した。
「100円のお返しです。」
「はい、ごちそうさまでした。」
「また来てくださいね。」
芦田潤奈は、すごく純粋な笑顔を俺に向けて言った。
"履歴書"で確認したけど、確か年齢は3つくらい下だっただろうか。
身長も小さくて見るからに妹属性の彼女のことを、もしかして香澄さんがいなければ好きになっていたかもしれないなんて、その笑顔を見たら思った。
俺って実はめちゃくちゃ惚れっぽいのかな。
そんな邪悪なことを考えながらしっかり潤奈からお釣りを受け取って、「また来ます」と言った。
一応、お互いに存在を認識するっていうところまでは進展したけど、今日こそは連絡先を聞いてやろうぐらい意気込んでいた俺の計画は、見事失敗に終わった。
☆
その日は久しぶりに、チームの飲み会があることになっていた。本当は行く予定のなかったカフェに1時間も滞在してしまったことを後悔しながら、急いで会社に戻った。するとまだ終業時間にもなっていないのにみんなもうソワソワし出していて、時間が過ぎるや否や、みんな一斉にお店に向かい始めた。
朱音のことがあってまだ2週間もたっていないのに、部長はいつも通りみたいな顔をして仕事に来ていたし、みんなもいつも通りって顔をして仕事をしていた。仕事だから割り切っているのかもしれないけど、それにしても薄情ではないか。
そう思ってはいたものの、「薄情ですよ!」なんて俺が言い出したらチームの雰囲気が壊れることは分かっていたし、言ったところで誰の得になるんだって考えて何もしない俺も、立派な社会人になってしまったんだと思う。
それがいいことなのか悪い事なのかはよくわからなかったけど、俺もその他のメンバーも何もなかったかのように、その日の飲み会を楽しんだ。
「お疲れ様っす!」
「2次会行かねぇの?」
「はい、ちょっと疲れてて…。」
ってのはただの言い訳だったけど、立派な社会人になったとはいえ、やっぱり違和感をどこかで抱いている俺は、1次会でそそくさとその場を後にした。昭和の社会人からしたら、2次会を断るなんて信じられないことなんだって聞いたことがある。
でも時代は令和だし、俺は立派なゆとり世代だ。
謎の自信を抱きつつも社会人として名残惜しそうな顔をして、そのまま家に帰ることにした。
「はぁ…。」
一人になって、なんだか疲れが一気に襲ってきた。
朱音のあの事件からいなくなった後も、一番被害を受けているのは俺な気がする。今まで日常生活になんて何も起こらなかったのに、最近目まぐるしいくらいいろんなことが起こる。その上仕事も忙しいせいでなんだか本当に疲れていて、心からのため息が体から漏れた。
「お兄さん、この後…。」
「大丈夫っす。」
そんな俺の気持ちなんて察してくれるわけもなく、駅まで歩いている間に色々なキャッチにつかまった。いつもならもう少し優しく接してあげられるんだけど、もう答える元気も失っている俺は、だんだん力なく片手をあげて断るしか出来なくなってきた。
「お兄さん…あっ。」
顔を上げることもなく歩いていると、ほぼ服を着ていないみたいなバニーの格好をした女の子の足が目に入った。その子が話しかけてきたと思ったら拍子抜けする声を出したから、不思議に思って思わず顔をあげてしまった。
「え…っ?」
そこには芦田潤奈が立っていた。
顔は芦田潤奈なんだけど、昼間カフェでしていた上下黒の服とか真逆みたいな露出だらけの格好をしていると、全く別人みたいに見えた。
お互い驚いてしばらく俺たちは見つめ合っていたけど、そのうち芦田潤奈の方が折れて、「バレちゃった」と照れた顔で言った。
「お昼ぶりですね!」
「そう、ですね。」
一気に営業スマイルになった潤奈が、俺の手を握って言った。昼間の顔とは別人過ぎて、俺はただ固まるしか出来ずにいた。
「お昼もだったけど、
なんか疲れてません?」
「まあ、仕事終わりだし…。」
俺は疲れている。その上もう驚いてばかりで、さらに疲れた。
そんなことは言えずに何とか言い訳をすると、潤奈はまたにっこりわらって持っていたチラシを俺に手渡した。
「私で良ければ、癒しますよ!」
潤奈が手渡してきたチラシは、いわゆるガールズバーのものだった。
俺は勝手に潤奈のことを清楚で純粋でこういう世界とは真逆の子だと認識していたけど、でもまあ昼はカフェで働いて、夜は夜の店で働くなんてよくある話だと思いなおした。
「また今度、お願いするわ。」
絶好のチャンスだとわかってはいたけど、もう本当に心から疲れていた俺は、チラシだけ受け取ってその場を後にしようとした。するとそんな俺の腕に、潤奈は自分の胸を押し付けるようにして絡まってきた。
「お兄さんだったら、
特別サービスもするのにな。」
「お前な…。」
何やってんだよ。
そう思いながら腕にしがみついている潤奈をはがした。でも腕に残っているやわらかい胸の感触は、しっかりと味わっておいた。
「なぁんだ。つまんない。
これ、私の名刺です。」
本当につまらなそうな顔をして、潤奈は言った。その名刺には大きくひらがなで「じゅんな」と書かれいて、よりにもよってこいつは本名でやっているのかと思った。
「潤奈って言います。」
「ああ…。」
知ってる。
とはいえず、名刺をそのまま受け取った。すると潤奈は昼と同じ純粋な笑顔をこっちに向けて、「お兄さん、名前は?」と聞いた。
「侑。」
「侑さん、また今度待ってますね!」
裸みたいなバニーの格好をしたまま、潤奈は人懐っこい笑顔を見せた。
やっぱりどう見ても、昼間の人物と同じには見えない。女って怖いなと、心底思った。
「はい。お疲れ。」
多分俺が店に行くことはないんだろうけど、何も言わないまま去るわけにはいかない。俺は今できる最大限に当たり障りのない反応をして、振り返ることもなくその場を去った。
☆
1週間たっても、俺が名刺に書かれていた電話番号に連絡することはなかった。ためらっていたってのもあるけど、本当に毎日が激動過ぎて、それどころじゃなかったってのが本音だ。
相変わらず香澄さんとのメッセージのやり取りは続いていたけど、でもそれすらも頻度が少なくなるほど俺は疲弊していた。
「はぁ、ダメだ。」
「佐々木~、
覇気がないぞ、覇気が。」
「すんません。」
そうは言いつつも、塩谷さんは忙しくしている俺の仕事をちょっとずつ手伝ってくれた。今日も俺のデスクから仕事をごっそり持って行って処理をしてくれたおかげで、少し残業するだけでよさそうなところまで終わらせることが出来た。
「ありがとうございます。」
「いいってことよ。」
塩谷さんは一足先に俺の背中を叩いて、颯爽と帰って行った。
優しくて気も使える人なんだけど、彼女がいないのはどうしてなんだろう。自分にだっていないのにそんな失礼なことを考えながら、残りの仕事を何とか済ませた。
「よしっ。」
塩谷さんが負担はしてくれたものの、結局一人で1時間以上残って仕事をして、キリが付いたところで帰ることにした。本気で疲れ切ってはいたけど、スマホを確認したら香澄さんから"今日もお疲れ"というメッセ―ジが来ていたおかげで、少しHPが回復した気がした。
「帰るか。」
独り言を言いながら荷物をまとめ始めた。
そういえば最近太一にも会えていない。あいつが忙しいと思っていたら自分も忙しい状況に追い込まれるなんて、思ってもみなかったなと1か月くらいの激動の日々を思い出しながら席を立った。
「ちょ…っ!」
すると立ち上がる時に腕が当たって、デスクに重ねていた書類が床に落ちた。
「ついてないな…。」
疲れているのに、とことんついていない。
また独り言を言いながら書類をまとめていると、落ちた手帳から潤奈の名刺がはみ出ているのが見えた。
「やばいな…。」
忙しいとはいえ、プログラムのことも香澄さんのことも考えていなさすぎる。
これでは相沢の言っていた通り、攻略している間に香澄さんが誰かのものになってしまってもおかしくない。
仕事が充実しているのはきっと悪い事ではないけど、それ以上にプライベートのことだって大事だ。名刺を見てようやくそう思い直した俺は、この間潤奈に会ったあのあたりをわざわざ遠回りして通ってみることにした。
会社から10分くらいあるいたところに、いつも活気で満ちたその街がある。
ビジネス街ということもあって仕事終わりのサラリーマン風の男たちがたくさん歩いていて、それと同じくらいキャッチをしている人たちがたくさんいた。
その人たちからしたら、もちろん俺も対象の一人だ。
だから歩いている間にたくさん話しかけられて気が滅入りそうになったけど、なんとか自分を奮い立たせてこの間潤奈に会った場所まで歩いた。
「いない…。」
でもそんな都合よく、同じ場所に立っているはずがなかった。
こないだの場所には潤奈と同じバニーの制服を着た違う子が立っていて、今日は潤奈の担当じゃないんだなってことがすぐにわかった。
行動を起こそうとしたからってそんなうまくいくはずもない。あきらめがついた俺は、今来た道を振り返って、そのまま帰ろうとした。
でも振り返った瞬間に、これでは本当に努力が無駄になってしまうという考えが浮かんできた。今までならそのまま帰っていたに違いないけど、なぜだか俺はやる気になっていた。これも知らないうちに相沢に毒されたせいかなと思いつつ、自分自身をなんとか鼓舞して、そのバニーガールに話しかけた。
「あ、あの。」
「お兄さん、お店お探しですか~?」
「い、いえ…。」
どう見ても10代に見える子に明るく話しかけられて、俺は情けなくも動揺してしまった。そこですでに気持ちが折れそうになったけど、何とか心の中で自分に喝を入れて、姿勢を正して「潤奈、今日出勤?」と聞いた。
「なんだ、お兄さんも潤奈狙いか。」
一気に嫌悪感たっぷりな顔になって、バニーガールはため息をついた。
"お兄さんも"ってことは、潤奈はそんなに人気なのか。人気者って疎まれやすいもんななんてアホみたいなことを考えていると、バニーガールはおもむろに左の方を指さした。
「多分あそこ。」
その子が指さしたのは、繁華街の近くにあるホテル街の方だった。その行動に俺がまだ疑問符を浮かべていると、バニーガールはその格好に見合わない大きなため息をついた。
「ホテル。
客と寝てるから、あの子。」
「は?」
「ガールズバーで枕って、
意味わかんないよね。」
その子は思いっきり馬鹿にしたみたいに笑った。
10代に見えていたけど、3つ下の潤奈を"あの子"っていうってことは、この人実は俺より年上だったりして。
でも今はそんなことはどーでもよかった。とりあえず潤奈の居場所を教えてくれたことに「ありがとう」とだけお礼を言って、俺は少し速足でホテル街の方に向かった。
割と職場から近くにあるのに、ここに来るのは初めてだった。
なんだか薄暗い街の中には堂々と歩いている人はあまりいなくて、ましてや一人で歩いている俺みたいなやつはどう見ても浮いていた。
どうしてこんなところ来てしまったんだろう。
今までこういう場所には縁遠い人生を送ってきたはずなのに、まさか自分で、しかも一人で足を踏み入れることになるなんて。
途中まで進んでようやく後悔した俺は、このままホテル街を突っ切って、潤奈に会えなかったら諦めて帰ろうと心に決めた。
ホテル街と言っても、そこまで広くはない。
5分くらい歩いていたら何となく終わりっぽい場所が見えてきた。
―――もうすぐ街を抜ける。
やっぱり潤奈には会えなかったけど、行動に移せただけいいやと自分を褒めながらトボトボと歩いた。潤奈に会えなかっただけじゃなくて、人ともロクにすれ違わなかったなと思いつつ歩いていると、向こうに男女の影が見えた。
「…ん?」
遠いし暗いし顔は見えなかったけど、シルエットはどう見ても潤奈だった。その潤奈の影の横には男の影があって、二人は仲よさそうに絡み合っているように見えた。
もしかしたら、普通に彼氏ときているのかもしれない。
その可能性も捨てきれないと思った俺は、とりあえずばれないようにすれ違ってみることにした。
「ホテル行ったら
ちゃんとお店来てくれる?」
「おう。
何回も聞くなよ、絶対行く。」
「んもう。
潤奈寂しいんだよ?」
「わかったわかった。
早く行こうぜ。」
その街の路地はすごく狭くて、わざとペースを落として歩いた俺の耳には、すれ違っただけでそんな会話が入ってきた。
どう聞いても彼氏との会話ではないってことを理解した俺は、すれ違いざまに潤奈の手首をつかんだ。
「え…っ?!」
いきなり通行人に手をつかまれたら、驚くのも当たり前だ。
よく考えずに行動を起こしたけど、もし今叫ばれたら逮捕されてもおかしくないなと思って、恐る恐る潤奈の方を振り返った。
すると潤奈は俺の顔を見て、カフェで見せるみたいな笑顔を作った。
「なんだぁ、侑さんじゃん!
どうしたのぉ?
こんなところで。」
今からホテルに入ろうとしていた女が男に話しかけられて、一緒にいた"ケンちゃん"は俺を必死でにらんでいた。
でもどう考えても、ケンちゃんがもうお店に行かないことは、さっきの会話をきいただけの俺にだってわかる。だから俺はとりあえずそのまま潤奈の手を引いて、自分の進行方向に進むことにした。
「おい、お前!」
ケンちゃんは予想通り、怖い声をあげてきた。
情けない話だけど、ケンちゃんが強そうなやつなら逃げていたかもしれない。でもケンちゃんは俺より背も低くて、ひょろそうなやつだった。
実は相沢の言う通り、最近俺は地道に腕を鍛えていた。
鍛えていると言っても家でちょっとだけ筋トレをしているくらいだったから、それだけで強くなっているはずはなかったけど、その消えそうな少しの自信で自分を奮い立たせて、ケンちゃんの方を見た。
「ヤりたいなら、
お金払ってそういうお店行きな。
男として卑怯だぞ、お前。」
ごもっともなことを言うと、ケンちゃんは悔しそうな顔をして俺たちとは反対方向に走って行った。もっとごねるかと思ったのに、本気で情けないやつだなと、その行動で全てを察した。
潤奈がどんな顔をしているか気になったけど、居心地が悪すぎて早くその場を立ち去りたかった。俺はそのまま振り返ることなく潤奈の手を引いて、行く当てもなく歩きはじめた。
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