第380話 380.トレアーノ商会の誤算

トレアーノ商会はドヅトル帝国の首都ノースラサトニアに本部を置く大商会だ

会長はトレアーノ

貧しい農家の5男坊として生まれた彼は森に入り希少な山菜やキノコ、薬草などを採取して売り捌きながら徐々にお金を貯めて商人として一代で成り上がって来た男だ。


エイシス家の長男ジャックが第一皇女を娶って皇帝になってから、皇帝ジャックへの膨大な賄賂を贈る事でドストル帝国内では敵なしの大商会となった。


トレアーノ商会を立ち上げたトレアーノはただの成り上がり者では無い。

天性の目利きの能力を生かし、自分で各都市を回り売れそうな物を仕入れ販売して回っていたのだ。

各地に隠れている売れる商品を発見し、それを仕入れて販売

売れ筋商品はドストル帝国の自分の店で作り販売する

そうやってトレアーノは自分の商会を大きくしてきたのだった。


トレアーノがドストル帝国の店を出たのは約2か月前

馬車での1日の移動は約40キロ程度だと言われている

ドストル帝国から持ち出した10台の馬車に一杯に積んだ商品を各街々で売り捌きながら2週間前にナストレーア王国の首都ナルノアールに着いて、ナストレーア王国の首都ナルノアールで馬車10台分の荷物の殆どを売り捌き、その金でまた馬車10台分の商品を仕入れ、リトリア王国の首都トリステインを目指し、仕入れた商品を売り捌き、また珍しい商品があれば買い込みながら馬車でいどうしてきた。


ナストレーア王国の首都ナルノアールの街からリトリア王国の首都トリステインの街に来る途中のレノウンの街で珍しい物を発見したトレアーノ


『ゴブカラ』


という食べ物だ!!

レノウンの街の屋台で美味しそうな匂いに釣られて思わず買って食べてビックリ


「美味い!!美味すぎる!!」


思わずそう叫んでしまったトレアーノ

材料があの激マズのゴブリンの肉と聞いて2度ビックリ!!

ゴブリンと言えば、肉はマズイし臭いはめちゃめちゃ臭いし魔石以外使える所が無い害獣としての認識していなかった魔獣だ


早速レノウンの街を出てから、護衛の男達にゴブリンを狩ってもらい、屋台で見たように調理をしたトレアーノだったが・・・


『めちゃめちゃ臭い』


『口に入れた途端に思わず吐いてしまった激マズ』


最悪の激マズ、それに付け加え火をあまり通していなかった為にゴブリンの肉に含まれる微毒による下痢に商隊の全員が3日3夜悩まされるという苦悩を味わった。


「くそっ」


「くそっ」


「くそっ」


「くそ~~~~あの屋台の男、ガセネタ教えやがって~~!!」


思わずそう言って力んだトレアーノは・・


「うをぉ~~出る~~出る~~クソ・・糞が~~~~・・・」


「ひぃ~~~~~・・」


『ブリブリブリ~~』



「ギャーーーーーーーー」


悲鳴と共に糞まみれになるトレアーノ商会の商隊の男達であった・・・





ナストレーア王国の首都ナルノアールで仕入れた商品を約半分程売り捌いて、そうしてようやく着いたリトリア王国の首都トリステインの街にやってきたトレアーノ商会一行


『この町でも商品を売り捌くぞ~!!』


っと息巻いていたトレアーノ一行は、首都トリステインの南門を入ったにも関わらず一個の商品も売り捌く事が出来なかった。

トレアーノ商会としてリトリア王国の首都トリステインに来たのは2年前

その時は馬車10台の荷物があっという間に売れたのに!!


一個の商品も売れないのだ!!


「何故売れないんだ!!」


そう思いトリステインの街の中を注意深く見てみると立て札が目に入る。


「『転移門使用令』って何だ?」

そう思い呼んでみると


--------------------------------------------------------------------------------------

      <告>


         『転移門使用令』


リトリア王国の首都トリステインとナストレーア王国の首都ナルノアール間が転移門で結ばれる事となった。

使用に関しては転移門を操作する兵士の指示に従ってもらう。

もしも指示に背く者有らば、即時に切り捨てゴメンの死罪とする。


使用可能時間 朝8:00時より 夕方18時 時間厳守

開始終了時間の前後は危険な為に転移を禁止する場合有り


通行料金:


〇 1人のみ試用期間中により、暫くの間1人1回小銀貨1枚の使用料金

〇 馬車1台毎に大銀貨1枚(試用期間中)


※料金徴収方法・転移門転移許可システムが出来次第、規定に基づく運用を開始予定である。

設置場所:トリステイン城の北『オープンガーデン』自由市場


リトリア王国国王   ヘンリー・リトリア

ナストレーア王国国王 アンドリュー・ナストレーア


--------------------------------------------------------------------------------------


「何んだと!!転移門だと!!険悪だったリトリア王国とナストレーア王国が何故?

それに『転移門』だと~~~~????

『転移門』といや~~お釈迦の世界に出て来る夢の移動手段だぞ?

そんな物をリトリア王国とナストレーア王国が作ったというのか??

兎に角トリステイン城の北にあるという『オープンガーデン』に行ってみるぞ!!」



そういってトレアーノ商会の商隊がやってきた『オープンガーデン』

そうはいっても首都トリステインはトリステイン城を中心にホボ円形に発展して来た街

首都トリステインの南門から王城まででも20キロ以上は有る距離


首都トリステインの整備された石畳の道でも3時間以上はかかる

そして東京ドーム20個分の広さもある『オープンガーデン』の入り口から広がる広大な自由市場の店・店・そして店の建物とそこに集う凄い人数の買い物客


「こんな市場が何時の間に出来たんだ??これじゃ儂らの商品が売れないのも無理はない」


そう思って市場の中を見回ってみたが・・・

市場を回り、色々な商店の商品を見ながら商店主に話を聞くと、小銀貨1枚で一日店舗を借りれるそうだ。

借りた店主は商品に自由に値段を付けて売っているどう。

左右に別れた向こうの市場は1か月単位で借りれる店舗が集まった主に商人達が借りている建物群らしい。

リトリア王国も凄い物を考えた物だな。


「流石にこれだけの規模の市場は凄いし、値段も安いが、所詮は何処にでもあるような商品ばかりだな」


そう思い自由市場の奥に進むと馬車の駐馬場があり、ギルドの建物も建っていた。

ギルドの建物の横には肉を売っているようだ。

販売している肉を見ると・・


「安い!!めちゃめちゃ安いじゃ無いか」

「お~旅人さんかい?新鮮な肉だぜ!!お買い得だぜ~買ってかないかい?」

肉売りの店員なのかトレアーノ達に威勢のいい声をかけてくる


トレアーノは

「何でこんな新鮮な肉が、こんなに安いんだ?」

と思わず聞いてしまっていた。

「お前さん達知らないのか?この肉はリトリア王国がギルドに卸している魔獣から捌いた肉なんだ。ギルド直売だから安くて新鮮なんだよ」


「これじゃドストル帝国の肉の値段の半分位の値段じゃないか」

「はははっ、そうだな一週間前くらいまではそんな値段だったな」

「何でなんだ?」

「ジャクソン家の魔導士達が好き勝手していたから、魔獣の値段が高値だったんだが、リトリア王国が狩った魔獣を卸しだしてからこんな値段になったんだ」


そう言えばジャクソン家の魔導士達がクーデターを起こしたって話を来る途中聞いたな・・

それでなのか?

ジャクソン家がボッタクっていたのか?

じゃ~ドストル帝国のエイシス家もボッタクリしてんのか?

この値段の生肉は凄い魅力だが・・

ドストル帝国までは持って帰れないからな・・悔しいがパスだ


そしてやって来たエリア

『雑貨屋』

『ランジェリーショップ』

『洋服屋』


一度見てトレアーノはビックリして言葉を失った


透き通ったガラスのコップ

そして色取り取りのガラス製品

どれもドストル帝国・・いや!!


この世界を回っても見た事も無い高品質のガラス製品

それが一個小銀貨1枚で販売している!!


それだけじゃない!!

真っ白な陶磁器

こんなに真っ白で光沢のある陶磁器など見た事も無い

それも価格はガラス製品と同じ小銀貨1枚


そして等身大もある鏡!!

銀を磨いて作った鏡なんかよりも鮮明に映る驚くべき鮮明さ!!


俺達は!!


買った!!


買った!!


買った!!


次々に商品を買いあさった!!

『これは売れる!!』


金貨数十枚はする商品が小銀貨1枚で売られているのだ!!


そして雑貨屋の前に何気なく置いてあった小さな透明な小袋に詰められた粉?

見た所一袋100フラム程度だろうか?


そう思い見てみると


『砂糖』 



『塩』


だった!!

何?

「砂糖が此れだけの量で小銀貨だと~1キロで金貨5枚もするんだぞ~!!」

そっ逝った途端に爆買いである


『こ・・・これを売れば俺達に大金が転げ込むぞ~~!!』


ぬか喜びでドンドンと買い込み10台の馬車一杯に商品を無理やり買い込んだトレアーノ


リトリア王国の首都トリステインとナストレーア王国の首都ナルノアール間の『転移門』を使う時金額を再度みてトレアーノはゴネた。


1人小銀貨1枚の転移門使用金額

商隊の人数50人

それだけで小銀貨50枚もかかる。


それに付け加え馬車1台当たり大銀貨1枚

10台の馬車が転移門を通るのに金貨1枚


門を通るだけでそれだけの金額が掛かると思うと、惜しくなったトレアーノだった。

なので文句を言ったのだが・・

若い男が出てきて『転移門使用令』に記載してあるでしょと言いやがった!!

腹の立つ奴だ!!


若いのに俺に意見しやがった。

脅してみたけど、動揺さえしなかった。

ナストレーア王国の首都ナルノアール間をいどうするとなると、そんな金額では移動なんて出来ない!!

そう思い渋々と仕方なく料金を払ってやった。


しょうがない!!

此処で仕入れた商品をナストレーア王国の首都ナルノアールで売ればぼろ儲け出来るんだ!!

そう思いナストレーア王国の首都ナルノアールへの『転移門』を潜ったのだった。



しかし!!

トレアーノは転移して直ぐに絶望を味わってしまう!!


「2週間前に此処に来た時はこんな物無かったじゃないか~~!!何時も間にこんな物が出来たんだ~~!!」


そうトレアーノが転移門を潜り、出た先は『ナルノアールガーデン』

真也達が王城横の湖の一部を1日で埋め立てて造った場所


其処にはリトリア王国首都トリステインの『オープンガーデン』と同じように

『雑貨屋』

『ランジェリーショップ』

『洋服屋』

が存在していたのだ。


「何でなんだ~~!!」


トレアーノの絶望の声が埠頭に響いたのだった。

しかし、タダでは転げない商人魂

トレアーノは文句を言いながらもドストル帝国の首都ノースラサトニアに商品を持ち帰り大儲けするのであった。


その話はドストル帝国皇帝ジャックの耳にも入る事になったがそれはトレアーノがドストル帝国に帰りリトリア王国首都トリステインの『オープンガーデン』から商品を持ち帰ってから実に3か月も経った後の事だった。

異世界の情報の伝達速度は遅いものである。


「『転移門』と言ったか!!リトリア王国とナストレーア王国は凄い物を作ったものだ。『転移門』があれば軍隊を即時に送り込める

早急にその『転移門』について調べさせなければ!!」


ドストル帝国皇帝ジャックが瞬時に移動できる手段に興味を持った瞬間だった。


つづく・・・

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