第322話 322.密偵は誰だ?

<真也>


魔道具により発せられた言葉に次々に王城の一階ホールに次々に集まって来る使用人や騎士達、メイドや侍女達


何事なのかと口々に不安な様子で

「何があったんだろう?」

「急に呼び出しなんてオールデス家の魔導士絡みなのか?」

なんてヒソヒソ話が聞こえて来るが・・


予想している使用人も若干いるみたいだな。


メイドさん達はメイドさん達であるまり

騎士達は騎士達で集まって

調理人達は調理人達で集まっているよう。


今日に呼び出し食らったらそりゃ~驚くよな~

アンドリュー国王に話したら即決速攻でこうなっちゃったもんな

アンドリュー国王ってめちゃめちゃ行動派だよな


『俺なんて皆に流されながら仕方なく動いてるって感じなのに・・・』


うう~~

俺って・・・


こう見ると・・・


『結構ダメ人間なんじゃ?』


次々に1階のホールに扱ってきている

皆が集まってきている前方にはテーブルが置かれ、エバンズさんがアンドリュー国王に指示されて持ってきたであろう直径20㎝程も有る透明で真ん丸の『真偽の水晶』が置かれその横にはエバンズさんが立っていた。


そして男女数名が名簿のような物を持って集まって来た人達を見ながら何か書き込んでいるようだ。


避難訓練何かをやる時の、人員確認っぽい感じに似てるななんてふと思ってしまい思わず笑いそうになってしまったのは内緒だ。

でも今日誰が王城に登城しているのは把握出来てるってのはある意味凄い?

この異世界で現代社会のように何処まで出勤管理?が出来ているのかは解らないからこれがこの世界の常識なのかもしれない。


名簿のような物をもって書き込んでいた人達が前方の『真偽の水晶』の傍に建っているエバンズさんの所に集まり名簿のような物を見せながら何か報告した後一礼し皆が並んでいる所に並んで行く。


エバンズはそんな光景を見ていた俺達の横に居るアンドリュー国王に視線を向けると


「今日登城していた者は殆ど集まりました」


と報告すると、ツカツカとエバンズさんのいる所に歩み出てゆき

「皆の者忙しい所、急に集まってもらって済まない。先日、今日とオールデス家の残党に襲われたのだが、オールデス家の残党にこちらの動きが漏れている節がある。


なので皆を疑っているようで悪いのだが『真偽の水晶』を使って調べさせてもらおうと思う。

並んでいる左側の者から1人1人前に出てこの『真偽の水晶』に手で触れて欲しい。

そして私が質問するから


『ハイ』



『イイエ』


で答えてくれるだけで良い。

では一番最初で悪いのだが、左側の一番前に立っているメイナード前に出てこの『真偽の水晶』に手で触れてくれ」



「畏まりました」


メイナードとアンドリュー国王に呼ばれた20代前半だろう男性は前に歩み出てきて『真偽の水晶』の上から手で触れたのだった。


アンドリュー国王はメイナードの手が『真偽の水晶』の上に置かれているのを確認して


「メイナード君はアーネストが首都ナルノアールに帰って来た事を外の誰かに伝えたか?」


「イイエ」


「メイナード君はオールデス家の密偵か?」


「イイエ」


「メイナードありがとう。君の無実は証明された。下がってくれ」


「ハッ」


そんな感じで1人目の審議判定が終わった。

「アーネスト何も起こらなかったが、嘘をつくと『真偽の水晶』に変化が出るとかあるのか?」

何も前置きが無いままに始まった審議判定に思わずアーネストにそんな質問をしてしまっていた俺


「『真偽の水晶』に触れた状態で嘘をつくと透明な『真偽の水晶』の色が赤く濁ります」

「あ~それで解りやすい『ハイ』か『イイエ』で答えさせているのか」

「そうです。でもお父様が国王になってからは、人を疑るようで気が進まないと『真偽の水晶』での判定を取りやめておられたのです」


「今となってはそれが仇となったな」

「そうですね。ブライアンがオールデス家の当主となった時に『真偽の水晶』で判定していれば今の状況は変わっていたのかもしれませんね」


そんな風に言っているアーネストの表情は少し悔しそうにみえるかも・・・


・・・


・・・


「ミッチェル前へ」

「ハイ」


ミッチェルと呼ばれた30代の男性が前に進み出て『真偽の水晶』に手を添える。

「ミッチェル君はアーネストが帰って来たことを誰かに話したか」

「ハイ」

「それは王城の者か」

「ハイ」

「ミッチェル君はオールデス家の密偵か?」

「イイエ」


『真偽の水晶』の色は変わらなかった。

聞き方も工夫しないと紛らわしいかんじになるな・・



「ミッチェルありがとう。君の無実は証明された。下がってくれ」

アンドリュー国王が笑顔で返した言葉に安堵したような表情で

「ハハッ」


っと返事をしてミッチェルと呼ばれた男性は後方に下がって行く。


そうして次々に『真偽の水晶』を使った審議判定の質問が繰り返され・・・

最後の審議判定が終わった。


そしてアンドリュー国王は笑顔で集まった皆に向かって

「今日は忙しい中集まってくれてありがとう。お陰でここに集まった全員の無実は証明された。こんな形で『真偽の水晶』を使って審議判定を行った事を済まなく思う。


なので今日集まってもらった皆には後日一人一人金貨1枚を支給するので楽しみにしていて欲しい」


そう締めくくると



「「「「「「「「うをx~」」」」」」」」


っと一斉に雄たけびが上がった。

アンドリュー国王すんげ~~


『太っ腹~~』


結局誰も審議判定に引っかからなかった・・・

本当にこれで良かったのだろうか?


まあ・・


『此処に居る人間は誰一人裏切ってはいなかった』


って事は確定できただけマシなのかもな!!


1階のホールに集まっていた人達が各職場に戻るのを確認してからアンドリュー国王はエバンズさんと名簿をみながら何か話しているよう・・・


5分位難しい表情をしながら話し込んでいたアンドリュー国王はエバンズさんに何か指示を出した後アンドリュー国王は俺達の所に戻って来た。


アンドリュー国王の厳しい表情が気になった俺は


「義父・・さんなにか気になる事でもあったんですか?」

と聞くと


「おお~早速義父さんと呼んでくれるか。ふふっ、実はイーグルトン子爵家の3女のキャロルが皆を此処に呼び出した頃から姿が見えなくなっているのが解ったのだよ」


「それって・・・・」


「そうだの~キャロル・イーグルトンが密偵と決まった訳では無いが、呼び出した直後に姿が見えなくなったという事はキャロル・イーグルトンに密偵疑惑が浮上したのはかくじつじゃの。今キャロル・イーグルトンの行方を調べさせている所だ


なので婿殿との食事をしたかったのじゃが出来そうになくなった

住まんが用意させるので婿殿達だけで食事してもらえないだろうか?」


アンドリュー国王は済まなそうに俺達に謝って来る。

「そういう事でしたら、久しぶりに皆に俺が料理を作りたいと思っていますので俺達だけで食事をしようと思います。なので料理の用意は要らないですよ?」


「良いのか?」


「はい。皆もそれの方が喜ぶみたいですし・・」

そういって

アリシャ、麗香、クララ、アーネスト、リリス、トリア、ナスティア、クリスの方を交互に見ると・・


「真也の手料理~」

「楽しみ~」

「手料理!手料理~~」

「マスターの手料理食べた~~~い!!」

「旦那様の手料理です~」

「旦那様~素晴らしいです~」

「早く~早く~出して~出して~」

「旦那様の手料理~ワクワクします~」


皆同じ意見・・・だな!!


アンドリュー国王はそんな皆を見て


「ほっほ~婿殿は皆に好かれているようじゃの~それでは儂は密偵の件を片付けるからこれで失礼する」


と言ってキャロライン王妃に腕を抱き抱えられて王城の中に入っていった。



つづく・・・

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