第248話 248.襲われた商隊の事後処理

<真也>


山賊の仲間だと思われる男は急に苦しみだして口から泡を吹いた瞬間断末魔の悲鳴とも思われる声を上げて白目をむいて倒れてしまった。


慌てて脈を診るが・・・脈が無い・

心臓に耳を近づけてみるが・・・


『心臓の鼓動も止まっているよう』


腰に装着したベルトは一見普通のベルトのようにも見えるが偽装した皮の下には吹き矢の矢らしきものが装着されているよう


一瞬手に取って確認しようとも思ったが、多分毒とか塗っているだろうから迂闊に触ると大変だと思い途中で思いとどまった俺


俺は倒れた男から目を逸らし先に捕まえて抱えて来た男に視線を向けると・・

縛り上げて地面に降ろした男の首には吹き矢の矢が刺さっていた。


予想通りというべきか・・・

俺は倒れた男の顔の前に手を翳してみたが呼吸をしている様子は無い。

脈を診てみたが・・


脈も無い!!

「死んでるな」


俺は立ち尽くしていたデグラシア商会の会頭のゼルドさんに


「馬車に乗っていた男は、この商隊で雇った者ですか?」

と聞いてみると

「いえレノウンの街で出発の準備をしている時にトリステインまで乗せて欲しいと言ってきた旅人です」

「じゃ~この男が山賊の一味で、山賊達と使い魔で連絡を取り合って山賊達に襲うタイミングを知らせる役目と、山賊達が失敗した時に暗殺する始末屋の役目を負っていたのでしょう」


「そんな・・・では最初からこの商隊は襲われる予定だったという事ですか」

「レノウンの街に潜り込んで積み荷とか乗客とか金目の物を運ぶ商隊の情報を探って、襲う商隊を選別していたのでしょう」


「これだけの状況を見て、そこまで予想できる貴方はとても優秀な方なのですね」

「いえ、優秀なのはそこまで調べ上げ、襲う商隊を選別していた山賊達の方が優秀だと思いますよ」

「ご謙遜をアリシャ第一王女様を娶る程のお方です。優秀じゃ無いはずが有りません」


うをぉ~そこでアリシャを出すんかい?

流石一流の商会の会頭だけはある。めちゃめちゃ話術に長けた人だ。


アリシャは?

アリシャが傍に居ない事に気づいた俺は辺りを見回してアリシャを探すと・・

あ~今さっきの襲撃で怪我をした人達の怪我を回復魔法で回復してるのか!!


焼けた馬車の脇で、怪我をした人に回復魔法を掛けているのを見つけた。

俺はアリシャの所に走りよって


「俺に手伝える事は有るか?」

「いえ、今治療している人で怪我人の治療は終わりますので大丈夫です」

「俺の府は、捕まえて来た山賊は吹き矢の毒で死亡した。暗殺した男も捕まえたが自害してしまったよ」

「では山賊のアジトは解らないままですか?」

アリシャは少し悲しそうな表情をしながらも患者に治療魔法をかけている。


「そうでもないさ。山賊の奴らの魔力追える簡易の使い魔的な物を奴らに付けている。難点は奴らの行動した軌跡をそのまま辿っていかなきゃいけないって事だけだな」


俺がアリシャにそう言うと

アリシャは治療を終えて俺に満面の笑顔を向けながら


「じゃ~早速後を追いましょう」


そう言って立ち上がって俺の手を掴んで歩き出そうとするから

「ちょっと待て、この商隊に山賊の死体をトリステインに持って帰ってもらって山賊の事を調べてもわらわないといけないからその手配の間だけ少しの間待って欲しいんだ」

「解った」


アリシャはそう返事はしたのだが・・

掴んだ手は放してくれなかった・・

『皆に見られてるんだが・・・』

アリシャ第一王女の結婚相手って事で何か余計に注目されてる気がするぞ・・

何か言って機嫌損ねても嫌だし・・・


このまま行くしか無いか・・


『はぁ~』


っと情けないため息を付いてしまう俺

「速く行きますよ」

「ハイハイ解りましたよ」


俺はデグラシア商会の会頭のゼルドさんに、山賊の死体とレノウンの街から乗せて来た自害した男の死体をトリステインの衛兵に引き渡して事情を説明してもらうようにお願いした。


デグラシア商会の会頭のゼルドさん達は大破した1台の馬車の荷物を残った馬車に載せ替えた後、この場所を離れるそうだ。

山賊の火球の攻撃で燃えた馬車は幌が燃えただけで馬車としての機能は大丈夫だった。

因みに、火球で攻撃された馬車はレノウンからの旅人を乗せていた馬車だったらしく軽い火傷を負ったくらいでアリシャの回復魔法で問題は無かった。


俺とアリシャはデグラシア商会の会頭のゼルドさんに別れを告げて、一路山賊の足取りを追って森の中へと入っていった。


つづく・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る