第7話 魔人VS変態


              ☆☆☆その①☆☆☆


 –ギシャアアアアァァァァッ!

 鋭い円ノコが、ジャッと二人の間を斬る。

「きゃ!」

「わっ!」

 ステップでかわしたローズブレードと、バックジャンプで距離を取る優。

 クローン戦士である二人の反射神経でなければ、真っ二つにされていただろう。

 少しオーバーなくらいバックした優を、剣戟少女が認める。

「優、上手いわ! 私が牽制するから、近接戦のあなたは魔人をよく見て、トドメを刺して!」

 そう指令を出すと、赤い少女が剣を抜いて魔人へと接近をして、素早い剣戟で鍔迫り合いになる。

「ィヤぁあっ!」

 素早い剣と回転するパワーのノコが激しくぶつかり合って、鋭い火花が散りまくり、凄まじい金属音がギャンギャンと鳴り響く。

 優は円ノコ魔人の動きを見ながら、大変な事に気が付いた。

「! まずいぞ美尋っ!」

「えっ!?」

 何か、美尋では気づかない魔人の特性に気づいたのか。

「俺、美尋みたいに変身した時の名前、まだ無いぞ! そうだっ、爆乳ファイターってのはどうかなっ!?」

 くだらなすぎる意見と名前に、思わず力が抜けるローズブレード。

 戦闘中にも拘わらず、つい優に振り向いて激怒してしまった。

「そ、そんな事言ってる場合じゃないでしょっ!」

 戦士としては隙にならない刹那だけど、この魔人にとっては、付け入る隙となる。

 一瞬だけ、円ノコ魔人を視線から外してしまったローズブレードに、鋭い刃が襲い掛かった。

「美尋後ろっ!」

「えっ–きゃああっ!」

 優が咄嗟に駆け出しながら叫んだと同時に、振り下ろされた円ノコが赤い少女に炸裂。

 一瞬だけ早く避けたから、肉体的なダメージは無し。

「危なかっ–あっ!」

 しかしバイザーとスーツの胸が斬り裂かれ、素顔と豊乳が露出してしまった。

「–きゃああぁっ!」

 思わず真っ赤になって、両掌で乳房を隠し、地面に膝もついてしまう。

 隙だらけになってしまったローズブレードに、再び頭上から、金属の刃が迫った。

「!」

 身をこわばらせるしかない、ローズブレード。

「美尋っ! セアっ!」

 巨大な円ノコが少女の頭髪に触れる直前、優の重たく鋭い蹴りが、ゴンっと円ノコを弾く。

 着地と同時にバランスよく跳躍をした青い格闘戦士は、体重を乗せたその勢いもそのままに、魔人の腹部へ飛び蹴りをお見舞い。

 魔人は後方へと吹っ飛ばされて、ゴロゴロと転倒をした。

 小柄な優の大きな戦闘能力に、ローズブレードは唖然とする。

「す、凄い…!」

 優は魔人から視線を外さないまま、パートナーに声をかけた。

「大丈夫かっ!? 美尋の顔とか、おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとか–」

「はいはい おかげさま! そんな事より魔人っ!」

 感謝しかけて呆れる黒髪少女だった。


              ☆☆☆その②☆☆☆


「あなたは初陣なんだから、いま応援の要請を–」

 状況を考えるローズブレードに比して、優は呑気に答える。

「ヘーキヘーキ。ヤツの動きは大体わかった。任せろ!」

「え…!」

「剥き出しにされた美尋のおっぱいの仇、ちゃんと取ってやるぜ!」

 明るく言い放つその顔には、傲慢ではない、実戦を潜り抜けて来た戦士の笑顔があった。

「…優…」

 起き上がる魔人に向かって、優は接近しつつ隙なく対峙。

「ほらほらノコギリの化け物。こっちにもおっぱいがあるぜ!」

 言いながら、スーツの上から寄せ上げた乳房をユサユサさせて挑発をする。

「…あのド変態…っ!」

 呆れる美尋だけど、エロい動きな優の油断の無さも、実感していた。

 –ギシャアアアアアアアアアアアアアッ!

 優の挑発をどこまて理解しているにかはともかく、魔人は優に向かって、円ノコを回転させて襲い掛かる。

 両腕だけだった円ノコが、更に二本増えて、四方向からの高速襲撃。

「優っ!」

 上下左右から、ランダムに襲い掛かる高速の斬撃刃。

 しかし優は、全ての円ノコを紙一重でかわし続けた。

 わずかに掠った刃物に斬られた小さい布片が、チリチリと散らされ続ける。

「ホっ、ハっ! うひょ、思ったよりも早いノコギリだな! ピザ屋で働けば重宝されるゼ!」

 魔人の攻撃を紙一重で避けながら、軽口を叩ける余裕がある。

 攻撃をバックステップでかわしながら、魔人を引き付け、美尋から遠ざけてもいた。

「ハっ!」

 十分に引き付けてから、更に大きなステップで距離を取る。

「美尋っ!」

「は、はいっ!」

 何かの作戦だと思って美尋に、優が告げる。

「見ろ見ろっ! 俺のスーツがアチコチ破れて、エロピンチって感じだろ!」

 立ち上がりかけたローズブレードが、くだらなさ過ぎてコケた。

 ズタズタのスーツから素肌を晒しつつ、優は道中で美尋から聞いていた、ベルトの必殺スイッチをオン。

「間合いは十分。これだっけ、必殺発動!」 

 途端に、ベルトの表示がクリア・クリムゾンで眩く輝き、強い破壊の神通力が両脚に伝わってきた。

「きたきたきたっ! すげー力が足に溜まるっ!」

 –ジャアアアアアッ!

 戦士の光に挑発されたらしい魔人が、全速力で接近してくる。

 全身に積層された円ノコを、いくつも素早くスライドさせて、リーチも長く突き出してきた。

「ノロいぜっ!」

 幾筋もの円ノコを見切った優は、魔人の懐に飛び込んで素早く上へとジャンプしながら、クルりと縦回転。

「必殺っ! 女体落としっ!」

 刃の無い脳天へと、光の踵落としを叩きこんだ。 

 –っズンっっ!

 –ッッギジェエエエエエエエエエエエエエエッ!

 小柄だけど重たい一撃で、円ノコ魔人は強烈に発光。

 悲鳴を上げて、爆散をした。

 綺麗に着地をして、一発で勝利を決めた優。

「す、凄い…優…」

 美尋も驚き、そして心底から見直していた。

 一息つきながら、振り向いてサムズアップ。

「ふう…一丁上がりだ。美尋のおっぱい剥き出しの仇、取ってやったゼ!」

 笑顔で振り向いた優のスーツも、胸が裂かれて今頃のようにおっぱいが露出。

「ゆ、優もおっぱいおっぱい!」

「よし! 計算通りだっ!」

「…あーそーですか…」

 やっぱり呆れるローズブレードだった。

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