第6話 魔人が出た
☆☆☆その①☆☆☆
薔薇のエンブレムが描かれた大型のサイドカーで、車道を移動するヘルメットの二人。
操縦しているのは美尋で、優はサイドの車に乗っていた。
「美尋さー、年齢的にまだ大型バイクの免許、持ってないだろ?」
「私たちは超法規的な存在だから、特例なの! あなたもすぐに研修があるから、免許貰ったら、専用のオートバイも支給されるわよ」
「バイクを子宮…っ! なんてエロいんだっ!」
全裸でバイクを走らせながら、シートに設置した振動棒で子宮を刺激。
とか妄想して、勝手に興奮している優だ。
「うへ…うへへへへ」
「?」
変態元少年のエロ妄想レベルが高すぎて、美尋には何のことだか全く分からない。
ただ、やっぱり優は変態なのだという事だけは、あらためて分かった。
車道にはアチコチで一時規制が敷かれていて、普通の車両は六丁目方面に入れなくされている。
「ご苦労様です! 紅美尋と、白鏡優です!」
通行規制をしている警察官に美尋が名前を告げて、優も促されて学生手帳を掲示。
警察官はテキパキと、バーコードのような読み取り機で二人の学生証を読み取ると、声で確認をする。
「確認しました! ご苦労様です! どうぞ!」
規制線を超えたら、侵入禁止区域で身体を張っている機動隊員たちと、現場の六丁目から逃げてくる人々が見えて来た。
現場が近づくにつれて増してゆく騒々しさに、変態の優も、ちょっと真面目な顔になる。
「なんか、すごい事になってるっぽいな」
「そりゃあ魔人が出たんだもの。一般の人たちとか車は出入り禁止、ケータイの基地局からは強力な妨害電波を放出中。写真も動画も撮れないし、上空だってヘリもドローンも進入禁止状態よ。ついでに、地域限定でネットも遮断中」
美尋がスラスラと教えてくれながら、サイドカーが現場に到着をした。
魔人出現の場である六丁目は、街はずれでサイクリングコースがある大きな公園があり、地域住民たちにも親しまれている。
公園の入り口には青いワンボックスが止まっていて、サングラス氏たちが二人を迎えてくれた。
「おう、早かったな。行くぞ、住民の非難は完了している。敵は、とにかく早く動く物に飛びつく魔人だ。二人とも、気をつけろよ!」
「はいっ!」
「え、は、はい!」
サングラス氏の口調は、フランクだけど切迫していると感じる。
真剣な空気に、思わず真面目な返事をしていた優だった。
「それじゃあ、行きます!」
ベルト手にして、優と美尋は魔人が出現した現場へと走った。
☆☆☆その②☆☆☆
サイクリングコースの林の方で、国防隊らしき武装隊員たちが、何か大きな影と戦っている。
見ると、切り裂かれた負傷者もいた。
「こ、この人たち、怪我してるぞっ!」
「私たちが来るまで、人のいない場所まで魔人を誘導、隔離してくれた特殊部隊の方たちよ!」
二人に気づいた負傷隊員が、力強くニっと笑ってエールをくれながら、隊長に連絡をする。
「こ、こちにC方面隊! ソルジャー到着…うぅ…! ソルジャーは戦線に向かいます…っ!」
必死に息を吐いて報告をすると、再び、心配させまいという笑顔で応援をくれながら、ハンドジャスチャーで怪人のいる方向を示して見せた。
「はいっ! あとは任せてくださいっ!」
気丈に応える美尋の瞳が、涙で潤んでいるのが、優にも解った。
「…魔人か…!」
優の闘志にも火が灯る。
走ってバトルフィールドに入った二人の目に映ったのは、大小さまざまな円形ノコギリを無数に重ねて二メートル大の人型を作ったような、異様な魔人。
全身の円ノコをギュンギュン言わせて、撃ち出される銃弾を火花散らして無効化していた。
初めて見た魔人に驚く優と、緊張しつつ冷静な美尋。
「何だあれっ? 特撮のCGか?」
「あれが、黄泉の国が下ろしてくる魔人よ。ピストルとかロケットランチャーとか、現実だけの科学力では、ダメージも負わない。アイツを倒さないと、大勢の被害者が出るの! だから私たちが、倒すの!」
「…そうか!」
美尋の手早い説明を聞きながら、二人でベルトを巻く。
「いくわよ、優!」
「ああ、一緒にイくぜ美尋っ!」
こんな時でもエロを忘れない優に心のどこかで呆れながら、美尋は一緒に装身をする。
「「装身っ!」」
光の中で一瞬だけ全裸になって、赤いスーツのミニスカ剣士と、青いスーツの格闘戦士が出現。
「ローズブレード! 行くわ–」
「うおおおおっ、公園で全裸になっちゃったゼっ! エローーーーーーっ!」
女体での公園全裸体験でウハウハしている優だ。
「いつでもどこでも変態かっ!?」
そんな二人のヤリトリを突っ込まず、特殊部隊の隊員たちが、戦闘の邪魔にならないようにと後退をする。
『あとはお任せします!』
「了解です! ご苦労様でしたっ!」
二メートルの円ノコ魔人と対峙する、美尋と優。
人類を護る二人の戦士に、黄泉からの魔人は敵意も剥き出しで襲い掛かってきた。
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