第4話 女子転入生として
☆☆☆その①☆☆☆
HRの始まった教室では、着席している美尋と、中年教師に教壇で紹介されている優の姿。
ホワイトボードには「白鏡 優」と、優の自筆で大きく名前が書かれている。
字はあんまり綺麗ではない。
「え~、ね。転入生のね。白鏡優くんです」
職員室で会ったときよりも一段、頼りない感じの教師を演じているエージェントさんだ。
「初めまして! 白鏡優でぇす! よろしくお願いしま~すっ!」
小柄な身体を楽しんでいるかのように、愛らしく明るい笑顔でペコりと挨拶。
紹介されると、特に男子たちが「おおおおおっ!」と、色めき立った。
「ふふふ…俺の魅力で簡単に参ってやがるぞ。この野獣どもめ!」
という内心を言葉に出さず、黒エロな本性を隠した明るく清純な笑顔で応える優の、どスケベ本性を、偽りの笑顔から読み取っている美尋だ。
美尋の友達は、小柄て明るく美少女な優に、興味を持っている様子。
「ねーねー美尋、今朝一緒に登校してたけど、知り合い?」
「え、えーと……」
しまった見られていたんだ。と、焦って答えに詰まる黒髪少女だ。
対して優は、男子たちの反応を見て悦に浸る。
「解る。解るぞ! エロくて明るくて清純っぽい美少女に、オレたち男子が何を求めているのか!」
という黒エロ本性を隠しつつ、イタズラ笑顔を振りまいた瞬間に、微妙な腰の動きだけで制服のミニスカートをチラりと捲る。
「きゃ…!」
ギリギリまで捲った刹那に、恥ずかしそうにスカートを押さえて、頬を染めて俯いてから、恥ずかしさを誤魔化すように笑顔。
「み、見てないよね…えへへ、ドジしちゃった」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」
男子たちは熱狂し、女子たちは「?」顔。
美尋の友達が、美尋に訊ねてくる。
「ちょっと天然?」
「し、知らないけど~」
他人の顔を決め込んだ少女に、教壇で目立つ優が手を振っている。
「美尋~、見えた~?」
教室のみんなが「知り合いなんだ」と、美尋に振り向く。
「美尋、呼んでるけど」
「し、知らない人よ!」
「え~、ね。それでは白鏡くんね、廊下側の後ろの席が 空いてるからね。座ってくださいね」
「は~い♪」
男子たちへのチラエロサービスも思い通りで気分の良い優は、指定された後ろの席に着席。
「え~、ね。それでは授業を始めます」
しかし優は、まだ教科書を用意されていなかった。
隣の席は、眼鏡をかけた真面目そうで気弱そうな男子で、隣に座った優を意識して顔が赤い。
優は、自ら椅子を隣に寄せて、愛顔と、制服の胸元を中から押し上げる爆乳をアピールしながら、無邪気っぽくお願い。
「教科書、見せて貰ってぃい?」
下から覗き込むと、眼鏡男子は更に真っ赤になって眼鏡を曇らせ、顔と胸をチラと見てしまってから「は、はいっ!」と即答をくれた。
(クックック…エロ慣れしていない大半の男子の心理など、手に取るようだぜ!)
自分もそうだったから、よく分かるようだった。
☆☆☆その②☆☆☆
「え~、ね。今日はここまで」
一時限目の授業が終わると、優は「う~ん…」と背筋を伸ばす。
小柄な身体の胸を張ると双つの爆乳が突き出され、全身を力ませるとプルプルっと媚振動。
転入生という目立つポジションも手伝って、男子たちの視線は優の乳房と、力む感じのHな表情や脱力する官能的な媚顔に集中された。
「ね、ね、どこから来たの?」
「趣味は? オレ、ジャズとか好きなんだけど–」
男子たちからの質問攻めで、女子たちが入る隙も無い。
ムサい男子たちの質問とは全く関係ない答えを、優はスラスラと答える。
「みんな背が高くって、いいなぁ~。私なんて小っちゃいから、色々と不便なんですよ~」
立ち上がって、近くの男子と背比べ。
「う、うひょ…っ!」
「「「ぐぬぬぬ…っ!」」」
男子のお腹に爆乳が触れると、触れられた男子は赤くなって喜んで、他の男子たちから嫉妬される。
熱量の高い男子たちの更に外周では、優に話しかけたい女子たちが呆気に取られていた。
「あの子、可愛いけどちょっと変わってるわね」
話をフられた美尋も、呆れている。
「ガワはともかく、中身は変態ドスケベ男子だからね…」
体育の時間になって、女子たちは女子更衣室で着替える。
クローン女子である優も勿論、女子たちに混じって着替えをする。
「うっひょ~~~~つ! みんな下着姿で可愛い~っ!」
興奮してハフハフしているように、体操着で上半身を隠した美尋がゲンコツをくれる。
「いいからさっさと着替えなさい!」
制服を脱いで下着姿になって、体操着に着替える優。
元少年的には女子たちのパラダイスにしかし、突然の悲鳴が轟く。
「あっ、やだっ! カメラっ!」
天上近くの小窓の外から、盗撮されていたらしい。
優も、スマフォのカメラ部分が引っ込む瞬間が見えた。
「あっ!」
美尋も気付いたものの、まだ上半身は下着姿なので追えない。
「ったく、盗撮かよ!」
呆れた様子の優が、体操着を素早く着ながら走り出した。
廊下の窓から俊足のジャンプで外へと飛び出し、逃げる男子を追いかけて重たい飛び蹴り。
「セイっ!」
「ぶげっ!」
背中を蹴られた男子は、無様に転げてスマフォを手放した。
馬乗りになった優が、盗撮男子の胸倉を掴む。
「お前なあ!」
「ひいぃっ…ゆ、許してくれえぇっ!」
追い付いた女子たちにも囲まれて、男子は完全にビビって涙を浮かべている。
モップや箒で武装した女子たちに、盗撮男子は土下座で謝罪。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいいっ!」
「もう…みんな、どうする?」
美尋が女子たちに訊ねるも、初犯で出来心だと解った女子たちは、どうしようかと迷っていた。
みんなにはナイショだけどクローン戦士な美尋は、こういう時にリーダーシップを発揮する。
盗撮少年のスマフォの写真を全て消しながら、呆れた様子で告げた。
「今回は先生に黙っててあげるけど、もうこんな事、絶対にしないでよ!」
「は、はいいいっ!」
注意する美尋と、感涙しながら土下座をする盗撮男子。
土下座男子の頭に片足を乗せている優が、更に言う。
「美尋の言う通りだ! 男子だったら盗撮なんてケチな真似しないで、堂々とスカートを捲るベキだっ!」
真面目な顔で切説する優に、美尋は呆れて女子たちは呆気にとられ、盗撮男子もポカんとしていた。
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