第3話 納得
☆☆☆その①☆☆☆
優の疑問に動じず、サングラス氏は説明を続ける。
「次に、クローン戦士…つまり君たち適合者についてだ。伊弉冉尊の遺伝子を持つ者は意外と多いが、強化システムに対応できる適合者はごく少数…まあ百二十万人に一人、いるかいないかだ。そんな人物が魔人との戦闘で万が一の事があったら困るから、我々組織はクローンを作って、キミたちクローン戦士に戦ってもらう事にした。というワケだ。という活動を、もう十年以上、続けているのさ」
「日本人は十年以上、黄泉の魔人と戦ってるって事ですか…あれ?」
そこまで聞いて、優はフと思う。
「っていうか、そもそも黄泉の国の魔人とか伊弉冉尊からの変化システムとか、どうしてこっちに伝わったんですか?」
政府の秘密会議の場に伊弉冉尊が映像的に出現した。とか、格好良い場面が浮かぶ少年だが。
「伊弉冉尊ご自身が、恐山のイチコを通じて教えてくださったのさ。ただし、解ったのはそこまで。黄泉の国がどうして魔人を送り込んでくるのかとか、黄泉の国の事情は全く分からん」
ちょっと真面目に答えたサングラス氏だけど、イタコとか出てくると、急に昔のコントのような気がしてくる優でもあった。
「…とにかくその、俺たちクローンがその魔人とやらと戦う、と? えっと、黄泉の国の魔人やクローン技術や変化のシステムも、恐山のイタコを通じた伊弉冉尊が教えてくれた、と」
優の、一見すると突拍子もない話を正確に認識している様子に、サングラス氏もウンウンと満足気に頷いている。
「うむ。で、遠回りになったが、キミの最初の質問の答え。身体が女性化したのは、生成段階でより伊弉冉尊の遺伝子を重視した結果、最も遺伝子が強かった世代が顕著に表れた。という事だ。そして君が戦うという事は、つまりキミのオリジナル体、香我美勇士郎君の日常を護る。ということでもある。解ったかい?」
説明を終えて、また明るく笑うサングラス氏。
しかし優は、納得がいかない。
「なんか理不尽じゃないですか? 第一、クローンと俺はもう別人じゃないですか! 納得できません!」
当たり前だが、まだ香我美勇士郎である部分から離れられない。
と真面目な顔で抗議しながら、自分のおっぱいとお尻を撫でている優は、生粋の変態だ。
「とても納得しているように見えるけど?」
美尋はまた呆れる。
ぶう垂れる優に、サングラス氏は美味しい話を振った。
「一回の戦闘で勝利するたびに、結構な金額の報酬が支払われる。そうすればエロ本だって買い放題だぞ」
「人々の自由と平和を守る為に、僕は喜んで戦いましょう!」
綺麗な眼差しでガッチリと握手をする優とサングラス氏。
やっぱり美尋は、呆れるだけだった。
☆☆☆その②☆☆☆
「それと、君の家は本日からここだ。美尋くんと仲良くな」
目覚めた場所は、黒髪少女が一人暮らしをしている、組織の一軒家だったらしい。
「どっ、同棲やっほ~~~~~~~っ!」
訊かされていた美尋は驚きもしないが、言葉も無かった。
翌朝、二人は学校へ。
美尋と一緒に暮らしている事もあり、優は新しい学校へと転校したのだ。
学校は、桜咲市立 太陽学園高等学校。
二人の制服は、ブレザーにミニスカートと、標準的な制服姿だ。
生まれて初めて履いたミニスカートに、優は戸惑いながらもエロ欲求がワクワクしている様子。
「これがスカートの感触なのか~。なんかペラペラしてヤらしい感じだな~」
端を摘まんでヒラヒラさせて、イヤらしい表情を隠さない。
自らミニスカートを捲ってギリパンチラ無しでエロ顔を晒している小柄爆乳な美少女に、道行くサラリーマンたちの方が恥ずかしくて視線を逸らす。
そんな言動な優に、冷たい美尋だ。
「教室では話しかけないでね。あなたと知り合いだとかバレると 恥ずかしいから」
「何を冷たい事を。一緒に寝た仲じゃないか!」
「ええ 隣の部屋同士でね」
と返して、ハっと気づいて、凄む美尋。
「念を押しておくけど…一緒に暮らしてるとか、間違っても絶対に、誰にも言わないでよね! 私だって組織の命令で仕方なく一緒に暮らしてあげてるんですからね!」
「そうか。美尋が部屋べつべつでも我慢しているのは、組織の命令だからなんだな!」
「…あんた、クローン生成に失敗してるんじゃない?」
話の通じない同棲相手に、つくづく身の不運を嘆く黒髪少女だ。
学校に到着すると、美尋は教室に、優は職員室へと向かう。
「職員室?」
「こっちよ」
なんだかんだ文句を言いつつ、優を職員室まで連れて行って、担任の先生に紹介してくれた美尋は、優しい女の子だと優は思った。
紹介された担任の先生は、初老の男性である。
「ああ、君が転入生の、白鏡優さんですね。私は担任の田中です。白鏡くんや美尋くん、あと、サングラス氏と同じ、世界平和維持機構の職員です」
「あ、どうりで。物腰が柔らかいのに視線に隙が無い人だと思ったら」
優の認識に、たぶんコードネームであろう田中氏だけでなく、美尋も驚いた。
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