《忍神》の忍刀スキル

「ザラタンが生息している場所、シロは知っているか?」


「知りませんが、においで探せると思います」


 ケントの問いにシロは答える。


「そこでしたらこの平原から南東にありますよ」


 とリーゼが教えてくれた。

 彼女に聞くのは何となくバツが悪かったケントはしまったと思うがもう遅い。


「ありがとうございます。シロ、頼む」


「はーい」


 シロは軽く羽を動かし返事をして、空に浮いてかごをつかむ。

 そして指定された川へと彼らを運んだ。


「見えてきましたね」


「今さらですがザラタンの戦力はいくらくらいなんですか?」


 とリーゼにケントが聞く。


 赤鉄ランクで捕獲依頼が出るくらいだから、おそらく10くらいではないかと彼は予想していた。


「たしか7か8だったかと思います」


 彼女の返事に彼はやはりかと思う。


「ならシロでも簡単に勝てるな」


 レベルが40も離れているなら、オーバーキルに気をつけるべきだ。


「ホワイトバードが勝てない存在だなんて……いるとすれば、せいぜいドラゴンくらいじゃないでしょうか」

 

 リーゼはケントが冗談を言ったと思ったらしく、くすりと笑う。


「ドラゴンですか」


 彼は怪訝に感じる。


(ドラゴンは幼体でレベル20、下級ドラゴンで50くらいだっただろう? 成長して進化した後ならともかく、ホワイトバートじゃ勝ち目はないはずだが)


 ドラゴンがホワイトバートと同等と思われるのがこの世界だというのか。


「ドラゴンはまだ見たことがないですね」


 降下しながらシロが会話に入る。

 

「私もですよ。おとぎ話で聞くくらいです」


 とリーゼが彼女に答えた。

 なるほど、実際に見たことがある者が少ないせいかとケントは解釈する。


 そうしている間にかごは河岸に着地した。


「じゃあザラタンを捕獲してくるので、少しお待ちください。シロは一応護衛のために残ってくれ」


 とケントは言う。


 可能性は低いだろうが、彼が離れた隙にリーゼがモンスターに襲われる可能性を防ぐためだ。


「はーい」


 シロはわかっているのか、人の姿にならず鳥の姿のままリーゼのそばで待機する。


 ケントが川をのぞいてみると、小さな魚の群れが泳いでいた。


「えーと……ザラタンは小さな魚を食べるモンスターだったっけ?」


 と彼は自分の記憶を探す。


 カニって魚を食べるのかと思わなくもないが、そもそも川にいる時点でおかしい気がする。


 《忍神》の視力を活かして広い範囲で水中を見回していると、視界の左上端に大きなハサミがちらつく。


 意識をそちらに向けるとカニの姿をした大きなモンスターが二匹、小さなサイズのカニが二匹いた。


「親子だと?」


 想定外の状況に声が漏れる。

 養殖を目的とした捕獲なら、子どもがいるのは悪いことではないだろう。


 追加報酬の要求だってできるかもしれないとケントは期待する。


(ダメだったら売って金にかえればいいだろうし)


 どう転んでも損はしないと計算したのだった。

 ザラタンは水中だとすばやく動けるが、陸上では機動力が一気に低下する。


「忍法で川の水を凍らせるのが一番手っ取り早いだろうけど、レベル10もないんじゃ即死だよなぁ」


 ケントはつぶやくと言うよりぼやいた。


 たとえ一番弱い忍法だろうと、レベル200のスペックで使えばレベル10未満のモンスターが耐えられるはずもない。


「あれで行くか……一回くらい失敗してもいいだろう」


 彼は使うスキルを決めると背負っている刀を抜き放つ。

 選んだのはニンジャが使える刀のスキルだ。


「秘剣・四連斬!」


 秘剣と名はついているが、実のところただの四回連続で斬撃を放つだけのスキルだ。


 この超高速の斬撃でザラタンがいる場所を周囲の水ごと斬って、無理やり宙に浮かばせて陸に放り出す。


 ザラタンを傷つけないこと、水を斬ってもザラタンたちを宙に浮かせられるのかという点。


 二点をクリアする必要がある難関だったが、ケントは見事一発で決めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る