ファーゼのハンター組合

「この町はファーゼっていうんですよ。大きな町じゃないですけど、東西南北にそろれぞれ大きな町があるんで、中継の町と言われていますね」


 ケントが遠くから来たと申告したからか、町に入りながらジョーが解説してくれる。


(ファーゼ……知らない名前だな。ゲームの世界じゃないのか?)


 うなずきながらきょろきょろとケントは周囲を見回した。

 石造りの建物が多く、雰囲気はゲームで見かけたものに近い気がする。


 細かい差異があったところで、どうせ自分には区別できないとケントは思っているので、注意深く観察したわけではないが。


「二階建ての建物が多いんですね」


 とケントはつぶやく。


「ああ、一階は店で二回が自宅って人が多いんですよ」


 ジョーの説明になるほどと彼は思う。


「ハンター組合はこっちです」


 ジョーが案内してくれたのは大通りのすぐそばにある、赤い屋根のレンガ造りの三階建ての建物だ。


「こんにちはぁ!」


 ジョーが元気よくあいさつするとまずは彼、次にケント、最後にシロに視線が向けられる。


 特にケントには珍妙なものを見るような色が濃い。


(まさか俺のほうがシロよりも珍しがられるとは)


 ケントは少しショックを受ける。

 だが、人化したシロはこちらの世界の人間と見極めにくい。


 それに対して彼は《忍神》の希少な装備に身を包んでいる。

 考えてみれば理解できるとなかば現実逃避しながら納得した。


「こちらのケントさんは、今日こっちにやってきた『ホワイトライダー』なんですよ!」


 ジョーはまるで自慢するように紹介する。


「そう言えばホワイトライダーが現れたらしいって、町でうわさになっていたな」


「本物か?」


「うわさなんて聞いたことがなかったが」


 組合の中にいる男たちは半信半疑という顔のようだ。


 突然おそろしくすごい奴が出たと言われても信じられない気持ちはわかる、とケントは思う。


 彼だってまだ自分は夢の中にいるのではないかと疑いがあるくらいだ。


「登録をお願いしたいんですが」


 とりあえずケントは自分の口で希望を伝える。


「ええ。ではライセンスを渡しますね」


 受付の若い男性が黒鉄のプレートを二つ彼に手渡す。


「認識証なので首から下げてください」


 ジョーが胸元から取り出して見せてくれたのは青色のプレートだった。


「へえ、色が違うんですね」

 

 ケントが言うと、


「実績に応じて色が違うんです。下から黒鉄、赤鉄、銅、青磁と上がっていきます」


 ジョーは少し誇らしそうに話す。


「ジョーさんは青磁だからすごいんですね」


 ケントの言葉に彼は照れて頭をかく。


「やあまだまだですよ。八つのランクの真ん中くらいですから」


「青磁より上があるんですか」


 ケントの言葉に彼はうなずいた。


「ええ。ホワイトライダーのケントさんなら、おそらく大して時間をかけずに青磁までは上がれると思いますよ」


 ケントが知りたかったのは青磁よりも上のランクだったのが、とりあえず微笑みを返す。


「頑張ります」


 何しろ生活費を稼ぐあてが他にないのだから、やるしかないのだ。


「私も頑張る」


 ケントの意気込みを聞いていたシロが背後で可愛らしく続く。


「できればさっそく仕事がほしいんですが」


 ケントが受付の男性に話しかけると、彼は何枚かの紙をカウンターの上に並べる。


「どうぞ」


 一応期待して見てみた彼だったが、すぐに壁にぶち当たった。

 何が書いてあるのかさっぱり理解できない。


「ケントさんは別大陸から来られたんですから、当然無理ですよね。大陸共通語ってあくまでもこの大陸の話ですし」


 とジョーが言って横からのぞき込み、代わりに読んでくれる。


「えー、左から順番に薬草採取、荷物運び、それから商人の護衛ですね」


「……モンスターと戦うのがハンターの仕事なのでは?」


 ケントは率直な疑問を口にした。


「最初は経験積めってことでしょう。薬草採取や荷物運びだって、モンスターと戦うことがありますし」


 ジョーは苦笑しながら答える。

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