第26話 おめでとう
夕方になりおっさんは家に帰って来た。
大きな扉を開けようとする。
( みんなぁ? 準備は良いですか?? )
中で小声で合図をして、驚かせる準備をする。
そして扉を開けた瞬間。
「 ハッピーバースデイ!! 」
パカーーンッ!! クラッカーをみんなで鳴らせる。
「 うわぁっ!! 何だぁ?? 」
拍手をみんなでして出迎える。
そしてプロの音楽隊によるバースデイソングが鳴りながら、パーティー会場に案内される。
おっさんは嫌がっていたが、やってもらえるとやっぱり嬉しいもんだった。
「 みんなありがとう。 嬉しいぞい。 」
満面の笑みを浮かべ、子供のようにはしゃぐおっさん。
「 おめでとうございます。 おじ様! 」
「 初めまして! 明さんと付き合っている香織です。
宜しくお願いします。
それとお誕生日おめでとうございます。 」
伊藤さんと香織さんがおっさんの誕生日をお祝いに駆け付けていた。
「 綾ちゃん。 ありがとう!
香織ちゃんも宜しくね。
明みたいなバカな奴だけど宜しくな! 」
おっさんは大喜び。
女の子が大好きなのでウキウキ状態。
「 そう言えば…… あのボンクラ若造の姿が見えないが、何処に居るんだ?? 」
そうなのだ。
明の姿は何処にも見当たらない。
おっさんも祝ってもらいたい大切な人が居ないから、周りを見渡しながら探す。
「 社長。 あの…… ボンクラは遅刻です。 」
千鶴さんからそう伝えられると笑いが起こる。
「 本当にこんな時もちゃんと出来ないとは!
あっはっはっ!! 先にパーティー始めてよう。
なぁ〜に。 遅れて来る方が悪いんだから。 」
そう言い、大きなテーブルに料理が運ばれて誕生日パーティーが始まる。
おっさんなりのみんなへの配慮だった。
( 明君…… どうしちゃったの?
もう始まってるのに。 )
香織さんは時間になっても現れない明が心配になる。
その頃…… 明は?
「 ん〜〜っ。 田舎に来すぎて道に迷った。
タクシーも見当たらないし。
どうしたもんか…… 。 」
明は何故か少し離れた田舎で迷子になっていた。
「 はぁー …… 。
相変わらず要領悪いだよな。
みんなもう始めてるかなぁ。
今日のパーティーはシャトーブリアンとか、アワビに日本産の牛さんが沢山食べれるのに!
絶対に早く行かねぇと。 」
明は必死に暗い中、都会に戻ろうと歩き続ける。
来た道を戻ろうにも、暗くて何処を歩いているか分からなくなる。
一時間歩いても全く見覚えのある街には辿り着けない。
スーツ姿で何をしているのか?
ヘロヘロになり倒れる。
「 そろそろ限界だ…… 。
クソぉ。 伊藤さんも香織ちゃんも来てるのに。
何と言う恥さらし…… 。
電波もないしどうしようか? 」
明は大の字になり倒れながら空を見上げる。
( 神様…… 私に救いの手を差しのべて下さい。 )
綺麗な夜空にお願い事をした。
本当に神にもすがりたい気持ちだった。
そこに車のライトが見えて来た。
こちらに近づいて来る。
「 これしかない。
おぉーーい! 乗せてくれぇ〜〜いっ。 」
両手を広げて車にヒッチハイクをする。
近づいて来て車の形も見えるくらいになる。
にしても…… 田舎だからなのか?
とてもダサい。 嫌…… 。
田舎だからな訳ない!
ピンク色のイルミネーションたっぷりの、へこみまくりのダサダサカーだった。
車が止まり、ダサい車の窓が開く。
「 何処の田舎もんかと思ったら、明じゃねぇか。
こんな所で何やってんだ? 」
現れたのはかつての同僚、力丸だった。
ダサい車なのが納得。
少しでも田舎の人だからか?
と思った気持ちを恥じた。
「 力丸!? ちょっと用事があって。
道に迷ったんだ。 」
「 あははは! 相変わらずだな。
急にお前が辞めて寂しかったんだぞ?
俺の実家がここら辺だから、その帰りなんだ。
良かったら乗せてやるよ。
かつての同僚の吉身でな。 」
相変わらずうざったい奴だが、根は良い奴なのかも知れない。
同じ仕事仲間でなければ、少しくらいは友達になれるのかも?
今は力丸でも犬でも何でもいい!
頼るしかない。
「 力丸! 家まで乗せてくれぇ!! 」
そう言い、力丸のダサダサカーに乗り家まで向かってもらうのだった。
家ではパーティーは盛り上がっていた。
美味しい食事に、コンサートのような合唱団。
そこら辺のコンサートより盛り上がっていた。
「 あっはっは! 愉快だなぁ。
可愛い子や信頼する仲間にお祝いされて、ワシは幸せ者だな。 」
おっさんは少しだけ酒を飲み上機嫌。
でも明が居なくて、少しだけ落ち着かなかった。
「 おじ様。 これプレゼント! 」
伊藤さんからのプレゼント。
喜びながら中身を開ける。
「 おっほー! マフラーじゃ。
大切に使わせてもらうぞい。 」
直ぐに巻き付け、子供のようにはしゃぐ。
「 大門さん。 私からもプレゼント! 」
綾さんからのプレゼントを直ぐに受け取り、中身を見てみる。
「 おーーっ! ニット帽。
最高の組み合わせだ。
本当にありがとう。 」
「 社長…… 私からもプレゼントが…… 。 」
千鶴さんからもプレゼントが。
恥ずかしがりながら渡す。
顔に似合わず、ピンクの包みにリボンでしっかり梱包されている。
可愛いプレゼント。
「 どれどれ…… おう??
こりゃあ、写真立て?
何に使うんだ?? 」
「 今日。 みんなで記念写真を撮りましょう!
一生の思い出になるはずです! 」
何ともオシャレなプレゼント。
千鶴さんらしい発想。
「 おぉ! それはイイ!
最高だなぁ。 撮るのが楽しみだ。 」
有名な写真家の立川健二がスタンバイしている。
気合いの入りかたが違う。
それからメイドやコック。
執事や友達からの沢山のプレゼントを貰う。
本当に幸せ者だった。
これがおっさんの人徳であり、誰にでも優しい。
だからこそこんなにも人が周りに集まってくる。
ただ一人を除いて…… 。
「 よぉーし。 そろそろコックの最高の料理が沢山来たぞ!
みんなで食べよう。 」
そう言い、海鮮類や日本産の牛のステーキやしゃぶしゃぶ。
ローストビーフが運ばれて来る。
「 あいつはほっといて食べよう! 」
ガーーンッ!!
扉を思いっきり開ける音が鳴る。
「 そのパーティー! ちょっと待ったぁーー! 」
そこに現れたのは、汗だくでスーツも泥だらけの明の姿だった。
「 若造!? 遅いぞ! 」
おっさんは凄い嬉しい気持ちになっていた。
やっぱり間に合った。
「 明君?? どうしたの?
そんなにボロボロになって汗だくで。 」
綾さんも心配で駆け寄る。
「 このおっさんに最高のプレゼント買って来たんだよ。
おっさんは舌が肥えてるから、そう簡単なもんじゃ満足しないからな。
だから遠くの田舎まで行って来た。 」
「 なに!? まさか…… ワシの大好きな、松茸か??
田舎って言ったらそれしかない。
お前って奴は…… 。 」
おっさんは凄いテンションが上がる。
「 んふふふっ。 そんなもんじゃない!
これを見よ!! 」
デカいサンタクロースの袋のような物をテーブルに乗せる。
周りからは嫌な予感しかしなかった。
恐る恐る中身を開けると、入りきらないくらいの駄菓子が出てきた。
「 驚いたろ? 駄菓子の大人買い。
これを買う為だけに田舎の駄菓子屋に行ったんだぜ。
これは度肝抜かれたろ??
ビックリしたろ? 」
おっさんは少し黙り、深呼吸をする。
「 こんなもんプレゼントにするなぁ!!
プレゼント失格だぁーーっ! 」
「 えぇーーっ!? 」
明は叱られ、周りからは相変わらずで笑い声が聞こえてくる。
おっさんは駄菓子の賞味期限が切れてるとか、いちゃもんつけまくり。
料理はお預けとか怒りまくり。
だけど内心は可愛い子供の初めてのプレゼント。
とっても嬉しいのは秘密。
「 念のために後はこれ!
誕生日…… おめでとう。 」
恥ずかしながら渡す。
それは気に入らなかった時の為の、手帳のプレゼントだった。
凄い上質な物。
「 ふん。 これくらいなら許してやる。
駄菓子でもみんなで食べるか? 」
みんなで駄菓子を食べて子供に戻った気分を味わう。
明も満足そうにステーキを食べようとする。
「 若造!! お前は食べんのか!? 」
「 むしゃむしゃ…… 。
安いのはお口に合わなくて。」
沢山頬張りながらそう言うと。
「 お前は出て行けぇーーっ!! 」
本当に賑やかなパーティーだ。
明が来てから本当に賑やかになった。
そして送ってきた力丸も参加していた。
「 えっ!? 九条グループの家?
どうなってんだ??
まぁ、俺も食べようっと! 」
力丸もパーティーを楽しんだ。
おっさんにとって最高の誕生日になった。
そして、みんなで記念写真。
その写真はおっさんと明が肩を組んでいる、最高の親子の写真が撮れた。
おっさんの宝物になった。
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