第20話 グダグタなフィナーレ



二人で綺麗な海が見えるレストランで昼食を済ましていた。


「 美味しかったぁー。

海鮮パスタ最高。 」


「 美味しかったね。

評価で選んで正解だったね!」


二人は昼食を満喫し、ゆっくりお話をしていた。

次に何処へ行こうか話していた。


( まだまだこれからだ!

最後は夜景の見える場所で告白するんだ。

絶対にこれは欠かせない…… 。 )


心の中でそう呟きながら次の場所へ向かう。


フラワーガーデンに到着した。


「 ここって凄い大きいフラワーガーデンだよね?

私まだ一度も来たことなかったの。 」


( んふふふっ。 そうだろ、そうだろうよとも。

フラワーガーデンは実は穴場だってデート雑誌に書いてあったんだからね。

休日は何処も混む所が、ここはそんなに混まないで快適に回れるんだ。

情報を得ている者が最強なのだよ。 )


心の中で少し誇らしげになり、珍しく酔ってしまっていた。

前日の下調べ5時間は伊達じゃない!


中へ入ると長蛇の列が出来、レジまでも凄い並んで先が見えなくなっていた。


「 あはは。 考える事ってみんな同じだね。 」


香織さんは怒る事なく笑ってくれた。

何故なのか? …… 周りを見渡すと、カップルばかりが並んでいる。


( ん? みんは穴場のデートスポットの雑誌持ってるじゃんか!

やられた…… 。 雑誌は当てにならないなぁ。 )


この時に思いしらされた。

雑誌に載ると言うことは、他の人も見ていると言うこと。

その時点で穴場とは程遠い存在になるのだ。


「 …… 何かごめんね。

混んでないかと思ったんだけど。 」


必死に謝ると、混んでいるのにも関わらず香織さんは全然機嫌が悪くなってなんかいなかった。


「 全然! 謝る事何かないよ?

だって一生懸命決めてくれたんでしょ?

だったらそれだけで嬉しいもん! 」


何て良い子なんだろうか…… 。

明のような妬み、恨み、嫉妬するような奴には勿体ないくらいに良い子だった。


( 落ち着け俺! まだいける…… 。

こんな時は次のプランBだ。 )


フラワーガーデンを列に並びながらゆっくり見学して、時間がかかりながらも見終わり次の場所へ。


歩きながら話をしていた。


「 綺麗だったよねぇ。 良い匂いだったし。

また行きたいね。 」


香織さんはずっと楽しそうだ。

ん? あまりにも可笑しくないか?

こんなに良い子は居ただろうか?

…… 少し考えてみた。


( もしかして、俺がおっさんの財産継ぐ事知ってて近づいて来たとかないかな?

まさか…… 。 嫌、このご時世何があるか分からん。

映画でもやってたぞ。 これは女スパイなのでは?

電車で出会って、その後にお礼とか言って会うようよになって、今に至るけど話が上手すぎる。

顔も可愛いし、性格も天使のようだ。

絶対に何かある。 )


ちなみに言うと、明は二番目の彼女にデートのドタキャンされたり、二時間の遅刻をされた挙げ句に逆ギレされてフラれた過去がある。

色んな人が居るから仕方のない事だ。


明は少し疑いの目を向けるようになった。

これも過去の失恋や裏切り、コミュ症の典型的な現象だ。


それを遠くから見ているおっさん。


「 若造め…… 。 また変な事考えてるぞ。

アイツは疑ってばっかりいるからな。

自信のない奴はこれだから…… 。 」


おっさんも呆れつつも見ていた。

明は服装に注目した。

白いモコモコのロングコート。

少しだけ高いハイヒール。

これだ! 少し閃いた。


「 香織さんのコート高そうだね。

結構するんじゃないのかな? 」


そうだ。 高級な物を纏わせていると、お金が大好きだったり、何でも高い物が良かったりする。

もし高級好きなら、玉の輿狙いで近寄って来た可能性もあるのかも知れない…… 。

これは明個人の主観であり、高級な物が好きでも何にも問題はありません。


「 高そうに見える?

あははっ! 明君も見る目がまだまだね。

これは白馬で買った安物のコートだよ。

3000円ぐらいだし。

可愛いかったらそれで満足だからね! 」


当てが外れた。

聞けば聞く程良い子だ。


「 そう言えば、明君の服装可愛いよね。

白黒のチェックでオシャレ。

何か、オセロみたいに見える。 」


笑いながら服装を褒めていた。

でも、オセロみたいって褒めてるのか?


「 これね、…… いや、これはね。

店員に無理矢理買わされただけだからね。

一度くらいは着てあげないとなぁって思っただけだよ。

こんなオセロみたいな服全然着ないんだから。 」


必死に言い訳をした。

恥ずかしかったから服装の言い訳をするしかなかった。


「 そうなの?

でも、凄い似合ってるよ。

私は好きだけどなぁ。 」


喜んで良いのか。 悪いのか…… 。

二人で服屋さんへ来ていた。


「 わぁー。 これ可愛い。

これも可愛いなぁ〜。 」


服屋さんでもはしゃぐ香織さん。

女の子は服屋さんが大好きなのかな?

可愛い帽子を被ったり、マフラーを巻いたり楽しんでいる。


「 じゃあ、行こうか。 」


香織さんは何も買おうとせずに出ようとしていた。


「 あれ? あんなに可愛いとか言ってたのに、何も買わないの? 」


「 ん? 良いの。 良いの!

何でも買えば良いってもんじゃないの。

ウィンドウショッピングも楽しいんだよ。

お金使うだけが楽しいとは限らないんだから。 」


と言いニッコリ笑っていた。

明は純粋に可愛いと思っていた。

ちなみに、好きな女の子が高級好きで親に頼んで買ってもらいまくってるのを見て幻滅した過去がある。


香織さんは出る瞬間に名残惜しいように、白いモコモコの帽子を見ていた。

直ぐに見るのを止め、外へ出ていった。


「 あっ! ちょっとトイレ行って来て良いかな? 」


「 全然良いよ。 外で待ってるね。 」


そう言い、店内に戻りトイレへ向かって行った。

ちょっと時間が経ち、戻って来た明。


「 明君大丈夫? 」


「 うん。 大丈夫。 じゃあ行こうか。 」


そう言いまた街中を探索するのだった。


あっという間に夜になっていた。

明達はあるレストランに来ていた。

そこは穴場レストランで、予約無しでは来れないレストラン。

外のテーブルで夜景を見ながら食べる料理は最高なのだ。

だが色々ミスがあった。


今は冬。

コート無しではいられない。

しかも、風は強く外で料理を食べれる訳もなかった。

明は仕方なく店内で食べる事に…… 。

段取りや時間、季節も関係してくる。

デートプランを考えるのは仕事並みに大変なのだ。


( くそぉ…… 。 全然ダメだ。

ムードもへったくれもない。

このままご飯食べてバイバイじゃないか。

今日はもうダメだなぁ…… 。 )


少しネガティブになっていた。


「 ここの料理美味しいね。 」


香織さんは変わらずに楽しそうだ。

それだけは救いだった。


明は少し席を外し、会計を済ませに行くと香織さんは明の鞄の中にプレゼントのような包みを見つける。


( 何だろう? あれ?

あんなの会ったとき持ってたかなぁ? )


少し考えているとあることに気付いた。

明は一度だけ香織さんの前から離れた瞬間があった。

服屋でのトイレだった。

そのときに何かを買ったのだと分かった。


( 本当に不器用なんだなぁ。

でもそんな所が好きなんだけどね。 )


香織さんはプレゼントに気付いたけど、知らないフリをする事に。


「 それじゃあ、行こうか? 」


「 うん。 行こう。 」


外に出ると満点の星が空で輝いていた。


「 うわぁ〜。 綺麗。 」


香織さんは星空に見とれていた。


「 本当はね。 外で料理食べたら最高だったんだけど、風が強いと難しいよね。

寒いしね。 暖かくなったらまた来よう? 」


「 うん! 」


白い息を吐き、少し香織さんは寒そうにしている。

そうだ! この瞬間だ。


「 あの…… これ良かったら。 」


明は鞄からプレゼントを渡す。


「 えっ? 何これ? 」


プレゼントには気付いていたけど中身は知らない。

恐る恐る包みを開けると、中には自分が一番欲しがっていた白いモコモコ帽子が入っていた。


「 何でこれ欲しかったの分かったの? 」


「 だって最後まで見てたから。

凄い好きだったんだろうなって思って。 」


明は人の目を気にする癖がある。

だから何を見ているのか?

その目線を追うと分かってしまう。

気になっている物が。


「 ありがとう。 被ってみるね。 」


被るとまたまた可愛いくなっていた。

少し温かくなり楽になっているのが分かった。


( ここだ。 この瞬間しかない…… 。

夜景も最高。 デートはグダグタだったけど、今しかない。

男になれ明! ここだぁ!! )


「 香織さん。 」


「 明君。 」


二人は同時に話してしまう。


「 香織さんからどうぞ。 」


「 うん。 明君が…… 好きなの。

奥手だけどいつも見てくれてる所とか、一生懸命考えてくれる所とかも。

私で良かったら…… 付き合って下さい! 」


( えっ? …… 何だって? )


まさかの逆告白。

明もまさかの出来事に頭の中が真っ白になる。

少し落ち着いてから。


「 俺も同じ事言おうと思ったんだよ。

俺で良ければ付き合って下さい。 」


「 嬉しい。 喜んで。 」


二人は照れながらもじもじしていた。

そして二人は手を握り、帰って行く。

その手の温もりによって、いつもより温かかった。


「 情けない。 何とも情けない!

男の癖にもじもじもじもじ。

しかも、相手から言わせるなんて。 」


おっさんは遠くからブツブツと言いながら怒っていた。

千鶴さんは知っていた。

内心は凄い喜んでいるのを。

二人もゆっくりと帰るのでした。

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