第19話 久しぶりのデート


ケガも良くなり、退院して何日か過ぎて遂にデートの日になっていた。


( よし。 久しぶりのデートだからオシャレしようかなぁ。 )


服はそんなに格好いいのはない。

お店の店員に勧められて強引に買わされた、チェックくの上着を着ればオシャレに見えるか?

前日になり焦りまくる。


「 おっほっほ! やってるなぁ。

ワシも楽しみだぞい。 」


おっさんが部屋に入って来てご機嫌な様子。


「 おっさん! 明日はメガネかけないぞ!

当たり前だろ? デートだぞ?

何でおっさんも連れてかないと……

ゴニョゴニョ…… 。」


おっさんは愚痴を聞かずに部屋へ戻る。


( クソぉーーっ。 デートなのに行けないのか?

何てワガママ坊やなんだ。

良い手はないだろうか?? )


おっさんは一人悩んでいた。

その様子をずっと千鶴さんは見ていた。


「 千鶴君! 何か良いアイディアはないのかね?

キミはワシの秘書だろ?

何か教えてくれぇーーい。 」


無茶苦茶な言い分。

千鶴さんは少し考える。


「 社長。 明様の後をつければ良い話です。 」


「 おっ。 その手があった。

さすがは千鶴君。 」


千鶴さんもデリカシーのないアイディアを出していた。

おっさんはそのアイディアに乗り、次の日を楽しみにしていた。


( 楽しみだなぁー。 )


「 ゴホッ! ゴホッ!! 」


咳を我慢出来ずに何度かしてしまう。


( まだまだアイツと一緒に居るんだ…… 。

こんな病気なんかに負けてられるか…… 。 )


おっさんは少し苦しそうにしながら眠りについた。



次の日ーーーー 。


俺は一時間も早く待ち合わせの場所に居た。

公園の噴水前。

白と黒のチェックの上着に、黒のジーパン。

店員に勧められたが、良く良く考えるとオセロみたいな服装に恥ずかしくなっていた。


( あの店員め…… 。 こんなダサイの勧めやがって。 嫌われたら返金してもらうぞ。 )


今更店員への愚痴をこぼしていた。

そこへ、香織さん登場!


「 明さぁーん。 はぁはぁ。

あれ? 待ち合わせ10時だったよね?

一時間早くない?? 」


「 あぁ。 歩くのが早くて遂、早く着いてしまったのですよ。 」


何だかカッコ悪い言い訳をしてしまう。

しかも、オセロファッションで…… 。


「 そうだったんだぁ。

私は楽しみで早く出過ぎたみたい。

笑っちゃうね! 」


( 何とも可愛い…… 。

俺には勿体ない程可愛い女性だ。

今日こそ付き合ってもらう為に、告白してやるぞぉーーっ! )


沸き上がる闘志に、目の中ではメラメラと炎が燃えていた。


最初に向かったのは水族館。

凄い楽しみにしていた場所だ。


「 わぁーーっ! 凄い大きい水族館。

楽しみだったんだよねぇ。 」


「 俺もだよ。 早く入ろう! 」


二人は水族館に入る。

入場券を買おうと店員に声をかける。


「 あのぉ、大人二枚。 」


「 いらっしゃいませ。 今日は記念日の為、無料になっております。

どうぞ。 ごゆっくりお楽しみ下さい。 」


何とも偶然にも記念日の為、無料とは何ともサービスの良い水族館だ。

香織さんはウキウキ気分で先へ進む。

まるで子供のように。


( 偶然…… 怪しいなぁ。

こんな事あるもんかなぁ…… 。 )


疑いながらも後を追う。


「 どうぞごゆっくり。 吉田様。 」


店員達は並びながら頭をさげていた。

何故名前を知っているのだろうか?

その声は聞こえていない明だった。


二人で暗く青い神秘的な光の中、魚を見て回る。


「 うわぁ〜〜っ。 凄い綺麗!

お魚さんがいっぱい。 」


「 本当だね。 サメは何処かな? 」


子供の頃は母さんと来ていたけど、大人になってからは全然だった。

久しぶりの水族館を満喫しながら、どんどん二人は先へ進む。


( にしても何か変だなぁ…… 。

俺の第六感がそう叫んでる。

何だ? この違和感は…… 。 )


明は何かに感付いていた。

確信はないが何かが変だった。


「 本当に楽しいね。

私達二人しか居ないなんて勿体ないね。

凄い綺麗なのに。 」


( あっ…… 。 分かったぞ。

客が一人も居ないんだ!

記念日!? んな訳あるかよ。

この客が居ない訳も全部分かったぞ。

なぁ? おっさん……。 )


その通りだった。

遠くからおっさんと千鶴さんが望遠鏡でこっちにバレずに監視していた。


「 ん〜〜。 中々見所があるなぁ。

魚も綺麗で静かで最高だなぁ。

千鶴君。 貸し切りにして正解だね。 」


「 はい。 社長。 私も初めてです。 」


全てはおっさんの明を監視する為の計画だった。

当然、貸し切りの為に大金を出していた。

その計画に気付いた明が電話をかけてきた。


ぷるるるっーー!


「 あい。 若造。 貸し切りはたまんないだろ? 」


「 おいっ! 何で付いて来てんだよ?

貸し切りとか変だと思ったら…… 。 」


明も直ぐに気付いてしまう。

こんな事出来るのはおっさんしかいないだろうし。


「 若造。 しっかり楽しみなさい。

後は…… イルカのアトラクションがそろそろ始まる時間だ。

スタンバイして待たせてあるから、劇場へ向かうんだ。

凄い楽しいぞぉーーっ! 」


しっかりアトラクションまでおっさんの毒牙に犯され、俺達を楽しませる為に必死に準備していた。

ショーをやる人達も大変だ。

直ぐに電話が切れて、香織さんをアトラクションの場所へ誘導する。


「 あっ! そろそろイルカさん達のショーが始まるよ。 行こうかぁ。 」


「 うん! 詳しいねぇ。

イルカさんのクロスジャンプ楽しみぃー。 」


二人でショーに向かう。

デカい客席の真ん中が水槽になっていて、その真ん中にステージが立っている。

二人は客席に座ると、直ぐにスタッフ達が駆け足でステージに登場する。


「 皆さん〜〜っ! こんにちわぁーー! 」


二人しか居ないけど、いつもと同じ段取りで行っている。

二人で大きい声で。


「 こんにちわぁーー! 」


子供に戻った気分で叫ぶ。

二人で笑いながら楽しむ。


「 今日はわざわざお越し下さいまして、大変感謝しております。

まずはラッコ達の行進!

お楽しみ下さいませーー。 」


スタッフの笛により、ラッコ達が水中から現れる。

綺麗に泳ぎながら顔を出しながら手を振っているような仕草をみせる。


「 可愛いーーっ! 」


香織さんも夢中になる。


「 そしてイルカのクロスジャンプ! 」


ピィーーーッ!!


凄い大きい笛を鳴らすと、二匹のイルカは大ジャンプして宙を回りながら交差して水中へ落ちる。

凄い迫力だ。


ザプーーーンッ!!


「 良く出来ましたら大きな拍手を! 」


パチパチパチパチパチパチ!!


二人は感激して拍手しまくり。


「 最高じゃぁーーっ。 もっとやってぇ! 」


( この声は…… 。 )


そう…… 。 おっさんの声だ。


「 あれ? 私達以外にもお客さん居たんだね。

何処にいるのかな? 」


「 ん? さぁ…… 。 気のせいかもよ? 」


おっさんは隠れながら大騒ぎ。


「 社長。 バカデカい声を出していると、明様に気付かれてしまいますよ。 」


「 絶対バレないよ。 こんなに遠くに居るんだから。

にしても凄いねぇ。 千鶴君。

デカいイルカクッションを帰りに買おう。

部屋に飾るんじゃ。 」


おっさんも大はしゃぎ。

デートの後を付けながらもアトラクションを楽しむ。


たっぷり一時間ショーが行われて、最後にスタッフの決めポーズが決まり拍手喝采。

最高のショーになった。


「 良かったね。 ラッコもイルカも可愛いかった。

また来たいね。 」


「 うん。 そうだね。

まるで映画のような迫力だったね! 」


二人は水族館を楽しみ、お土産コーナーで買い物をする。


「 明さん。 このイルカストラップ可愛い。

お揃いで買おう? 」


可愛いぬいぐるみのストラップ。

イルカにメロメロの様子。


「 そうしようか。 買って来るね。 」


二個お揃いのストラップを持ってレジへ。


「 ありがとうございます。

二点で…… 2800円になります。 」


( おいっ! 地味に高いぞぉ!

イルカで儲けまくりやがって…… 。 )


と、思いながらもお会計をする。


「 はい。 三千円で。 」


何処も商売上手だった。

二人は買い物を済ませて外へ。


「 おっほっほ。 楽しそうで何より。

ワシらも行くぞぉーーっ! 」


「 はい。 社長。 」


二人はイルカ帽子にイルカサングラスを着けて、後を追う。

二人も水族館を満喫していた。

いや、むしろ一番楽しんでいるのかも?


お邪魔虫が付いてくるデートはまだまだ続くのだった。

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