第5話 刑事として
ジェントルは紙芝居を終え、片付けをしているとそこに菜々子は静かにやって来ました。
「 あの…… 。 この前はちょっと言い過ぎちゃいました。 ごめんなさい。 」
菜々子は八つ当たりのように怒った事を反省していたのです。
「 いえいえ。 私は何も気にしていませんよ。
私はあなたを気にして言ったつもりでしたが、あなたの仕事への意気込み、被害者を助けたい想いを全く理解していませんでした。
だから自分の才能をひけらかしていた訳では無いことを理解して欲しい…… 。 」
ジェントルは紙芝居を片付けながら静かに話していました。
「 ん〜 …… 。 それってもしかして謝ってます? 」
「 …… 。 そう思ってもらっても構いませんよ。」
ジェントルは頭は良いが人とのコミュニケーションがとても苦手だったのです。
菜々子はそんなジェントルを見て、とても可愛く思ってしまいました。
少しだけどジェントルを知れたように感じました。
「 じゃあ、仲直りしましょ?
後ね、敬語はやめて? 私は依頼人であり、友達になりたいの。 ダメかな? 」
ジェントルは少し黙って考えていました。
「 分かった。 敬語はやめる。 事務所に今から来るかい? 」
「 うん!! 」
二人はジェントルの事務所に行きました。
事務所に行き、二人は紅茶を飲みながらお話をした。
「 菜々子君が帰った後に良く考えたんだ。
私は刑事になりたかったんだけど、聞き込みに行ったり上司と仲良くするのが苦手だったから、この探偵と言う職に着いたんだ。
今では探偵に誇りすら感じてるよ。 」
「 そうなんだぁ。 ジェットルも色々大変だったんだね。 」
また菜々子は名前を間違えて話していた。
悪気は全く無い。 ただ少し横文字が苦手だったのです。
「 前から思ってたんだけど、私はジェットでは無い! ジェントルだ。 ジェントルマンの略称だ。
間違えのは失礼だぞ。 」
少しジェントルは怒りました。
菜々子は恥ずかしそうに謝りました。
本当に悪気がなく、天然だったから仕方がないのでした。
「 ごめんなさい。 ジェントル。 もう覚えたもん。 絶対に間違えないから。 」
二人はクスクスと笑い合いました。
「 本当にキミは面白い。 私はね。
初めてキミが依頼してきた時、何を考えてるんだ? って思って、依頼を受けるつもりは全くなかった。 でもキミを調べて良く分かった。
キミはへっぽこ刑事ではあるが、誰よりも犯人を憎み被害者を想う心を持っている。
私はそんなキミに惹かれて協力したんだよ。 」
何て優しいお言葉…… 。
でも少しトゲはあるが。
「 あ、ありがとう。 へっぽこは仕方がない。
新米なんだもん。 絶対腕を上げるわ!
ジェントル。 良かったら一緒に事件を解決するの手伝ってもらえない? 私が一人で頑張れるようになるまでで良いから。 ダメかな? 」
「 ホッホッホ! 本当にキミは面白い。
そんな恥ずかしい事を私は人に頼む何て出来ない。 良いでしょう。 協力しましょう! 」
ジェントルは悪気はないのですが、所々にトゲのある。
そして二人は深く握手をしてその日、二人はパートナーになったのでした。
ジェントルに捜査資料を直ぐに読んでもらう事になり、ジェントルは静かに資料を読んでいました。
その集中力は凄まじく、菜々子は話をかける事も出来ませんでした。
菜々子は暇だったので、家を探索していました。
とても綺麗に掃除していて、文句一つもありません。
菜々子は何か役に立ちたくてキッチンに行き、料理を作る事にしました。
( よぉーし! 頑張って作るぞ。
得意料理で夢中にしてやるぅーー。 )
そう思いながら、菜々子は得意? のお鍋を作り始めました。 お鍋は料理なのでしょうか?
少し不安な所ですが、菜々子も自分の出来る事をするのでした。
「 よし。 菜々子君。 これは聞き込みに行かないとダメかもしれん。 一緒に行こう! 」
ジェントルはこのままでは分からないので、聞き込みに行きたくなったのです。
ジェントルは集中し過ぎて菜々子がずっと隣に居るのだと思っていたが、そこには姿はありませんでした。
( あれ? 何処へ行ったのだろうか。
ん? 何だこの匂いは?? )
キッチンからとても異様な匂いがしてきた。
菜々子はゆっくりとお鍋を持って来ました。
それは得意料理の具だくさん菜々子鍋でした。
この料理は一人暮らしの時に編み出した、取って置きの一品だったのです。
「 ジェントル。 元気が出るように料理したよ。
自信作の菜々子スペシャルなんだから! 」
それは味噌ベースに味付けされた、てんこ盛りの海鮮鍋のようでした。
「 キミ…… 。 もしかして、私の買い置きしていた伊勢海老くんも入っていたりするかい? 」
「 あれ? あれって伊勢海老だったの??
でっかいエビなだけなのかと思ってた。 」
その鍋にはジェントルの買い置きしていた、海鮮類さん達の宝石箱を全て使われてしまいました。
悪気は全くありません。
ただ、おっちょこちょいさんだったのです。
おもいっきりの天然な。
「 大丈夫大丈夫! 後でお金払うから。
食べてみて? 味は美味しいんだから。 ほらぁ。」
涙目になるジェントルでしたが、お腹は減っていたので食べる事に。
もう味なんて関係ない。
責めてもの供養になるように、海鮮くん達を思う存分食べる事にしました。
「 じゃあ遠慮なく。 ぱくり! ん??
旨い…… 。 絶対にありえない。
こんな滅茶苦茶な鍋なのに。 」
ジェントルは料理も完璧にこなしている。
独り身だからこそでもある。
こんな量も滅茶苦茶な料理が旨いなんて、全く理解が出来ませんでした。
海鮮くん達のパワーを存分に使った出し汁だったとしても、あまりにも美味しかったのです。
「 料理は頭でするもんじゃないのよ。
感覚なの。 私も食べよう! あーむ。 美味しい。
ジャンボエビとか貝類の出しが沢山出て美味しい。 上手くいったわね。 」
満面の笑みを浮かべながら菜々子も鍋を食べていました。
ジェントルは菜々子の笑顔を見ながら思ったのです。 この家でご飯を他の誰かと食べるのは初めてだったのでした。
一人で食べるのが当たり前になっていたが、隣で笑って食べる鍋はとても暖かく感じました。
ジェントルは何か今まで足りなかったものが、少し埋まるような感覚に陥っていました。
大事にしていた海鮮類を使われたけど、何故か怒れなくなっていました。
二人は仲良く話しながら鍋を楽しみながら、夜を過ごすのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます