第2話 おまんじゅうと私
菜々子は目が覚めるともう朝でした。
ぐっすり寝てしまいました。
「 あぁ!? 寝ちゃったよ。 もう!! 」
菜々子は直ぐに署へ向かいました。
髪はグシャグシャだけどこればかりは仕方ない。
遅刻したら天パー刑事が凄い怒るから。
「 はぁはぁ…… 何とか間に合った。
今日も頑張ろう! 」
電話ボックスの一件が気になって仕方がない。
でも仕事をしなければいけませんでした。
今日は事情興趣が沢山控えていました。
事故現場に居た人や事件絡みの者。
新人はこの事情興趣が仕事の基本。
相手から上手く話させたり、矛盾を突いて自白させたり忙しいのです。
( はぁ…… 。 あの子供達の話が気になる。
休憩のとき公園行ってみようかな…… 。)
菜々子はまた公園来てしまいました。
電話ボックスを見ると、大量のまんじゅうと依頼が書いてあると思われるメモが添えてある。
その奇妙な光景を見て、ますますそのジェントルと呼ばれる探偵に会いたくなりました。
「 あっ! 昨日のおばさんじゃん。 また来たの?」
昨日居た子供達。
「 お姉さんだから! 君達さぁ、その探偵に何の依頼出したの? 」
「 俺んちの猫見つけてくれって書いたよ。 」
猫探し…… まんじゅう一つでそんな仕事を?
でもいつその依頼を完了するのか気になるのでした。
「 ねぇ。 その依頼いつぐらいにやってくれるのかな? 」
「 ん?? 今日の朝に玄関にゲージに入れて届いてたよ。 ジェントルは仕事がバカ早いからね。 」
何と!? 一日足らずで猫を見つけて居たのです。
猫探しは簡単なようで難しい。
人の猫なら尚更捕まえるのが大変…… 。
その仕事ぶりを聞いて、奇妙だと思っていたのが逆にもっと知りたくなってしまいました。
( そろそろ休憩時間が終わる…… 。
帰らないと。 そうだ! 良いこと思い付いたぞ。 )
菜々子はなんとなく買っていた半額のまんじゅうを、公衆電話の上に置き自分もメモを残しました。
警察官としては絶対にそんな事をしてはいけない。
でも、ぺてん師なのか本物なのか見極めたかったのでした。
( 依頼内容は…… 。 これでどうだ! )
その内容とは?? メモを残し直ぐに警察署に帰りました。
その日は帰ってから、お
( やっと終わった…… 。 帰ろう。
もしかしたら、依頼のメモ受け取ったかな? )
帰りにまた公園へ向かいました。
恐る恐る電話ボックスを見ると、まんじゅうは全部回収してありました。
( すげぇ!! やっぱり来たのかな?
あの依頼内容…… 。 出来るわけないよね? )
書いて見たものの、その内容はあまりにも酷かったのです。
それはスーパーの強盗事件の犯人を教えてと言う依頼だったのです。
困りすぎて頭がどうにかなってしまっていたのかもしれません。
念のため事件の手掛かりや、聞き込みで得た情報も全て書いて置いたのです。
( 私に出来ないのに、そのシャトルだかジェットだか訳の分からん探偵に出来るわけがないのよ。 )
菜々子は軽く嫉妬していたのかも知れない。
その日は家に帰りました。
次の日は休みだったので、お昼くらいにまたその電話ボックスに来ていました。
( 私の依頼の返事何か来てないよね…… 。
ん?? 何か
公衆電話の横に綺麗な日緋色の便箋がくっ付けてありました。
宛名を見てみると、偽名で書いておいた〈リボン〉様へと書いてあったのです。
直ぐに中を開けて見ると…… 。
〈 拝啓。 初めての依頼感謝致します。
安物のまんじゅうですが、依頼は依頼なのでこなしておきました。 89%犯人を割り出しました。
後はあなたのお仕事ですよ。 森崎さん。 〉
「 えっ!? 名前がバレてる? 書いてないのに。
しかも凄い内容が沢山書いてある…… 。」
犯人は夜中に忍び込み、日用品や生活用品。
沢山盗んでいる。
その盗んだ物から年齢は20から25歳当たり。
ここら辺に住んでいて、身長は175かは180。
髪は茶髪のツンツン髪。 髭は生えていない。
服はチェック柄が好きで、多分赤いハイカットの靴を履いている。
8割くらいの可能性で大学生。
大学に聞き込みに行けば情報があると思います。
刑事だと言って聞き込みをしていれば、犯人は慌てて
と書いてあったのです。
唖然としてしまいました。
その仕事ぶりはまさに…… 刑事!
直ぐに言われた通り、近くの大学をしらみ潰しに聞き込みに行きました。
聞き込みをしていると、書いてあった内容とほとんど同じ大学生が居ました。
心臓が破裂しそうになりながら、話をかける事にしました。
「 ちょっと良いかな? 私は刑事なんだけど、この前起きたスーパーの強盗について聞き込みをしているんだけど、ちょっと良いかな?? 」
その大学生の表情は菜々子が見ても分かるくらいに、動揺を隠せずに居たのです。
ジェントルから聞いた揺さぶりを二、三個して最後にその綻びを突く。
「 ねぇ。 このヘアワックス君は使った事あるかな? 」
「 …… ない。 買った事もない。 」
その台詞を待っていたのです。
尽かさず菜々子は問い詰める。
「 念のため鞄の中身見ても良いかな? 」
大学生は汗が止まりません。
返事もせずに挙動不審に周りを見ている。
ザァーーッ!!
凄いスピードで逃げてしまいました。
「 待ちなさい!! 」
ビンゴでした。 その大学生は黒。
事情聴取から逃げた時点でほとんど当たりだろう。
皆さんは忘れてしまってるかも知れませんが、菜々子の取り柄は運動神経。
逃げた大学生を追いかけてあっという間に追い付き、得意の柔道で投げ技を決めていました。
「 痛えぇ!! 何なんだよ? 」
「 いきなり逃げたからよ。 さぁ、署まで行って話を聞こうじゃないか? 」
その大学生の鞄から中身が出ていました。
やっぱり盗まれたヘアワックスが入っていました。
署へ行き、上司達に訳を話し事情興趣をして可笑しな点がいくつもあり、家へ家宅捜査の許可が下りる。
捜査員達で一人で住むアパートを見に行ってみると、盗まれた物がほとんどあったのです。
直ぐにその大学生は逮捕されました。
菜々子の初? 手柄でした。
「 おい! 新人。 良くやったな。 やれば出来んじゃねぇか。 今日は飲み明かすぞ? 」
天パー刑事と他の上司に誘われ、居酒屋で祝杯をあげました。
菜々子は酔っぱらい、人生で体感した事がない喜びになり踊りまくり。
上司達もそんなふざけた菜々子を見て、大声で笑いまくっていました。
上司の刑事達も菜々子を初めて一人前の、一人の刑事として認めてもらえた気がしました。
ジェントルの事は少し忘れて、最高な夜を過ごしました。
次の日。 二日酔いにより頭はガンガン。
先輩達は次の日は普通に仕事をしている。
さすがは先輩達でした。
( 頭が割れそう…… 。 本当に最高だったなぁ。
にしてもジェットって何モンなの!? )
菜々子は暗記力が著しく悪かったのです。
菜々子はジェントルに会いたい欲求は深まるばかりなのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます