おじいさん探偵 ジェントル

ミッシェル

第1話 新米刑事の葛藤


新米刑事は日々努力している。

取り調べや聞き込みでやることは山積み。

事件が起きると先輩達と現場へ行き、一緒に調べたりする。

女の新米刑事で周りからはバカにされてしまう。


23歳。 森崎 菜々子。 巡査。

独身で、まだまだな新米刑事。

何故刑事になったのか?

それは、交番勤務をしていたときに指名手配犯を偶然逮捕して、刑事課からスカウトが来て成り行きにより行くことになったのでした。

根は真面目で正義感は人一倍!

負けず嫌いな頑張りやさん。

少しおっちょこちょいな食いしん坊。


毎日上司に怒られ意気消沈していました。

何をやっても上手くはいかない。

仕事とはそう言うものでした。


「 はぁ〜〜 。 毎日上手くいかなくてやってられないなぁ。 どうにか手柄を挙げないと。 」


必死に手柄を挙げる為に毎日てんてこ舞い。

そこへ上司の天パー刑事。 服巻刑事がやって来ました。


服巻 修。 30歳の階級は巡査長。

直ぐに怒ってばかり、とても怖い上司。


「 おい! 菜々子。 窃盗犯がまだ捕まらないから、聞き込み行って来い。 窃盗犯ぐらい捕まえてみろ。 手柄を早く挙げろよな。 」


とても意地悪。 菜々子はいつも天パにいじめられて、天パー恐怖症になっていました。


「 はい! 直ぐに近くを聞き込みに行ってきます。」


今回の事件はスーパーの商品を盗み、逃げた若者を捕まえる為に近くを聞き込みに行くのでした。

菜々子は聞き込みをして、少しでも目撃情報を得る為に日々努力していました。


「 全然ダメだなぁ…… 。 帽子を被って黒い服とズボンじゃ、特徴も全然無いしわかんないなぁ。 」


菜々子は頑張って探しても良い情報には辿り着く事は出来ませんでした。

そして署へ戻ると、天パー刑事に怒鳴られてしまう。

何も成果も無く、時間だけを無駄にして帰って来たのに腹が立ってしまったのでした。


( 天パーマンめ…… 。 ボロクソに言ってくれちゃって。 だから独り身なのよ。 今日はやけ酒だぁ。)


夜に家に帰り、スーパーで買ったお惣菜と缶ビールを片手に小さな幸せを得るのが密かな楽しみだったのです。


「 ぷはぁ〜〜っ。 最高! はぁ…… 。

全然上手くいかないわ。 どうしよう。 」


菜々子はどうして警察官になったのでしょうか?

それはテレビドラマで刑事に憧れて成り行きでもあるが、警察官になる事を夢見て入っていたでした。

彼氏も居なく、こんな生活にもうんざりしている。

テレビを見ながら笑い、酔い潰れてまた次の朝が訪れるのでした。


目覚ましがなり、髪はグシャグシャで短いショートカットなので、癖がつきやすく手入れが大変。

直ぐに寝癖を直して仕事場へ。

パンを咥えながら走って向かう。

良い忘れていましたが、彼女は運動神経だけは抜群で柔道も黒帯。

運動神経だけはピカイチの天才!

大会に出ても成績優秀で、優勝争いにいつも名前が出てくるくらい。

本人は女らしくメイクとか、もこもこ髪にしたいと思っているのですが上手く出来ずに断念。

なので普通のストレートのボブのような髪型。


署に着いて婦警達と愚痴を溢す。


「 聞いてよー。 昨日も散々でさぁ…… 。」


「 何言ってんのよ。 女性の憧れなんだから、頑張りなさいよ。 また合コン誘ってあげるからさ。 」


くだらない話を終え、階段を上り刑事課へ。

いつも大きな挨拶をする。


「 おはようございますぅ!! 」


適当に手で挨拶を返される。

一人だけ優しく挨拶を返してくれる人も。


「 おはよう。 森崎君。 」


いつも優しい、警部補の佐伯 国雄さんでした。

50歳の大ベテラン。 菜々子は佐伯警部補が大好き。 いつも甘やかしてくれるからでした。


「 佐伯さん。 今日はお弁当なんですかぁ? 」


「 そうだねぇ…… のり弁だよ。 」


二人はニコニコお話していると、そこへ天パー刑事が現れる。


「 おらぁ! お前は今日も聞き込みだよ。

何か成果出してこいや! 」


直ぐに菜々子はまた近くで聞き込みをする。

もう事件から一週間が経過しており、解決出来るかはとても難しくなっていた。

どんな窃盗犯だったのか?

それは夜中忍び込み、食品や家庭用品を沢山盗んで行ったのです。

警報器により直ぐに警備員が駆けつけたが、既に逃げていて捕まえられなかったのです。


「 はぁ〜〜 。 こんな事件解決出来ないわよ。 」


スマホ見ていると、若きトップエース。

葵 誠一郎。 22歳。 警部。

高学歴の上へ行くの間違いなし。

その葵君がまた麻薬取締で、一人でバイヤーのボスを捕まえて大手柄でニュースの一面に載っている。

顔もキュートで可愛く、モテモテでファン達も居るくらい。


「 何よこれ。 年下なのにこの格差はなんなのよ…… 。 この仕事合わないのかなぁ。 」


公園でため息をついて、紅茶を飲みながら辞表を書こうか悩んでいました。

そこへ子供達が電話ボックスに入って行きました。


( あれ? 珍しいなぁ。 今は子供でもスマホ持ってるのかと思ってた。 )


すると、何もせずに直ぐに出てきました。

でも少し違うのは、電話の上におまんじゅうが乗せてあったのです。


「 君たち。 ダメじゃない。 イタズラしちゃ。

お姉さんはね、刑事なのよ? あんまり悪さしてると捕まえちゃうわよ? 」


すると子供達は反省せずにへらへらしている。

これが今の子供達の成れの果てなのでしょうか?


「 おばさん。 イタズラなんてしてないよ。

あれは依頼を出してんだよ。

邪魔しないでくれるかな? 」


依頼? 一体どんな遊びをしているのでしょうか?


「 おばさんじゃなくお姉さん!!

依頼? ふざけてんじゃないの。

何に依頼するってんのよ。」


菜々子は日頃のストレスもあり、子供へ少し当たりはキツくなってしまいました。

いつもは優しいのです。


「 おばさん知らないなぁ? ジェントルに頼んでんだよ。 おまんじゅうをあげれば、どんな依頼も解決。 最強の探偵なんだから。 」


菜々子は理解不能に陥り、頭はパニックになってしまいました。


( えっ!? ジェントル? なんじゃそりゃ! )


おまんじゅうと下に依頼のメモを残すだけで、どんな依頼もこなしてしまう探偵のようだ。


「 そんな変な奴居るわけないわよ。 早く帰りなさい! 怒るわよ!? 」


子供達は直ぐ様逃げてしまいました。

菜々子は直ぐに、電話ボックスのまんじゅうを回収に行きました。

菜々子は少し興味本意で、まんじゅうをそのままにする事にしました。

少し待つことに。 何時間かしても来ません。

仕方なく署へ帰り、何も成果も無く上司に怒られてしまいました。


夜の帰り道。

まんじゅうを確認する為に、その公園に行く事にしました。

現れたら現れたで、子供を騙す悪い人かも知れないので注意する事にしていました。

でも全然現れず、もう0時になりそうになりました。


( 何だ…… やっぱりデマだったのね。

子供って直ぐに嘘つくからなぁ…… 。 )


疲れてて寝てしまいました。

0時になるとそこへ、黒いスーツに赤い蝶ネクタイ。

杖をついている白髪のおじいさんが歩いて来ました。

上から下まで決まっていて、まさにジェントルマンだったのです。

一直線に電話ボックスに入り、まんじゅうをポケットに入れ依頼のメモを読みながら帰る。


菜々子は気付かずに寝ていました。

このジェントルとの出逢いは新米へっぽこ刑事の、最初の出逢いでした。

その紳士は菜々子のイビキに気付き、折角草むらに隠れて居たのに、簡単にバレてしまう。

寒そうにしていたので上着を毛布代わりにしてあげてくれたのです。

杖をコツコツつきながら独特の音を奏でながら、ゆっくり帰って行きました。


菜々子はその日風邪を引きました。


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