第27話拝啓
ドタドタドタドタと急いで走っている士郎の足音が昼間の大多喜城の廊下に響き渡る士郎はいきなり勢いよく経丸の部屋の戸を開けて
「経丸、萬崎と豊影が同盟を結んだぞ」
凛とひのとお茶を飲んでいた経丸はビックリし
「えっ!なぜ萬崎と同盟を結べたの?奴らは私達と共に萬崎に敵対したではないか」
「そんなのそれがしに聞かれたってわかんないよ、そんなことよりこれで奴らは萬崎を警戒する必用がなくなったからそれがしらのところに攻め込んで来るかも知れないぞ」
「なら、どうすればよいでしょうか凛ちゃん」
「経丸さん、私達もどこかの国と同盟を結びましょうよ」
「あーなるほど、そうしますか。凛ちゃん同盟相手はどうやって決めますか?」
士郎は元気よく手をあげて
「はい、はい、経丸、壁に地図を貼って殿が弓矢で射抜いた名前の大名と同盟を組めばいいと思います」
ひのも同調するように
「それは面白そうですね」
経丸は士郎の背中を叩き
「士郎、ダー○の旅じゃないんだからそんなんじゃだめよ、ひのちゃんも士郎に同調しないでください」
「冗談もわからないのか経丸は」
この士郎の言葉に経丸はカチンと来て
「冗談もわからないって何よ、こっちは真剣に考えてるんだよ」
「真剣に考えるだけが偉いわけじゃないぞ」
「何だと」
「はい、はい」
凛は士郎の頭をひのの鉄扇で叩いて
「これは兄貴が百パーセント悪い」
「痛ってぇぇ!!おい鉄扇だぞこれ」
凛は怒る士郎を無視して
「殿、意見を言ってよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞどうぞ」
「同盟相手は新潟の金崎殿が良いかと」
「なぜですか、凛ちゃん」
「まずは領地が大きいのと金崎家の家風が義でございます」
先ほど無視された士郎は会話に割って入るように
「義ってなんなんだ凛」
「絶対に裏切らず弱気を助け強気をくじく正義のこと」
士郎と経丸は凛の言葉を聞いて
何かその言葉聞いたことあるなぁ
「しかし何で凛は金崎の家風まで知っているの?」
「この前稲荷さんから全国各地の大名のことを教わったから」
経丸は凛の手を取り
「素晴らしい意見です、ありがとうございます」
「お褒めいただきありがとうございます」
頭を下げる凛を見て
「士郎は凛ちゃんの爪の垢煎じて飲めばいいのに」
「やかましいわ」
ひのは真面目な顔して
「じゃあ士郎さん器にお湯を持ってきてください。私今から凛ちゃんの爪の垢を取って入れてあげますから」
凛は笑いながらひのの肩を軽く叩き
「いや、ひのちゃん今のものの例えだから」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしているひのを見て皆大笑いした。
片倉は焼き焦げた納屋の跡地に行くとそこには必死に納屋を立て直そうとしていた海老太郎と稲荷の姿があった。
「お前らまさか倉庫を作り直そうとしてるの?」
海老太郎は凄く大きな声で
「はい‼僕が壊してしまったので申し訳ありません‼」
片倉は笑いながら
「うるさ、声量調節してしゃべらないと」
片倉にそう言われてもすぐ大きく元気な声で
「はい‼」
返事をしたと思えばいきなりテンション低い声で
「しかし僕はほんとに皆さまに悪い事をしてしまって」
片倉は笑いながら
「海老太郎君は見かけによらずちゃんと敬語しゃべれるんだな」
「失礼ですよ片倉さん」
「まぁ、とにかくこれからよろしくな」
「本当に僕なんかが家臣になってよかったんですかね?」
「おい、どうした海老太郎君。アホなのに意外と神経質なんだな、皆もう気にしてないよ」
「片倉さんって結構失礼な人なんですね」
片倉はとぼけるように
「あっ、こりゃ士郎の失礼が移ったかな」
片倉と海老太郎の横で二人の会話を聞いていた稲荷の三人は笑った。
そこへ士郎が来て
「三人とも殿が呼んでるよ」
「わかった」
そして皆が集まり話し合いが行われ
「片倉さん、私達は金崎殿と同盟を結ぶことに決めました」
「金崎殿ですか、確かに大大名で義を貫く良き大名ですが、逆に言えば弱い者は皆金崎殿を頼りに行くのでこれ以上は断られるかと」
士郎は頭を掻きながら投げ捨てるように
「まぁ、なんとかなると思うよ」
この発言に経丸は
「なんとかなるって無責任な発言だな、士郎は」
「無責任ってなんだよ、経丸が同盟を結ぶって言い出したんだろ」
「言い出したのは私だけどもっと感情込めて発言してよ」
「感情とかそんなこと言い出すな、そんなのそれがしじゃなくて役者に頼め」
凛は二人に割って入るように
「はい、はい、兄貴が悪い兄貴が悪い」
「なんでだよ、それがしが悪いのかよ」
士郎の言葉に皆がそろえたかのように
「お前が悪い」
皆から揃って悪いと言われた士郎は拗ねて下を向いた。
皆は士郎を気にせず話を続けた。
凛の
「まぁダメだったらダメでいいんじゃないですか?行ってみるだけ価値はあると思いますよ」
の発言に士郎は過剰に反応し
「おい、経丸凛だって無責任なことを言ってるじゃないか」
「凛ちゃんの発言は無責任じゃない」
「いや、凛の発言も無責任だ、ひいきだ、ひいきだ」
「兄貴静かに‼」
皆の睨みつける圧力に負けて黙り込んだ。
「まぁ、凛ちゃんの言う通り行くだけ行ってみるのも面白いかも知れないですな」
片倉さんはそれがしの時は賛同しなかったのに凛が言ったら速やかに賛同したよ、ありゃ女に弱いタイプだなぁ
「じゃあとりあえず金崎殿と同盟を結ぶことに反対する方はいませんね?」
「はい」
皆が声を揃えて返事をした。
「殿、とりあえず手紙を出して会いに行くことを伝えましょう。向こうにも用事があるかもしれませんから」
「そうですね、片倉さん」
そして後日金崎から手紙が来た。
経丸は少し不安な表情で
「金崎様から、とりあえず会うことは会うが同盟を結ぶかどうかは私に会って次第だそうです」
「そうですか」
片倉は呟くように言った。
「それでですけど今回は私とひのちゃんと凛ちゃんの女の人だけで行きたいと思います」
「殿、私は」
「片倉さんは城の留守を頼みます」
「えーっそれがしは経丸?それがしがいると何かと役に立つし女の子だけは危ないと思うよ」
「私達だけでも大丈夫だよ」
いきなり大きな声で
「大丈夫じゃない」
いきなり聞こえてきた大声に経丸はビックリし
「えっ誰?今の声」
「あっ、三バカトリオ何でここに?」
デモンはにやけながら
「えへへ、気づかなかっただろ士郎」
悠太は呆れながら
「番長、また三バカトリオって言われてるよ」
デモンは真顔で
「事実なんだからしかたないだろ」
あっ認めるんだ
と悠太は思った。
デモンは真剣な顏で経丸に
「俺は士郎も連れて行った方がいいと思います」
「おっ、お前いいこと言うな」
「士郎はいざというときは本当に頼りになりますから連れていくべきです」
士郎は上機嫌で
「お前、それがしの良さがわかるってお前はバカじゃないのかもしれないな」
デモンは真顔で
「お前の良さを知っているからバカなんだよ」
「すっげぇ、いきなりムカついてきた」
皆笑った。
「それがし付いて行くよ」
経丸は茶化すように
「ねぇまさか私の事心配なの?」
「心配だよ、だからついていこうとしてるんだろ」
この言葉に経丸は顔を真っ赤にしてその表所を見た士郎は慌てて
「デモン達がついて行けって言うからだからな」
凛は呆れた感じで呟くように
「まったくツンデレなんだから」
士郎は凛を睨みながら
「なんか言ったか」
「別に~」
海老太郎は真顔で
「士郎さんついていけて良かったですね」
「お前それがしの事煽ってるのか?」
皆は笑ったが海老太郎は慌てて
「いや、僕はそんなつもりじゃ」
そして翌日、大多喜城正門前で
「じゃあ行こうか皆の者出陣じゃー‼」
「士郎が指揮を執るんじゃない」
「たまにはやってみたかったんだよ‼」
こうして金崎と同盟を結ぶために経丸達は金崎の国、新潟に向かって行ったのである。
果たして経丸達は金崎と同盟を結ぶことができるのだろうか?
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