第28話道中
経丸達は金崎の居城春日山城に向けて森の中を歩いていた。
「殿、初めてですね女の子だけで出かけるは?」
「そういえばそうですね、それにしても凛ちゃん嬉しそうだね」
「まぁ女の子だけなら男達の心配しなくていいですから」
「それもそうですよね」
「いや、諸君さっきから何言ってるんだここに男がいるじゃないか」
ひのは真顔で士郎を見て
「あれ?いたんですか?」
「ひでぇよ、ひのちゃん」
凛は笑いながら
「ひのちゃん面白い」
女の子三人は笑い出し士郎もつられて笑い出したのであった。
ガサガサと茂みから小さな音が響く
ひのは異変を感じた。
ひのは小さな声で
「殿、何か変な音がしました」
「音、そんなものした?」
ガサガサ
「ほっほら、しましたよ」
「えっ、聞こえないけど。その音って動物の音?」
経丸の問いかけにひのは
「正体まではわかりません」
ガサガサ
また小さい音がした。しかしその音を聞きとれるのはひのしかいなかった。
これは動物ではないひのはそう確信して
「殿、人間の気配がします」
経丸は低い声で
「野武士か」
「よーわかりましたな」
士郎は聞き覚えのない声に
「何者だぁ」
胡散臭い男の集団が現れて
「おっしゃるとおり野武士でございます。さぁ、金目の物を出しなされ」
「何を言っているのですか?」
野武士達は笑いながら
「ここを通るときは皆、通行料をだす。ここでは常識なのですが」
「ここは関所じゃないじゃないですか」
経丸は強い口調で言った。
「まぁ我々は戦うことは嫌いじゃ、でも払ってもらえなければ力ずくで奪うまで」
くっそー、しゃくだけど相手は十人以上いるここで戦って皆を怪我させるわけにはいかない。ここはこれをあいつらに渡すしかないか
「わかりました、そなた達にこれを渡すだからここを通してください」
「おう、いい心がけだ、話が分かる奴は長生きできるぞ」
お金を渡そうとする経丸に対して士郎は
「経丸、こいつらに渡す必要ないぞ」
「しかし」
「経丸、それがし達はなんのために毎日剣術の稽古をしてるんですか、こんな奴ら二人で倒せるでしょ」
「そうだな、士郎」
「さぁ君たちこの大多喜の英雄外岡士郎を敵に回してぐぇー‼」
上からいきなり士郎の上に三人の男達が落ちてきた。
士郎は三人に押しつぶされながら
「いてぇー誰だ、お前ら」
「風のように速い、双子の弟、風神うーた」
「雷のように光り輝く、双子の兄、雷神、ひょーた」
「天からこの世を支配する。天神にして大多喜の番長、デモン」
三人は右ひじを曲げて左手は曲げた右ひじを持って右手で銃を突きつけるポーズを取って右ひじを曲げたり伸ばしたりしながらリズムを取って
「俺たち英雄だ~」
野武士達はいきなり登場した三バカトリオ達が何者かと思い
「なめんじゃねぇぞコラーお前らみたいなチビとバカそうな顔の奴が何の用だボケェー」
士郎も野武士達に同調するように
「何でお前らここにいるんだよ」
デモンは紳士ぶりながら
「登場した直後から歓声ありがとう。経丸さん危ないのでここは我々に任せて逃げてください」
士郎は呆れながら
「何かっこつけてるんだか」
経丸はデモン達を心配するように
「私達も戦いますよ」
デモンはクールな顏で
「士郎、連れていけ」
「わかった、サンキュー」
士郎は経丸達を連れて逃げ出したが一旦後ろを振り向き大きな声で
「さっきのパフォーマンスかっこいいから真似させてな」
「いいから、行け!」
デモンは真剣な目つきで
「うーた、ひょーたおっぱじめようぜ‼」
自分らに背を向けて逃げている士郎達を追撃しようとした二人を悠太は斬り倒し
「番長、こいつらクズなんで本気出していいですか?」
「ああ、いいぞ」
遼太は引きつった顔で
「あーあうーたを本気で怒らせちゃった」
うーたは全身の毛を逆立てて圧倒的な強さで敵を斬り伏せていった。
野武士達はうーたを恐れデモンとひょーたに襲い掛かるが殺気丸出しの悠太とは真逆で殺気を完全に消したひょーたに何人かは背後に回られて
「後ろがら空きだよ」
そう言ってひょーたは真顔で淡々と敵を殺していった。
デモンは向かってくる敵を長槍で力いっぱい敵を叩きつけていき三人は野武士達をせん滅したのであった。
ちょうどその頃
経丸達は金崎の元に向かって行く途中に温泉を発見した。
「うわぁー気持ちー、気持ちいいね、ひのちゃん」
「そうだね、凛ちゃん」
「気持ちー‼気持ちー‼」
「あっ殿、士郎の真似ですね」
「よくわかりましたね」
凛はニヤニヤしながら
「まぁ経丸さんは兄貴の事好きですもんね」
経丸は顔を真っ赤にしながら興奮気味に
「いやそんなんじゃ」
「経丸、もう言っちゃってくださいよ、ねぇ」
そう言って凛は経丸の脇をくすぐった。
「凛ちゃんくすぐらないでよ、脇は弱いんですから」
「じゃあ、言ってくださいよ」
経丸は照れながら
「士郎の事は好きだよ」
「おっ言ったよ、経丸さん」
凛とひのは本当に言うと思ってなかったので驚いた。
「さすがは殿、好きだったんですね兄貴の事が、よかったよかったでは次ひの言ってみよう」
経丸は少し慌てながら
「ちょっと待って、一世一代のカミングアウトをこんなに簡単に流すんですか?」
「何ですか殿、そんなに話を聞いてもらいたいんですか?」
ひのの悪気のない真顔の質問に凛は爆笑し
経丸は少し笑いながら
「いやぁ、私は別にそんなこと」
凛はニヤニヤしながら
「またまた、聞いてあげますよ」
凛とひのは経丸が士郎に抱いている恋を丸々二時間聞いたその後、
「ひのちゃんは誰か好きな人いるの?」
凛の質問にひのは真顔で
「いないですね」
「まぁ、ひのちゃんはこれからできるってことだね」
「ちょっと待ってなんでそんなにあっさりなのひのちゃんにもくすぐったりして吐き出させようよ」
凛とひのは経丸の慌てようと言葉に笑い
「経丸さん、兄貴みたい」
ひのも同調するように
「ほんと似てますね」
「なんか嫌だなぁ」
凛はニヤニヤしながら
「好きだからいいじゃないですか」
経丸は頬をぷくっと膨らませながら
「もう、からかわないでください」
しばらくして経丸達は経丸達が襲われないように温泉の近くで見張っていた士郎と合流した。
「ありがとう士郎、温泉入って来な」
「いいよ、それがしは入らない」
「きったない、入って来なよ」
「入らないよ、皆を湯冷めさせたくないから」
「士郎、きったないなんて言ってごめんね私達への思いやりだったんだね」
謝る経丸に士郎は照れ隠しで
「バーカもし経丸が風邪ひいて鼻たらしてたらきったなくて見てられないからな」
「士郎ってホント最低‼」
士郎と経丸は揉めながら金崎のところへ向かって行くのを凛とひのは笑いながら付いて行くのであった。
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