第26話伊勢
「僕こう見えても何でもできるんですよ」
ほんとかよと疑う皆
海老太郎は真顔で
「手洗いだってうがいだって一人で寝ることだってできるんですよ」
士郎は呆れながら
「お前いくつ?」
「十八です」
「経丸、こいつを雇うのはやめておきましょうこいつ三バカトリオよりバカです」
デモンは嬉しそうに
「お前、俺らよりバカだってヤバいぞ」
悠太は呆れながら
「番長、俺らバカの代名詞にされてるんですよ、怒らなきゃ」
「ふざけるな士郎‼」
「話進まなくなるから静かに」
軽くあしらう士郎に「あっ、はい」とデモンは素直に応じてその姿を見た悠太は情けなくて深いため息をついた。
経丸は優しい口調で海老太郎に
「何か特技はないですか?」
「弓矢を使うのがちょっと得意かもです」
士郎は少し驚いた表情で
「経丸、まさかこいつを雇う気?」
「うん、だって海老太郎さん悪い人ではなさそうだし」
「まぁ、確かに悪い奴ではないけど」
「じゃあ、とりあえず弓矢が得意ならあの的を射抜いてください」
「射抜く?」
片倉は優しい口調で
「矢で的を突き刺すってことだよ」
海老太郎は真顔で
「あーなるほど、ところであなたこの意味知ってましたか?」
片倉は海老太郎の言葉に笑っちゃいながら
「知っているから今説明したんだろ」
「あー、そうですね」
海老太郎は矢を持って五十メートル離れた的のところに行き的に矢を手で突き刺した。
皆はビックリし士郎は大声で
「何してんの?」
海老太郎も五十メートル離れた的の所から大声で
「さっき、隣のお兄さんが射抜くとは矢を突き刺すって言ったから突き刺しました」
皆が呆れる中、士郎は大声で
「一旦戻ってこーい‼」
海老太郎は走って戻って来た。
士郎は大声で
「バカ違うよ、片倉さんは矢を放って的を射抜けって言ったの!」
と士郎のツッコミに対して海老太郎は真顔で片倉に
「矢を放つとは言ってなかったですよねぇ」
片倉は苦笑いしながら
「ごめんね、俺の説明が足りなかったよね」
士郎は少し呆れながら
「やかましい、とりあえず矢を放って的を射抜け」
「はーい」
士郎と海老太郎のやり取りに皆笑ってしまっていたのである。
身長約百七十五センチ可愛らしい顔の海老太郎は今は真剣な顏で弓を構えた。
士郎は海老太郎と的の距離があまりにも長いと思い優しさで
「ここじゃ遠くないか、もう少し前に出てもいいんだぞ」
海老太郎は真剣な顏で
「今、集中してるんで話しかけないでください」
士郎は海老太郎の迫力に怖気づいて
「はい、すみません」
海老太郎はいきなり大声で「ひびせいちょう‼」
と叫びながら矢を放ってその矢は皆にまばたきをする時間を与えないくらい速いスピードで的に正確に突き刺さった。
皆は海老太郎の弓の技術に驚いた。
士郎は目を点にしながら
「凄いな、お前」
海老太郎は真顔で
「これってすごいんですか?」
「あーすごいよ」
「・・・ほんとですか、僕今褒められてるんですか?」
「褒めてる、けど今なんか会話に時差なかった?」
海老太郎は片倉に
「時差って何ですか?」
片倉は優しい口調
「時刻の差だよ」
「それ意味知ってましたか?」
片倉は笑いながら
「意味知ってるから説明してんだろー‼」
「あっ海老太郎、こんなところにいたの‼」
いきなり女の子特有の甲高い声が辺り一面に響き渡った。
皆は一斉に声の方向に振り向いた。
少し綺麗な気の強そうな女の子は燃えた小屋の茂みから現れて
「海老太郎、またこんなところまで虫取りに行って‼」
海老太郎は嬉しそうな顔で
「あっ、はるちゃん!」
「あっ、はるちゃんじゃないよ。いい歳にもなって虫取りばっかりしてしかも何この人達、まさか虫取りクラブでも作ったの?」
はるちゃんは経丸達の顔を見て呆れながら
「この歳にもなって仕事もせず昆虫を追いかけているバカがこんなにもたくさんいるとはこの国の未来が心配だわ」
士郎は強い口調で
「いや、それがし達は違うぞ!」
「何が違うの?」
士郎がはるちゃんに経丸の身分を説明しなっちゃんは顔を真っ青にして
「ご無礼な発言をしてすみませんでした」
皆に深々と頭を下げた。
経丸は優しい口調で
「いいですよ、気にしないでください」
「ありがとうございます」
「ねぇ、殿。この子僕の彼女なんだ、めちゃくちゃ可愛いでしょう」
海老太郎の言葉に皆は
えっ彼女いたの‼しかもこんな可愛い子‼
と心の中で驚いた。
経丸は優しい表情で
「本当に可愛いお方です海老太郎さん幸せ者ですね」
海老太郎はめちゃくちゃ笑顔で
「うん、めちゃくちゃ幸せだよ」
はるちゃんは赤面しながら「バカ」と軽く海老太郎の頭を叩いた。
「海老太郎が皆さんに迷惑などかけませんでしたか?」
この質問に皆は納屋を燃やしましたと思ったがはるちゃんの顔を見てそんなことを言える者は一人もいなかったのだが海老太郎が落ち込んだ感じで
「実はここにあった納屋を燃やしちゃったんだ」
皆、海老太郎の言葉に顔をひきつらせた。
はるちゃんは驚き
「申し訳ございません、この子少し天然なんですよ」
いや、納屋燃やすって天然ってレベルではないだろと皆心の中ではツッコむが言葉に出せる者は一人もいなかったが
「天然じゃないし、燃やしたくて燃やしたわけじゃないから」
はるちゃんは強い口調で
「普通の人間は人の納屋を燃やしたりしないから」
「えぐいてー!」
海老太郎のわけのわからない返答に士郎は
「この子何言ってんの?」
はるちゃんは呆れながら
「この子たまにいきなり奇声をあげたり意味の分からない事を言い出したりするけど気にしないで」
士郎は少し引き気味に
「おっおう‼」
「それで納屋の件はどうすればよろしいでしょうか」
申し訳なさそうに聞くはるちゃんに向かって海老太郎は笑顔で
「それは解決した僕がこの城で納屋の分働く事になった」
士郎は小さな声で
「えっ、殿雇うこと決定したんですか?」
「いや、まだ決めてなかったけど面白そうだから雇うよ」
「すみません、海老太郎をお願いします」
低姿勢なはるちゃんとは対照的に海老太郎は能天気に
「でも、雇われるには条件があります」
おい、お前が条件を出せる立場じゃないだろと皆が思ったが
「雇われるのは僕だけにしてほしい」
はるちゃんは呟くように
「えっ、何で?」
「僕ははるちゃんには戦で恐い思いをさせたくないだから僕だけを雇ってください」
海老太郎の言葉にはるちゃんは目を潤ませながら
「ホント、自分のこともちゃんとできないのに私の事ばかり考えてくれるんだから」
そう言ってはるちゃんは海老太郎に抱きつき
「怪我だけはしないように無理はしないでね」
海老太郎は笑顔で
「うん!大丈夫‼」
そして経丸に向かって真顔で
「そういえば城主ってどういう意味ですか?」
皆は派手に転んだのであった。
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