第24話執念


『おっ、珍しく片倉さんが昼寝してる楽書きしてやるか』




士郎はにやにやしながら寝ている片倉に近づいた。その士郎を




『やめなさいよ士郎、せっかく気持ち良さそうに寝てるんだから』




『えー、でもチャンスなんだよ殿』




片倉は急におき上がり




『ごちゃこぢゃと人の頭の上でうるさいなぁ』




『あっあーあ』




士郎と経丸は叫んだそれもそのはず士郎の手に持っていた筆の墨が片倉の鼻の下に落ちたのだから




『冷って、なんか落ちてきたな』




士郎は慌てながら




『雨漏りですよ、雨漏り』




そういって急いで片倉の鼻の下に落ちた墨を自分の服の袖で拭いだが墨はただのびてしまい片倉の鼻の下が真っ黒になっていた。




片倉の顔を見た士郎と経丸は必死に笑いをこらえた。




片倉は大きく伸びをし




『あー、よく寝た今から頑張ってくるか』




『おっそうだな、なんだか知らないけど頑張れよ』




『殿、ちょっと剣の稽古してきますわ』




『はい、気をつけて片倉さん』




片倉が部屋を出て廊下を通ると凛とひのと海老太郎と稲荷が片倉の顔を見て爆笑した。




『どうして俺の顔を見て笑うんだ』




凛は笑いながら




『だって片倉さん、顔どうしたんですか?』




『どうしたって?寝癖がそんなにおかしいのか?』




『いや、顔が汚いんで』




片倉は苦笑いしながら




『ひのちゃん、それただの悪口だよ』




凛はあまりにもストレートなひのの言葉に笑いながらあいだに入る形で




『墨ですよ墨がついてるんですよ』




『墨?あっもしかして』




片倉は走りだし




『士郎ー!!今日こそは切り捨ててやる』




その頃長作城から西に400百キロ離れた萬崎の居城では




萬崎が嬉しそうな顔で




『よし、頑張れよ』




苦悶の表情をうかべながら家来の元木は




「殿、はやくしてください」




「乗るぞー」




「じゃあーん、人間ピラミッド」




「殿、もうよろしいですか」




「まだ上ったばかりだろ禿げ太郎」




「重いですよ」




「まだ平気だよな、はったー」




「もちろんでございます」




「聞いたか禿げ太郎、お主チンパンジーに負けてよいのか」




「しかし殿、チンパンジーは自分より上の位置におるではないですか」




「うるさい、この景色をもうちょい楽しませろ」




じいやは慌てて走ってきながら




「申し上げまーす」




「うわぁぁー」




いきなりの爺やの声にびっくりしピラミッドは崩れ萬崎は落っこちた。




「なんだぁ、爺やいきなり」




「殿、こんなくだらないことしてる場合じゃありません。殿、まだ豊影達まだ城の前にいますよ」




「あいつらしつこいなぁもう2ヶ月になるではないか、俺断ってるに」




「よほど我らと同盟をくみたいらしいですな、殿これは我らが強くなった証拠でございますよ」




「お主は禿げ太郎だから気楽でよいなぁ、奴らのことだ。同盟を組んで利用するだけかもしれないんだぞ」




「はった、お主が禿げ太郎と呼ぶな、禿げ太郎と呼んでよいのは殿だけだぞ」




「これは失礼しました」




「俺だけ呼んでよいのか?」




「はっもちろんでございます。殿は特別ですから」




「特別!何かその響きよいなお主出世も近いぞ」




「ありがだきおことば」








「殿、そんなことより豊影をどうなされますか」




「子供の首を持ってくるやつとの同盟など絶対に嫌だ」




「お主達、しっかりあいつらを追っ払う対策考えておけ」




「はっ」




萬崎はそういって自分の部屋に戻った。




萬崎は部屋に戻ってすぐ妻の天子に近づき




「ねぇ天子どうしよう」




「どうしたんです殿」




「とりあえず膝枕して」




「全く殿は甘えん坊なんですから」




天子は膝をたたんで座り萬崎の頭をのせた。




「それで殿、どうしたんですか」




「豊影のやつが2ヶ月もずっと我の城の前におるのじゃ」




「なぜそんなにも豊影殿はおるのですか?」




「我らと同盟を組みたいからだろ」




『では同盟を組んだらよいのでは?』




「奴とは組みたくないのだ。奴は子供の首を手土産に持ってくるような恐ろしい男ぞ、そんなやつ恐くて関わりたくない」




「それで同盟は嫌なんですね」




「殿、これはどうでしょう相手と同盟を組むと言うんです」




「お主話聞いてたのか?」




「条件をつけるのです」




「条件?」




「相手ができるけど絶対にしたくないことを条件にするのです」




「なるほどそれはよいな」




そういって萬崎は天子の太ももをつまんだ。




「殿、太股つままないでください」




「ぷにぷにしててつい」




天子は少しあきれて萬崎を見た。




「その策よいな、採用させてもらう」




「殿は自分ができるけど絶対にしたくないことって何ですか」




「それはな、そなたと別れることじゃよ」




天子は顔を赤くした。




「まぁ殿、本気にしちゃいますよ」




「なんのことをだ?」




「何でもないです」




天子は鈍感な萬崎に深いため息をついた。




萬崎は上機嫌で家臣が円を描くように座って待っている広間の戸を開けて




「おーいお主らいい案出たか?」




元木は困った顔で




「すみません、まだ出ておりません」




「そうだろそうだろ、しかし我はいい案出たぞ」




「まことですか殿」




豊照は萬崎に近づいていった。




「おっ、はったー!いい反応だ、よろし」




「はっ、ありがたき幸せ」




「同盟を組むといって無理な条件をつけるのだ」




「その条件とは」




「奴にも妻はいるはずだ。その妻と二度と会えないよう別れよという条件だ」




「そんなので大丈夫ですか殿」




「大丈夫に決まってるだろ、お主は妻がいないからわからないんだ、妻と会えなくなる気持ちが」




「わしは会えない方がよいのですが」




「爺やそういうこと言うんでない、確かに爺やの妻は強烈だけどいいとこあるさ」




「はぁ」




「とにかくこの作戦で行く言いな」




「はっ」




『じゃあ豊影を呼んで参れ』




はったと元木は声を揃えて




『はい』




二人は走っていった。




「豊影殿」




「萬崎殿、呼んでいただきましてまことにありがとうございます」




「同盟を結んでやる」




豊影は疑いの目をしながら




いきなり?なんの心変わりがあったんだ、この人は




『その代わり条件がある』




「ちょっと待ってください、同盟を結んでもらえるのですか」




慌てる豊影を制するように




「ちゃんと最後まで話を聞け」




『お主は二度と妻と会えないよう別れるのなら同盟を結んでやるそれができないならすぐに消えてもらおう』




「わかりました、では検討します」




「何を言ってるんだ無理だろ、こっそり会うのもなしだぞ」




「少々お時間いただけないでしょうか」




「おうゆっくり考えろ」




「はい」




萬崎は城のなかに戻っていった。




「こんな簡単な条件とは、なにかたくらんでるのではないですか?」




豊影の言葉に伊藤は




『簡単なんですか?奥方様と別れないといけないんですよ』




豊影は笑顔で




『いや、簡単だろ女なんか星の数ほどいるんだから』




豊影達は一旦居城に帰り居城についてすぐ妻のせいなを呼び寄せ




『萬崎と同盟を結びたいのだがお主と別れろと言われた』




『そうですか、それで殿はどうするおつもりですか?』




『お前と別れて萬崎と同盟を組む』




せいなは怒った顔で




『えっ、そんな。私を捨てるんですか?』




「ああ、もちろん」




「私は捨てられてら路頭に迷うじゃありませんか」




「大丈夫、路頭には迷わせないから」




『えっ?』




豊影が刀を振りかぶると




せいなは慌てて  




「えっ、えっ、まさか」




「来世を楽しめよ」




ザック  




「ぎゃあーーー❕❕」




せいなの叫び声が響き渡ったのであった。




伊藤は冷静に




「殿、奥方様と別れるだけでよかったんじゃないでしたっけ」




豊影は低い声で




「後で萬崎にこそこそ会ってるっていちゃもんつけられたら困るからこの首を萬崎に提出するんだよ」




「なるほど、さすが殿。よき考えです」








そして翌日




「萬崎殿、土産を持ってきました。」




「土産って?」




霜河は布をあけた




「うわぁーぁぁ」




萬崎は氷をついた。




「そのお方は」




「我の妻でございます」




「嘘だぁー、嘘だぁー、そんなことできるわけないやん」




はったが萬崎に耳打ちで




「あれほんとの妻にございます。我は偵察にいっておりましたのでわかります」




「なぜそのようなことを我は二度と会えなくなるよう言っただけだぞ」




「後でこそこそ会ってるのではないかと疑われないように殺しときました」




うっまじでやばいやつだ




「これで同盟を結んでもらえますか」




はったが萬崎の耳打ちで




「殿、ここまで相手にやらせたのですから必ず同盟を結ばなければ大変なことになります」




「こんなのやらせるつもりじゃなかった、こんな恐ろしい奴と同盟は嫌じゃ」




「しかし同盟を結ばねば後で何をされるか奥さまを狙われるかもしれません」




とにかく同盟を結ぶしか無さそうだな




「わかった同盟を結んでやる」




「ありがだきおことば」




豊影の執念で同盟を結ぶことになった。




この同盟がこの世を大きく変えていくことになる。



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