第12話父上

夜明けの森の中で経丸達は囲まれていた。そこへ一本の矢が敵に向かって放たれた。






それを打ち込んだ人物は?




「待たせたな、経丸」




経丸は男の声に振り返り男を見てビックリした。




「父上」




経丸の振り返った場所に経丸の父、長経率いる軍隊が足並みを揃えていたのだ。




長経は大声で叫ぶように




「今から経丸達を救出する、皆の者行くぞー‼」




長経の命令で軍勢が一斉に天河軍めがけて勢いよく向かって行った。




予想外の攻撃に天河軍は耐えられず散りじりになりながら撤退していった。




長経はすぐさま経丸に駆け寄り経丸の顔をゴツゴツした両手で包み込みながら




「経丸、怪我はないか?」




「ありません、父上」




「そうか、無事でよかった」




長経は経丸を抱きしめた。




「大殿様ありがとうございました」




「久しぶりだなぁ、片倉」




片倉は目を潤ませながら




「はい」




と嬉しそうに返事した。




「ところで父上達は今までどこに行っておられたのですか?」




「それは後で話そう、ところで経丸そちらにいる方々は?」




「稲荷です」




「外岡凛です」




士郎はひのの両肩を後ろから持って。




「そしてこちら、これから殿の家臣になるひのです」




「えっ!」




ひのはビックリした表情で士郎を見たが士郎は親指をたててひのに笑顔を向けた。




士郎はかっこつけながら




「そして、それがしが天羽経丸の家臣外岡士郎でございます」




「おー、ピー助君ではないか」




長経の発言に皆声を揃えて




「ピー助?」




「いやぁ、士郎君は小さい頃よくピー、ピー泣いていたからピー助と呼んでたんだよ」




長経の言葉に皆お腹を抱えて笑い転げた。




士郎はふて腐れた顔で嫌みぽく




「経丸は父親似だな」




経丸は笑いすぎて涙を出しながら




「どこが似てる?」




「それがしに対してこういう発言をするところがな」




凛が笑いながら




「お父上も兄貴の扱いがわかってらっしゃるって事ですよ」




「そっか、本当によくわかってるよねぇ」




「違う、凛余計なことを言うな」




士郎の言葉など誰も聞かずしばらく皆笑い倒した。






長経は感心したような感じで




「しかし、経丸にはこんなにも家臣ができたのか」




「父上、家臣ではありません。大切な仲間です」




「おーそうか」




長経は嬉しそうに笑った。




「まぁ、士郎が仲間っていうのは気に食わないですが」




士郎は大きな声でツッコむように




「経丸、それはないだろ」




長経は笑顔で




「まぁーピー助君じゃ頼りないもんな」




 皆また大笑いした。




「私が経丸の父天羽長経だ、皆よろしくな」




士郎達は声を揃えて




「はい、よろしくお願いします」




そして皆は大多喜に帰った。




大多喜城についてた翌日の夜経丸と片倉は長経の部屋に呼ばれていた。




「経丸、お前に言いたいことがある」




「言いたいこととは?」




「我らは太松家と同盟を結んだ」




「太松と同盟を‼」




片倉は思わずビックリした。




片倉がビックリするのも無理はない太松といえば静岡県全土を完全統一しているこの国最大の大大名の一つなのだから




「どうやって同盟を結べたのですか?」




「まぁ、同盟というより傘下に入った形なんだがな」




「傘下に入られたのですか父上!」




経丸は驚いた。




経丸は戦に負けたわけではないのにどこかの大名の下に付くとは夢にも思っていなかったのである。




経丸は心の中で戦に負けなければ下に付いたりなどしないと考えている。経丸の考え方は戦国の世を生きるにはまだ幼いのである。




「まぁ、この国の四大強国の一つだからな」




「でも父上、傘下に入るくらいなら他の国と対等な関係の同盟を結んだ方がよかったんじゃないでしょうか?」




経丸の質問に長経は




「太松はこの国の四大強国の内の山梨全土と長野県をほぼ統一していて更に群馬の一部を抑えている松本、東京、神奈川を統一している大山この二か国と同盟を結んだ」




経丸はびっくりし




「えっ、最強の同盟じゃないですか」




長経は得意げに




「だろ、この同盟はこの国を変える」




「しかし大殿、なぜこの国々は同盟を結んだのですか?」




「若松は西側の愛知県が欲しい、松本は北側の長野を完全掌握したい大山は東側の栃木や群馬、千葉を制圧したいこの利害が一致したから同盟を結んだらしい」




経丸は慌てて




「大山は千葉を制圧しようとしてるって我らは攻め込まれるんじゃ」




「だから若松と同盟を結べば同盟国の傘下の我々には大山は手を出せないんだよ手を出せばこの三か国で一番強い若松と全面戦争になるからな」




「えっ、今三か国に大差はないんじゃないんですか?」




「若松の狙っている愛知の西半分の大名の若松家は当主が亡くなり継いだ息子がうつけだと噂になり後継ぎ争いが起きている国だそんなボロボロな国、簡単に潰せるだろ」




「大殿、愛知の東側には豊影がいるじゃないですか」




「天河は若松の傘下の大名だぞ」




経丸と片倉はビックリし経丸は




「えっ、ってことは天河家と同盟を結ぶことになったってことですか?」




「そうだ、今回少し揉めてしまったがもう揉めることはないだろう」




こんな形で豊影と決着がつくことに経丸と片倉は複雑な気持ちになった。




そこへ稲荷が慌てた感じでいきなり戸を開けて




「殿、豊影が五万の兵を率いて攻めてくるとの知らせが‼」




経丸はビックリし




「えっ、父上同盟国になったのになぜ豊影は攻めてくるのですか」




長経は青ざめた表情で




「ヤバい、もしかして豊影に我らが若松の傘下になったって情報が行ってないのかも」




経丸は思わず大声で「そんなー‼」と叫んだ。




片倉は冷静に




「稲荷君、太松のところまで行って今回のことを話して豊影に軍を引かせるようにお願いしてきてくれないか」




「はい、わかりました」




稲荷は天羽家の命運を背負って太松の元へ全力で向かうのであった。












































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