第13話 家督
朝四時士郎はいつも通り
「眠い、でも起きないと五、四、三、二、一よし!」
士郎は跳ね起き身支度を整えて経丸と合流し走り始めた。
「ねぇ、士郎話があるんだけど」
「何、どうせくだらないことだろ」
「昨日、父上から家督を継がないかって言われたの」
士郎は少し驚いた感じで
「えっ、家督を継ぐ?」
「うん」
士郎は笑顔で
「よかったじゃないか」
「でも、私なんかが家督継いで大丈夫かな?」
士郎は軽く経丸の頭はたいて
「ばーか、大殿がいない時実質当主だったじゃねぇかよ。考えすぎなんだよ」
「確かにそれもそうだね」
「まぁ、そんなに自信がないならそれがしが継いでもいいんだけどね」
経丸は笑いながら
「士郎が家督を継いだら三分で大多喜は崩壊するわ?」
「失礼な奴だな、ムカつくぜ」
士郎はスピードを上げた。
「ごめん、士郎冗談冗談、待ってよ」
二人は今日も仲良く走り込みを終えたのであった。
経丸と士郎は稽古を始めようとした時、庭で扇子を振り回しているひのを見つけた。
「どうしたんだひのちゃん、なんの躍りを踊っているんだ?」
ひのは真剣な顔で
「士郎さん、これは躍りではありませんいざというときに戦うための訓練です」
士郎は笑いながら
「ひのちゃんは相変わらず面白いなぁ。扇子で戦えるわけないじゃん」
「士郎さん、私に向かっておでこを突き出してください」
「えっ?なんで?」
「いいから」
士郎はひのに言われたとおり頭を突きだして
「ひのちゃん、こうでいいのか?」
「では、目をつぶっていきます」
ひのは士郎の頭を軽く扇子で叩いた。
叩かれた士郎はおでこを押さえながら
「いってー!!いってー!!めちゃくちゃいてー!!」
「これは鉄扇という護身道具です」
「鉄?ひのちゃんそれがしを鉄で叩いたのか!!」
「士郎さん、鉄ではなく鉄扇です鉄で出来た扇子です」
「鉄でできた扇子だかなんだか知らないけど、人のおでこを鉄製の物で叩いちゃダメだよ。鉄はとっ~ても固いんだから」
ひのは申し訳なさそうに
「すみません、鉄扇が武器として使えることをわかってもらおうと思ったので」
経丸がニコニコしながら
「まぁ、気にしなくていいよひのちゃん。これで士郎も少しは頭よくなったかもしれないし」
「なるわけぇねぇーだろ、それどころかこんな大きなコブができたじゃないか」
士郎は自分のおでこに出来たコブを経丸とひのにみせると二人は大笑いし
「あっ、はっはっはっはすごい~デカいコブ出来てる」
「あはははホントですね、大きいですね」
「ひのちゃん、あんたは笑ってないで少しは心配をしろよ」
ひのは目から涙が出るほど笑いながら
「ごめんなさい、コブが大きいのがおっかしくって少し触ってみてもいいですか?」
「アホか、いいわけないだろ」
士郎はおでこのコブの治療のためその場を離れた。
「ひのちゃん、厚かましいかも知れないけど、私が稽古の相手しようか?」
ひのは経丸の言葉にビックリし
「えっ?」
「一人でやるより二人でやった方がお互い上達するし」
「殿、本当にありがとうございます」
深々と頭をさげるひのに経丸は笑顔で
「一緒に頑張ろう!」
「はい」
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