第11話 何者
豊影の岡崎城で士郎は体のいかつい男達に囲まれて今、絶体絶命である。
「もう、ばれたからもはやこれまで」
士郎は覚悟を決めひのには逃げるようにと
合図を出し豊影達の注意を引き付けている間にひのを逃げさせた。
「殿、ひのがいなくなっております」
「なるほど、お前天羽家の人間だな、なぁここで取引をしようじゃないか、お前が仲間の居場所を教えれば命は助ける。教えなければこの場所で首を刎ねる、さぁどうする?」
経丸達は城壁の上から士郎の様子を見ている。
凛は必死に士郎を助ける策を考える。
「ならばこの首この場で刎ねろ、クソサルが!!」
凛はこの士郎の言葉で助ける方法を思いついた。
経丸が急いで士郎を助けようとするのを片倉は必死に抑えつけている。
「片倉さん、離してください」
「なりませぬ」
経丸は興奮状態で
「士郎を見捨てる気ですか、私が行かずしてどうするんですか」
片倉は興奮している経丸に困っている。
「殿、いい策を思いつきました、ここは私に行かせてください」
「凛ちゃんに何かあっても困ります、私が行きましょう」
「片倉さん、私に任せてください大丈夫ですから」
片倉は凛の自信に満ち溢れた目を見て彼女ならできると思い
「わかりました殿、ここは凛に任せましょう」
「しかし」
「殿、私必ず兄貴を無事救出します」
経丸は自分の力のなさが悔しくて仕方なかったが自分とは違い自信に満ち溢れている凛の目を見て託すしかないと思い
「わかりました、必ず無事に私の元に帰って来て下さい」
経丸は凛を強く抱きしめた
凛は緊張でドキドキしている自分に「気持ちー‼気持ちー‼」と心の中で叫んで自分を奮い立たせ城壁を飛び降りて士郎の前に着地した。
「何だお前は!」
士郎は凛の登場にビックリし
「凛‼」
「助けに来たよ、バカ兄貴」
士郎を囲んでいた鷲雪の家来の一人が
「はっはっはっ、助けに来ただとこいつ一人置いて逃げればよいものをわざわざ捕まりに来て」
士郎達は絶体絶命、しかし凛には策があった。
凛は士郎に耳打ちした。
「それもったいなくない?」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
凛は敵が襲いかかろうとした時、宙に向かって思いっきり金を投げた。
豊影達は一斉に宙を見た。
士郎達はその隙に先ほど狸が出入りしていた穴の中に逃げていった。
豊影は怒りながら
「奴らはどこへ消えた‼」
伊藤は狸が出入りしていた穴を指さし
「おそらく、この中でしょう」
「ちきしょー、逃げてしまったか」
「殿、まだ追いつけますよ」
「何‼」
「私はこの穴の出口を知っております、先回りしましょう」
「さすが伊藤、皆の者追うぞー‼」
「おー!」
経丸達は森の中に逃げ込みそのまま夜が明けて疲れ果てて一休みをしていた。
経丸の隣に座っていたひのは
「なぜ、私がここで捕まってるってわかったのですか?」
「あなたが私達の話を聞いて迷惑をかけないように自分から豊影のところに向かったと思ったから」
「えっ?迷惑?なんのことですか?」
「えっ?自分が匿われたせいで豊影と天羽家が戦になるって話を聞いて自分から豊影のところに行ったんじゃないんですか?」
「えっ?私のせいで戦になるところだったんですか!!」
「はい」
「それは本当にすみません。私その話知らなかったです」
ひのの言葉に経丸は驚きながら
「えっ?じゃあなんでここで捕まってるんですか?」
「私、美味しいものを食べる旅をしてましてその途中でなんか知らないけど捕まりました」
「あっ、じゃあもしかして砂東家の者じゃないんですね?」
ひのは真顔で
「全く違いますね」
ひのの言葉を聞いて経丸と片倉は首をかしげながら声を揃えて
「じゃあ、なんでひのちゃんは豊影に追いかけられてたんだろう」
「あー、それはここの城にも美味しいものあるかなぉと思って侵入したことがあるからかもしれない」
経丸と片倉は声を揃えて
「そっ、それじゃん!!」
凛は今までの内容をまとめるように
「ってことは勝手に侵入したひのさんを豊影が砂東の子供と勘違いして殺そうとしてたのかぁ」
片倉は笑いながら
「勘違いでこんな大事になったんかい」
ひのも真顔で
「ホントですね。よく考えたら私捕まる意味わからないですよね」
片倉は笑いながら
「よく考えなくてもわかるわい」
みんな思わず笑ってしまったのであった。
その頃士郎達は長い抜け穴を抜けた。
凛は顔を出した所に会話の内容が聞こえて
「もしかして殿ですか?」
凛の登場に経丸はビックリした声で
「凛ちゃん‼」
「凛、何やってんだ早くでろ」
士郎は後ろから凛のお尻を押したが経丸が凛に抱き着いたため士郎はずっと穴から出れずにいた。
士郎はイライラし怒鳴るように
「凛、いい加減に穴から出ろー!」
凛は少し笑いながら
「あっごめん、ごめん」
凛が出た後士郎もようやく穴から出れた。
穴から出た士郎に経丸は抱きつき
「士郎、無事でよかった、本当に心配したんだからね」
士郎は経丸から抱きしめられた嬉しさで顔を真っ赤にしながら
「まぁ、大多喜の英雄って自分で呼んでいる男はそう簡単に死なないわ」
「ホント、よかった生きていてくれて」
「おい、ほれ」
士郎は経丸の顔に経丸が苦手なカエルを突き出した。
経丸はビックリし悲鳴をあげた。
「何すんの、士郎」
「いや、なんか経丸っぽくない様子だったから本物かどうか確認した」
経丸はさっきまでの感情はすべて怒りに変わり
「士郎ってホント最低‼」
怒る経丸を見て士郎は笑っていた。
二人のやり取りを皆は呆れて見ていた。
片倉が凛に近づき
「凛ちゃん、大変な役をやらせて申し訳けなかった」
凛はニコッとした表情で
「片倉さん、小さい頃から兄貴の面倒見るのは私の役目になってますから」
経丸はニヤニヤしながら
「凛ちゃんは士郎が兄貴だからホント大変だよね」
「ホントですよ、殿いりますか?」
「いらない」
「ひのちゃん、士郎みたいな兄貴欲しい?」
経丸の問いかけにひのは一旦間をおいてから
「いや、いらないですね」
「やかましいわ‼」
皆笑った。
しかし喜びもつかの間だった。
先回りして皆が揃うまで隠れて待っていた
豊影軍に士郎達は囲まれた。
「おーこれで全員揃ったか、お主らもこれまでだな」
豊影は高笑いした。
「全員仲良く死んでもらおうか」
片倉は敵の数を瞬時に数えて
もはや全員逃げるのは不可能
「殿、殿だけでもお逃げください」
「そんなことできないですよ」
「でも、」
私は城主これまで皆に助けられて来たこんな時こそ自分が皆を守らなきゃ
経丸が覚悟を決め敵に斬りかかろうとした
瞬間敵に弓矢が飛んだ。
「何者だ!」
豊影は叫んだ。
皆は弓矢が飛んだ方向を見た。
そこにはきれいな毛並みをした白い馬に乗っている人を経丸は見て
「あー‼」
経丸は叫んだ。
果たしてその人物は誰なのか?
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