第10話潜入
夜遅く経丸達は今、愛知県にある豊影の居城岡崎城前にいる。城にはたくさんの兵が警備に勤めている。
こんなにたくさんの兵がいると忍び込むのも大変そうだ、とにかく音をたてないようにしなきゃと経丸は思い音をたてないようにこそこと忍び込もうとした。その姿を見た士郎は
「殿、こういった兵の数が多い場合はこそこそ忍び込むと怪しまれるから、堂々と入っていってこの城の兵になりきった方がいいよ、兵が多いと人の把握が完全にできてないから」
片倉はビックリした顔で
「おい、士郎君。昨日おかしなものでも食べたのか?」
「えっ、何でですか?」
「いや、まともなことを言ってるから」
「それがしだってたまには真面目なこと言うわ」
「兄貴、たまにじゃなくてまれでしょ」
「やかましいわ!」
皆、笑った。
「じゃあ、堂々と行きますか」
皆は声を揃えて
「はい」
経丸を先頭に警備の薄いところから城に入りこんだ。
堂々と入ろうと言い出した士郎はもしものことがあったら自分の責任だと思い一番緊張し身体中が震えていた。そんな自分を奮い立たせるために
心の中で「気持ちー‼気持ちー‼」と叫んでいた。
城内に入り込んでしばらくすると
「あっー‼」
「どうした士郎‼」
この士郎の声で皆に緊張が走る。
「あの穴の中から人が出てきたと思ったらサルだった」
「あほか!兄貴大事な時に」
凛はそう言って士郎をひっぱたいた。
いつもならツッコむであろう経丸もあまりの緊張でそれどころではなかった。
片倉は士郎を鋭い目で睨みつけて
「静かにして」
「すみません」
突如静寂を切り裂くような偉そうな声で
「何をやっとるお前は?」
「あぁ?」
士郎は偉そうな声色に対してイラっとしながら振り向いた。すると怖い顔の門番が立っていた。
まずいと思い、辺りを見渡した。自分と片倉以外は皆上手く隠れられていた。
ヤバい
士郎はいきなり脂汗が出た。
何とかしないとなんかいい方法はないか士郎は頭の中で考えを巡らせた。どんどん追い込まれていった。
その横で堂々としている士郎が
「えっとですね、人質の見張りを変わってこいと言われたんですけど僕、最近入った者なのでこのお城大きいので道に迷ってましてすみませんが人質の場所まで教えていただけませんか?」
「おー、そうだったのか、じゃあ教えてやるよ」
「ありがとうございます」
片倉さんはあんな堂々としてて凄いな
士郎は片倉の凄さを改めて認識した。
士郎と片倉は男について行った。
「ここだ」
案内された場所にはひのが鎖で繋がれていた。
「じゃあよろしく頼むよ」
と言って男は去っていった。
その瞬間皆が集まってきた。
「よくやりました、片倉さん」
「いや、たいしたことないですよ」
「殿、片倉さんそんな話後でとりあえずこれ外しましょう」
皆で手際よく手錠などを外していった。
ひのはビックリし、そして小さい声で
「皆さん、どうしてここに?」
「ひのさん、あなたを助けに来たんです」
経丸の答えにひのは丁寧に
「ありがとうございます」
がっちゃがっちゃがっしゃーん
大きな音を立てた瞬間、士郎以外は蜘蛛の子を散らすように逃げた。
この物凄い物音に反応した兵が凄い勢いで士郎の前に現れた。
「おいどうした、すごい音がしたが、あっー、お前何してんだ人質をどうするつもりだ」
士郎は顔をひきつらせながら身体中を震えさせながら
「いやぁ、この人質お手洗いに行きたがっていたので行かせてあげようと思いまして」
「お主、鍵もらってなかったのか?」
「いやぁーもらうの忘れてました」
「全くお主は、そんなにうっかりしててよく採用されたな」
士郎は頭をポリポリかきながら
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてねぇよ」
経丸達はよくあんなにヘラヘラする度胸があるなぁと感心しながら草陰から見ていた。
「あっ、殿」
士郎と話をしていた男は偉そうに歩いてくる男に即座に膝を地面につけて頭を下げた。
偉そうに歩いてきた男は低い声で
「お、ご苦労様」
「ありがたきお言葉」
「ところでお主の横の男はなんだ」
「殿、何を言ってるんですか、殿が見張りを頼んだとこの者から伺っております」
「いやぁ、俺そんな奴知らないし知らない奴に人質の見張りなど頼まないぞ。お前、勝手に連れてきたのか人質の見張りという大切な仕事場に」
士郎は男に同調するように
「そうですよ、先輩」
「いや、こんな奴知りません、私は連れてきておりません」
士郎は身体を震えさせながら
「だってよ殿、とりあえずこの話はここで終わりにしましょう人質がお手洗いに行きたがっているのでそれがしはこれで」
「そっか、この話は終わりにしよう」
豊影の言葉に士郎はホッとしたその時だった。鷲雪の横についていた井原が
「殿、この井原さっきからこやつの話を聞いておりましたがこやつ言っていることをコロコロ変えておりました。こやつ怪しいです」
豊影は低い声で
「お前、何者だ!」
「人気者だぁ!」
ヤバい、いつもの癖で余計なことを言っちゃった。
士郎の額から脂汗が滝のように溢れ出た。
「お前、ふざけている余裕があるようだな」
余裕なんかねぇよもう
士郎は敵の多さに逃げきれない事を悟り覚悟を決めた。
果たして士郎はこの窮地をどう乗り切るのだろか?
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