三 ツンデレ会長はあーんしたい。後半
「・・・。」
「会長!見てください!これぬいぐるみですよぬいぐるみ!」
「・・は?」
話が違うぞ副会長よ。
『会長はぬいぐるみが大好きなので、きっとぬいぐるみを見せただけで上機嫌になるはずです。』
冷静に考えて、そんなことあるはずないだろ。
「あのね・・まず、ここ生徒会室だから生徒会役員以外は入ってはならないのだけど。」
「いやそうなんですけど・・でも、会長授業にすら出てないと思ったら、保健室に行くと言う名目で生徒会室に篭ってたじゃないですか。じゃあ生徒会室に入るほかないでしょう。」
「ダメよ。学校の決まりをしっかりと守りなさい。」
授業サボってる人に言われたくない。
「・・会長。」
「なによ。」
「お昼のことは、すみませんでした。僕、昔から物事を忘れやすくて・・でも、会長のことも思い出しました。あと、あのぬいぐるみのことも。」
「・・・。」
「僕、昔あのぬいぐるみと同じ物を会長にあげたんですよね。それで、お互いがお互いを忘れないように、そしてまた会ったときには一緒に遊ぼうと約束した。その後会長は引っ越してしまい、僕と会うこともなくなってしまうから。」
「でも、あんたは忘れてた。なのに私だけしっかり覚えてて・・まるで私馬鹿みたいじゃない。」
会長は泣き出してしまった。お揃いのぬいぐるみまで持って、ずっと覚えていた大切な人に自分が覚えられていなかった。それは彼女の中で大きなダメージとなったのだろう。
「会長。」
「・・なによ。」
「デートしませんか?明日、土曜か日曜に。」
「・・・。」
「急にすみません。でも、僕は会長とデートしたい。なので勝手かと思いますが・・デート、してくれませんか?」
そう僕が言うと、彼女はゆっくりと頷いてくれた。
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「ごめん、待った?」
「いいえ。僕も今来たところです。それにしても、服、似合ってますね。」
「ふ、ふん・・まぁ、一応ありがと・・」
待ち合わせは駅前の噴水。時刻は現在AM11:00。
「では、会長。早速ですが、お腹が空いていませんか?」
「・・まぁ、多少は。」
「僕、この辺でいいお店を知っているんですよ。そこで先にご飯を済ませませんか?」
「・・ええ。」
あんなことがあっての後か、やはり会長はどこか気まずさが抜けていないようだ。元はといえば僕がいけないのだが・・だからこそ、今日は僕が会長をしっかりとエスコートしなくてはならない。
「さあ、会長。手を。」
「・・・。」
手を差し出すと、会長は少し躊躇いながらも手を握り返してくれた。暖かくも細く、繊細な手だ。昔はよく手ぐらいなら握っていたが・・どちらも大きく変わったんだな。
それから歩いて数分が経った。
「・・それで?」
「ええ、ここがそのお店です。いい雰囲気でしょう?」
「・・あのさ。普通、デートで食事って言ったらお洒落なカフェとか、そういうところじゃない?」
「・・そうなんですかね?」
「まぁそれはそうとして・・ラーメン屋さんって、どうなの?」
「いやぁおいしいでしょうラーメン!!会長も好きで昔はよく食べてたじゃないですか!!」
「確かに嫌いじゃないけど・・まぁ、確かにあんたらしいって言ったらあんたらしいかもね。」
『紗香ちゃん!餃子一個あげる!』
『あ、ありがとう・・雄馬くん。』
『あははー!!どういたしまして!』
「・・ふふ。」
「ん、どうかしました?」
「いえ、なんでもないわ。少し、昔を思い出してね。」
「・・??」
「な、なんでもないって言ってるでしょ!さあ、早く入りましょ!!」
「あ、待ってください会長!!」
ガラガラッ
「らっしゃい!」
店に入ると、ラーメンのいい匂いで包まれた空間がそこには広がっていた。ふと会長の方を見ると
「すー・・はー・・」
やはりラーメンが好きなところは変わっていなかったようで僕も一安心だった。
「会長、そこの席でいいですか?」
「・・へ?ああうん。構わないわ。」
匂い嗅ぐのにそんなに夢中にならないでください。
僕達は席に着くと、早速という感じでメニュー表を広げる。
「へぇ。ここのラーメン屋さんって意外といろんな種類のラーメンがあるのね。」
「・・それじゃあ、僕はチャーシューメンと餃子一皿にしましょうかね。会長は?」
「うーん・・それじゃあこのじゃがバタ塩ラーメンで。」
「わかりました。」
そうして注文を済ませてから数分が経ったのち、頼んだ商品が机へと運ばれてくる。どれも美味しそうだ。
「それじゃ頂きます。」
「い、いただきます。」
「あ、そうだ。会長。」
「なに?」
「はい、餃子。あーん。」
僕は会長の顔の前へと餃子を持っていく。しかし、会長は一向に口を開けようとしない。
「・・あんた、あーんって・・」
「だって会長、餃子頼んでないじゃないですか。小さい頃あんなに好きだったのに。ですから、せめて一つだけでも。ね?」
「・・わかったわよ。もう。」
そういうと、会長は渋々という感じで口を開ける。
そして
「あ、あーん。」
パクッ
ついに会長の口の中に餃子が消えていった。
「・・熱いけど、おいしい。」
「でしょう?ここの餃子、美味しいんですよ。」
『ね?ここのぎょーざおいしいでしょ?』
『うん。おいしい。』
『じゃあ、こんどあげるときはあーんしてあげるよ!』
『あ、あーん!?そんなはずかしいこと・・でも、ゆうまくんだったらべつに・・』
「・・はは、そうだ。あのとき、変に私恥ずかしがってて、それで、子供だっていうのに・・」
「さあ会長。冷めないうちに、ラーメンも頂きましょう。」
「・・は!?い、言われなくてもわかってるわよそれくらい!」
「ちょっ、会長!そんなに勢いよく食べたら!」
「!?けほっけほっ」
「だからむせるって・・もう、会長これ、水です。」
「・・あ、ありがとう。」
「はは!若いねぇ!」
結局、会長はその後赤くなりながらもゆっくりとラーメンを食べていった。
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その後、会長と俺はラーメン屋さんから出た後は映画を見て、その横にあるゲームセンターで一通り遊んだ後、今度こそカフェに入りゆっくりと映画の感想を話し合ったのち、帰ることになった。
「あー!!今日は楽しかったですね会長!」
「まぁ、及第点ってとこかしら。」
「んん?そんなこと言って会長、ゲームセンターでは思いっきり楽しんでたじゃないですか。」
「あ、あれは別にたまたま気分が上がっただけで!!」
「ふーん・・たまたま、ねぇ。」
「そう!たまたまよ!」
僕の努力もあってか、会長はすっかり元気になった。それじゃあ・・最後の仕上げと行きますか。
「それで、会長。」
「なによ?」
「これ、あげます。」
「・・なに、これ?」
「学生ですから、あまりアクセサリーなんかはよくないと思いまして。なので、勉強熱心な会長のために、シャーペンを用意しました!」
「・・あんたってつくづくあんたよね・・」
「ん?何か言いましたか?」
「いえ、なんでもないわ。ありがと。」
会長は僕から貰ったシャーペンをバッグへとしまった。そして、なにやらバッグから出して僕に差し出してきた。
「はい。」
「・・なんでしょう?」
「あげるわ。使わなかったら殺すけど。」
「おおこわ。」
受け取って包紙を取ると、中にはしおりが入っていた。
「あんた、確か本読むの好きだったでしょ。」
「ええ、まあ。」
「・・なによ?」
「いやぁまさか、会長からプレゼントを頂けるとは思っても見ませんでしたので。」
「・・い、いいから!はやく帰りましょ!」
(お、照れた。)
「ああ、それと。」
「?まだ何か頂けるんですか?」
「違うわよ!・・その、今日は楽しかったわ。だから、その・・また、で、デート・・」
「ええ、わかってますよ。いつでも、デートしましょうね。」
「そんなはっきり言うな!!」
そうして、僕と会長の楽しい1日は幕を閉じていった。
「これは・・大スキャンダルですなぁ・・ひひ。」
しかし、本当の地獄はここからだったのだ。
ツンデレ会長は恋したい。 マルイチ @Maruiti17
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