第5話  僕と幼なじみの戦い (野球拳)

「始めるよ!」


 あいちゃんの掛け声が入り、これから始まる野球拳に神経を集中する。

 あいちゃんの体つきは中学生の頃とは誰かと体が入れ替わったのかと疑問に思うほどに変わっている。


 まだ小さかった胸も膨らみ、肌は白雪のように艶を見せて光っている。顔の肌はきめ細かく、肉付きのいい頬を照らす。


 腕を伸ばす。


「「ジャンケンポン!」」

「よし! 勝った!」

「うぅ……、負けた……」


 あいちゃんはブレザーにワイシャツ、その下に何かを着ている。


 あいちゃんはゆっくり袖をもち、服を脱いでいく。

 ダメだ! 平常心……、平常心……。そう心の中で呟く。


 あいちゃんはベストを脱ぎ終わり、ワイシャツの状態になる。ワイシャツの下に何を着ているのか気になり胸の辺りを眺めていると——あいちゃんが腕を組んだ。

 

 やばい、と思い何も見てません風に目を逸らして、腕を伸ばした。


 あいちゃんも腕を伸ばす。


「「ジャンケンポン!」」

「負けたあ」

「わ〜い‼︎ 勝った!」


 僕はベストにワイシャツ、その下にシャツを着ている。 

 両手でベストをもち、頭から通していく。あいちゃんはというと真顔で見ていた。


 腕を伸ばす。


「「ジャンケンポン!」」

「また負けたあ」

「わ〜い‼︎ 勝った! よし!」


 ガッツポーズをしている。

 シャツ一枚になるのは恥ずかしい。


 異性として意識している人の前だ。前やったときは筋トレをしていて良かったけど、今は何もしていない。

 

 シャツのボタンを上から外していく。


 ふと、あいちゃんの方を見ると、あいちゃんは宝物でも見つけたのか、と思うぐらいに輝いていた。


 脱ぎ終わり、腕を伸ばす。


 すると、あいちゃんの腕は伸びてこなかった。

 

あいちゃんは指と指を絡み合わせて、力強く握って、目が今度は獲物を見つけたような目をしていた。


 すると、あいちゃんは我に帰ったのか、口を開け、何も無かったかのように、スムーズに腕を伸ばした。


「「ジャンケンポン!」」

「勝った! よっし!」

 無意識にガッツポーズをしてしまう。

「うわぁ、負けた……」


 少し脱いだときの状態を想像してしまう。鼻息が荒くなっていないだろうか。バナナがでかくなっていないだろうか。


 想像するだけで、男というものは狼にもなる。

 

 そして——三杯いける。

 人によっては個人差はあるだろうが、異性の想像は人類に付き物だ。


 すると、あいちゃんは耳の付け根まで真っ赤にしながら、ワイシャツのボタンを上から外していく。

 あいちゃんの肌があらわになる。


 そこには——色は青色のブラジャーに水色の花の模様が見える。

 

 僕にはこれだけで充分だった。

 ——バナナが暴れているのだ。


 大きくなった胸。胸がブラジャーによって引き締められ、谷間たにままで見える。ビーチで見る女性のビキニ姿と違って、これには色気があるのだ。


 やばい! 理性を保て! 平常心……、平常心! あいちゃんのおっぱい…………。ダメだ、僕! おさまれバナナ! 上を向くなバナナ! 


 すると——


「ど、どう……?」


 あいちゃんに声をかけられ、ハッと我にかえる。

 どう? とは? と思ったが、すぐに分かった。おっぱいのことだろう。うん。


「成長したね……」


 うまい言葉が見つからず曖昧な答えになってしまう。

 

 また、あいちゃんのことを見てしまったら理性を保てなくなるかも、と思ったが、欲に負けて見てしまう。


 胸を見ようとしたが、それよりも見てしまうものがあった。

 ——あいちゃんの顔だ。


 あいちゃんの顔は熱湯でもかけられたのか、と思うぐらい赤く、脳におさまりきらなかったのか頭から湯気が出ている。


「あ、あいちゃん……?」

「ふわぁぁ……」


 え⁈ 大丈夫かな⁈ と思い、あいちゃんの両肩を掴む。すると、体も熱々なのがわかった。

 しかも、触った瞬間噴き出ている湯気が熱くなった気がした。


「あいちゃん⁈」


 大声で叫ぶと、湯気がポッと抜け、落ち着いたらしい。


「……と、ともくん……」

「すごいことになってたよ……?」

「ご、ごめん……。恥ずかすくって……」

「続ける……?」

「い、いや、続きはまた今度にしようかな……」

「わかった……」

「ご、ごめんね……! あいがおかしかっただけだから」

「大丈夫だよ! また明日遊ぶうね!」


 そう言い、外を見ると空が暗くなっていることが分かった。

 

 すると、玄関の方にガチャっと音が聞こえる。この時間帯だとあいちゃんのお母さんだろう。


「暑っ!」


 一階からお母さんの声が聞こえる。暑い? と思っていると、僕のシャツは濡れていて、汗をかいていたと気づいた。


「じゃあ、そろそろ帰るね」

「う、うん、また明日」


 僕は制服に着替え、一階に降りていく。お母さんに一声かけ、玄関に向かう。


「お邪魔しました!」


 僕はそう言い、外に出ようとしたところ、制服を着たあいちゃんが降りてきて——


「またしようね!」

 

 ——そう言った。


 そして、僕は「うん!」と答え、外に出て行って、ガッツポーズをした。




 

 

 



 

 




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