第4話 リボン

卒業式が終わり、教室に戻ってきた俺は最後のHRが始まるまでの間、

窓際の自席に座り、頬杖をついて窓を眺めていた。


その時、親友の恭介が俺の前の空席に腰掛けた。


「結局、あの子は見つからなかったな」

恭介は嘆息を吐きながら、呟いた。

彼も、俺が一人の名も知らぬ女の子を探していることを知っているのだ。


「…ああ」

「そういえばさ」


恭介はそう言うと、俺の机のフックに掛けられている、

小さな紙袋を指差した。


「それ、何?」

紙袋に手を伸ばした恭介を制止しようとするも、時既に遅しで

小袋は恭介の手中に収まった。


「ちょっ、恭介!」

「どれどれ…ってなんだこれ!」

恭介は小袋から取り出した真紅のリボンを見つめながら、瞳を丸くした。

まもなくしてこちらを振り向くと、意地の悪い笑みを浮かべた。


「弘也ぁ、お前まさかあの子に」

「わ、悪いかよ」

俺は顔を真っ赤に赤らめてぷいっと横を向いた。

恭介の視線が痛いくらいに俺の横顔に注がれていた。

その視線がたまらなく憎い。


そう、俺は今日、俺を支え続けてくれたあの子に告白しようと考えていたのだ。

勿論彼女を見つけることができれば、ではあるが。


ちらりと視線を恭介の方に向ける。

彼はリボンを指でつまみ上げながら、ふーんと意味深に声を漏らしていた。


恭介はしばらくの間、リボンを見つめていたが突如何かを閃いたように

目を見開くと俺の方を向いた。


「なあ、弘也」

「なんだよ」

「『あの子』を見つける方法がある、て言ったらどうする?」

俺は思わず「はあ?」と間の抜けた声を漏らした。


「どういうことだよ」

「まあまあ、で、どうする?やるか?」

「やるもなにも、内容が分からなきゃ承諾も糞もない」

「しょうがねえなあ、ほら、耳貸せ」


俺が恭介に耳を寄せると、彼はその作戦を打ち明けた。

「はあ?」

俺は思わず、素っ頓狂な声を上げる。


「そんなんで、本当に…」

俺が弱気に呟くと、恭介は真剣な瞳で俺を見つめた。


「でも、これ以外にあるか…?彼女を見つける良い方法がよ」

「…」

彼の言うことはもっともだった。

俺の頭の中には、恭介の言う以上に「あの子」を見つける上手いやり方など

思いついてはいなかった。


彼女を見つけることができなければ、彼女に想いを伝えることも叶わないのだーー。


俺は大きく深呼吸をし、両頬をパチンと叩くと、恭介の方を向いた。


「‥分かった。やろう」

「そうこなくっちゃな!」

恭介はにっと満面の笑顔を見せると、紙袋を俺の机の上に置いた。


「それじゃあ、放課後、3年B組の前に集合な」

「ああ!」


俺が力強く頷くと、恭介は自分の席に戻って行った。

机の上に置かれた紙袋を握りしめると、俺は前を向いた。





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