7話 アカとヒモ
夕に助けてもらったその日。風瑠は髪を切った。肩より長く伸ばしていた赤い髪は、首の高さぐらいに切りそろえた。本当は、風瑠は髪を短くしているのが好きだった。しかし、この街に引っ越す前の学校では、短く切った前髪を可笑しく言われ、それが嫌で髪を伸ばしていた。
転校を機に、もう一度お気に入りの髪型でいよう。いろんな人に可愛いと言われたい。
──夕君にも、褒めてもらいたい。
そう思いながら、風瑠は散髪の仕上げを終えた。
翌日、10月1日。風瑠は自分のクラスで彼を待つ。
「あれ、君は?」
「もしかして転校生!?」
「可愛い!これからよろしくね!」
転校生が来るということは伝えられていなかったようで、クラスはザワついた。クラスメートとの会話が一段落したころ、彼、夕はやってきた。
風瑠は礼をもう一度するため、彼の席へ向かう。
「───あの」
その声を聞いて、夕は顔を上げた。風瑠は続ける。
「えっと、夕君、、、」
「?どうして俺の名前を?」
その急に飛んできた何気ない発言が、風瑠には鉛玉のように感じた。
髪型を変えただけで、誰か分かってくれない。私の事なんか、眼中に無いんだ、きっと。
そう思うと、胸が苦しくなってくる。目に涙が浮かんできてしまう。
「え、、、」
夕は、突然の泣き顔に戸惑う中、
「この、鈍感」
そう言い残して、彼女はただ、無言で去っていった。
───彼女の初めての恋は、2日で終わりを迎えた。
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