5話 アカ

暖かな陽射しが、カーテン越しに1人の少女を包む。その朝の歓迎に目を開き、少女はゆっくりと体を起こし、階段を降りる。家には少女以外に誰もいない。作り置きしておいたオムライスをレンジで温める。

親の転勤でこの街に引っ越してきた初日の朝、少女は1人で、瞳をキラキラさせながら新たな学校へ行く準備を進める。明日から学校に行くことになっているが、楽しみで何度もカバンの中身を見直している。彼女の胸の中は、期待に満ち溢れていた。

─学校には、どんな人がいるかな?

─たくさんの人と、仲良くなりたいな。

───彼氏は、できるかな?

この少女、かなり恋愛に積極的なようだ。


少女は、鮮やかな赤い長髪を陽気に揺らしながら、家の周りを散策した。近くには少し古びている商店街があり、肉屋、魚屋、花屋、本屋、家具屋───。さまざまな店があった。道中でたくさんの人に声をかけられ、散策というよりか、挨拶回りのようになっていた。

空が橙に染まってきた頃、少女は家へと向かう。

商店街の入り口前、横断歩道を渡る。

───刹那、少女は右方から何かが迫る気配に気づく。赤信号なのに車が突っ込んできた。それも、ものすごいスピードで。

少女は、その車が信号無視をしたと気づいたが、避けようにも、恐怖で体が動かない。そのまま車は少女に迫り続け、衝突────

する直前。


「───危ない!」


誰かが少女を突き飛ばす。助かった。少女は無事、事故を免れた。助けてくれた男性に、お礼を言おうとした時。


辺りに助けてくれた人の絶叫が響き渡った。何が起こったか分かったとき、少女は罪悪感に呑まれた。

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