1.5章 アカとヒモ

6話 アカとオトコとナミダ

少女を助けた少年は、病院へ運ばれていった。当然、少女も走って後を追う。



少年がいる病室に入ると、そこには女性が1人。


「えっと、、、あなたは?」

「私、優心 風瑠っていいます。さっき、彼に助けてもらって、、、お母さんですか?」

「ーーーええ。事情は聞いてるわ。さ、座って」


そう母に勧められ、少女、いや、風瑠は少年の母の横に腰を下ろす。


「夕さんは、右腕の骨折です」


医者がやってきて、そう伝えられた。幸い、少年、夕は単純骨折で済み、すぐにでも退院できるとのことだ。そうはいってっも、風瑠から罪悪感が消えることはない。彼に直接礼を言いたい。


「ごめんなさいお母さん、私のせいで─」

「気にしなくていいのよ、風瑠ちゃん」

「目を開けて、私、あなたと話を───」


そのとき、少年がゆっくりと体を起こした。風瑠は少年の母とともに歓喜した。


「よかった、夕、、、死んだかと思ったのよ、、、?」

「よかった、生きててくれて。助けてくれてありがとう」


夕の母と風瑠は、その言葉を発した直後、2人は心の中に溜まっていた不安から開放された。


「名前を聞かせてくれる?」


声を震わせながら、涙目の風瑠は聞く。


「西乃野 夕。君は?」

「私は優心 風瑠。えと、助けてくれてありがと、、、夕君」


頬を赤らめながら、風瑠は再び礼を言う。それに夕は戸惑い、沈黙が続いた。


「──私、昨日、この街に引っ越して来たんです」


空気を和らげようと、風瑠は切り出した。


「へぇ、学校は明日か、、、ら、、、?」


夕は少し考え、こんな質問をした。


「風瑠さん、川橋高校に転校してきましたか?」

「────え?なんで分かったんですか?まだ学校に行ってもいないのに、、、」


図星である。明日から、風瑠は川橋高校に通学するのである。


「俺のクラスに机が1個増えてたから、もしかしてと思って。やっぱり転校生が来るのはホントだったんだ。お互い仲良くやりましょう、風瑠さん」


その時の夕の手は、微かに震えていた。当然だろう。事故に遭った恐怖から逃れることなど、容易ではない。────容易ではない、そうであっても。


彼に前を向いてもらうために。

今はこうやって握手をしよう。


彼の震える手は、冷たかったのに、暖かだった。

風瑠の頬がさらに赤く染まった。

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