2話  ヒモのトモ

夕は、学年内でトップレベルの成績の持ち主だ。同級生の男子からも特別視されている。

模香も、成績はトップレベル。、、、下から数えてだが。その代わり、かなりの美人で、人付き合いがいい。


「よう、夕。まーた仲良く模香さんと登校か?ラブラブじゃねえか」

「うるさいなあ、スグ、ただの幼なじみっていつも言ってるだろう、がっ!」

「ふひッ!やめろ夕、くすぐるな、、、ふッ!」


小太りの少年、スグはあまりのくすぐったさに絶叫。夕もつられて笑う。

スグは夕を特別視しない。一番の親友だ。


「おい、ところで夕。あれ見てみろよ」


スグが指差すのは、教室の右後ろにある机。


「なんだよ、ただの机じゃねえか」


そうである。ただの机だ。


「バカ言え。昨日までそこに机、無かったろ?」

「───ぁ」


他の人ならそれぐらいすぐ分かるだろう。


「夕、あそこに机があるということは、、、分かるな?」

「?」


この問いにも夕は答えられない。教室に机が増えるということは、可能性を1つしか考えられないのが普通だろう。


───夕は、天然である。


「転校生が来るということだ。それぐらい分かれよ」

「なるほど。今はいないけど、朝礼で紹介されたのか。名前は?」

「いや、先生は言っていない。でも、転校生が来るのは確実だろうな」


どんな人が来るのだろう。明日が楽しみだ。夕はワクワクしながら日課をこなした。



放課後。

模香は委員会の仕事があったため、夕は1人で帰路についた。夕の家は木工所で、障子や椅子を制作している。家が見えてきて、横断歩道の信号が青になるのを待っていて、それは起こった。

刹那、夕の視界の片隅に1台の車が映る。その車は横断歩道に差し掛かるところだった。赤信号なのに減速しない。

─信号無視?

そのとき、嫌な予感がした。

横断歩道、信号は青、車は信号無視、横断歩道にいる女の人、轢かれる。あれは誰だ、誰だ誰だ誰だ誰なんだ、、、このままだとどうなる、何が起こる、起こってしまう、、、

───助けなければ。その人が、誰であっても。

夕は駆け出した。

運動音痴である夕は、なんとか女のもとにたどり着いた。声をかける暇もなく、


「───危ない!」


女を突き飛ばす。これで安全、そう思ったとき。


右半身に違和感。それは一瞬であったが重く、まるで、誰かにマッサージをされているみたいで。まるで、大任を負わされたときのプレッシャーの重圧みたいで。

───まるで、車に轢かれたかみたいで。



激痛。辺りに絶叫が響き渡った。視界は、真っ赤に染まった。

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