アカのイト、ヒモのイト

微狭い神

1章 ヒモのイト

1話 ヒモ

暖かな陽射しが、カーテン越しに1人の少年を包む。その朝の歓迎に目を開き、少年はゆっくりと体を起こし、階段を降りる。キッチンでは、母がインスタントラーメンを作っていた。


「あ、おはよ、夕。もう起きたの?」

「おはよう、母さん。───もう9時だけど?」


少年こと、この物語の主人公、西乃野夕にしのやゆうはあくびをした後に答える。のんびりとした会話を繰り広げているが、学校が始まるのは8時30分。堂々の遅刻である。



母はどこか抜けている。朝からインスタントラーメンを食べさせられると、友人との朝食の話も、まともにできるものではない。


「あ、夕。模香ちゃん外で待ってるわよ」

「うん。毎日ちゃんといてくれて、謙虚なもの、だ、、、ぁ?」


つい、素っ頓狂な声が出た。



玄関のドアを急いで開けた。


「痛ったぁい!気をつけなさいよ、夕!」


そう言って、幼なじみの同級生、寺町てらまち 模香もかは赤くなったおでこを抑えて怒り顔。それでも、その顔からは優しい笑みが消えることはなかった。


「さ、急ご、夕!走るわよ!」


模香は走り始めた。夕も後を追う。


さあ、日常でない日常の始まり。

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