鋼鉄のゴーレム
最初の部屋が見つからず一先ず近くにあった部屋で休憩する
「見つからないね」
「あぁ見つからないな。どうなっている?」
迷うにしても1時間以上歩いて見つけられないのはおかしい、仮にも一度通った場所、ましてや最初の部屋は他の部屋と違って内側から通路側に扉が吹き飛ばしている
通路に無惨に転がる扉なんて一目見れば分かるのにそれすら見つけられない
「他の部屋は見つかるのにあの部屋だけ見つからない……なんでかな?」
「同じような景色だから気付いていないだけで道が変わっている?」
「違う道を選んで進んだ筈だけど何かしらの方法で道が変わってるから最初の部屋に辿り着け無いって事?」
「可能性だがな」
「その場合どうするの?」
「原因を探るか通路をぶっ壊す」
「ま、まずは原因を探そうよ! 何か見つけられるかも」
「探すと言っても入った部屋は粗方見たが」
部屋の探索中それと言って怪しい物は特に見つからなかった
通路も何かあれば見つけられるだろう
「そうなんだよねぇ。まだ部屋があるとかそれか通路……」
「怪しい物は見ていない」
「そうなんだよねぇ」
手がかりの一つも持っていない
「よし壊すか」
部屋の壁に近づいて勢いよく拳を振るう
大きな音を立てて壁が凹む、そして再び殴ろうとすると大きな音が鳴り響く
「何この音」
警戒音、緑色に光っていた線は赤い点滅をし始める
緊急事態を知らせる音と色、二人と一体以外何もいない筈の階層に鳴り響く
音が鳴り終わる
「ようやく終わった」
音が鳴り止んでも赤の点滅は続いている
「警戒音?」
「何それ」
「人間が使う緊急事態を知らせる音に似てる」
角笛や口笛などの決まった音で遠くにいる人物に対して状況を伝達する事がある
移動するよりも音の方が伝達速度は早い上味方しか知らない暗号となる
「壁を殴ったから?」
「恐らくな」
「扉はいいのに?」
「扉は壊す物なんだろ」
「それは違うと思うなぁ……何か変わったの……うわっ何この揺れ」
突如階層中が揺れ始める
揺れは大きくなり揺れを起こしている存在が近付いてきている
ベルは臨戦態勢を取りカエデはベットの裏に隠れる
「なんか近づいてくるよ~」
「番人でも呼び起こしたか……都合が良いぶっ倒すか」
「頑張れー」
ベルが部屋を出ると通路に大きな鋼鉄のゴーレムが居た
そのゴーレムはベルに気づく
「対象確認、魔物と認定、等級は1級、最大出力にて処理する」
「ほう、喋るのか」
「殲滅開始」
ゴーレムは巨大な拳を振るう
避けて不可視の弾丸を打ち込む
硬くダメージは無い、斬撃も傷一つ付かない
「空気の圧縮による攻撃、解析完了」
何度も拳を振って攻撃をしてくるが全て回避する
「硬いな。業火よ眼前の敵を焼き払え、その姿を大きく恐ろしく身を踊らせろ、何人も防げぬ程の灼熱を我が前に、プロミネンス」
超級魔術プロミネンスを放つ
魔法陣から出た小さな炎がゴーレムへ飛んでいく
「魔術の使用を確認、防護システムを展開」
炎はゴーレムに当たると消滅する
「壁と同じか! 厄介な」
魔術が聞かないと見るや否やすぐに接近して拳を振るう
「特殊防護システム起動」
扉や壁を超える頑丈さを持つゴーレムの身体には傷一つ付けられない所か腕が霧散する
「何!?」
「対象破壊」
反応が遅れゴーレムの攻撃を回避も防ぐ事も出来ずに直撃して吹き飛ばされる
勢いのまま壁に激突する
拳が触れた部分が剥がれ黒いモヤが溢れ出す
魔力が形成する身体は魔力を消費してすぐに元に戻る
「こいつ魔力を……」
ゴーレムの拳が触れた瞬間魔力が吸い取られていた
体を構成する魔力と纏う魔力を吸い取られた結果ごっそりと無視出来ない量の魔力を削られる
魔術も無効化する、触れた魔力も吸い取る正しく魔物の天敵
「特殊防護システム解除、スピードアップ」
ゴーレムが高速の連撃をベルに叩き込む
咄嗟に空間に干渉して背後に回りそのまま部屋に逃げ込む
ゴーレムは暫く誰も居ない壁を殴り続ける
「ベル! ……祈れ、その命の末路を、願え、その屍の脈動を、望め、その死した存在の理想を、前へ進めかつて生きた屍共よ、過去に縋る汝らに未来を与えよう、汝らは死した故に死を超えた軍勢、踊れ狂え戦え
魔術を発動する
影が広がり骸骨が10体ほど這い上がる
通路は広いが骸骨たちが戦うには数が絞られる
「奴を倒して!」
骸骨は一斉にゴーレムに突っ込んでいく
居なくなったことに気づいたゴーレムが迎え撃つ
「対象確認、複数、アンデット、殲滅開始」
ゴーレムの攻撃が骸骨達に襲いかかるが飛び退いて回避し大盾を持つ者が攻撃を防ぐ
サイクロプスの時と違い命令が標的の討伐
戦闘の命令の時のみ骸骨のステータスが上昇する
斧や剣、槍などを持つ骸骨がそれぞれ攻撃する
個々の戦闘能力だけでなく連携の精度も高い
拳を振るおうとすると戦っていた者は後ろに下がり大盾を持つ者が前に出て拳を受ける
後ろから防護魔術で大盾をフォローしながら魔術を放つ
「防護シス……」
武器による攻撃より魔術を危険視したゴーレムは何かをしようとするが斧を持つ骸骨の一撃に怯み魔術による攻撃を受ける
ダメージこそ浅いが魔術による攻撃が通った
「魔術は無駄だ」
「いや、効いてるよ!」
「なんだと! どうなってる」
「分からない。ただ何か魔術を無効化するには条件があるのかも」
「条件……」
「脅威レベル更新、スピードアップ」
放たれる拳の速度が上がる
剣を持っていた骸骨が剣で防ごうとするが間に合わずやられる
やられた骸骨の背後から槍を突き出す、一撃をギリギリで回避して再び槍を突き出すが殆どダメージは入らず二発目にやられる
「威力上昇」
大盾を持った骸骨達が前に立つが拳が盾を貫き盾を持っていた骸骨達を吹き飛ばす
「治れ」
やられた骸骨達は身体を修復され立ち上がる
武器も修復される、大盾を持つ骸骨が前に立ち様子を伺う
(削れるなぁ)
骸骨を修復する度に魔力が削られる、だが骸骨を使ってゴーレムを抑え込まないと二人ともやられてしまう
(条件が分かるまで持ってよ私の魔力)
「対象魔術による擬似生命と予測、特殊防護システム起動」
骸骨に襲いかかるがその攻撃は先程骸骨を倒した早い攻撃ではない
大盾で防ぎ攻撃役の骸骨が連携して攻撃を仕掛ける
ゴーレムにどんどんダメージが蓄積されていく
「特殊防護システム、スピードアップ、威力上昇、防護システム……」
「奴が言っている言葉か?」
「うん」
攻撃してきた骸骨の一体を掴んで握り潰す
「対象破壊完了」
握り潰された骸骨は地面に落ちると同時に体を修復され再び剣を振るう
一瞬ゴーレムの行動が止まる
「原因不明、スピードアップ」
素早い攻撃で次々と倒していくが何度も蘇る骸骨を見て対象を変える
「術者の抹殺に移行、探知、発見」
攻撃を受けながらも骸骨を薙ぎ払い部屋に向かってくる
骸骨達はやられながらも何度も修復される身体で必死にゴーレムを止めようとするが素早い一撃でやられていく
背後から斧を頭に叩き込むが気にせずにゴーレムは進む
大盾を持つ数体の骸骨が目の前に立ち行く手を阻む
骸骨達ではゴーレムの歩みを止められない
「威力上昇」
大盾ごと一撃で吹き飛ばされる
後ろで魔術を展開していた骸骨が杖を構えて前に立つが一撃でやられる
しがみつく者もいるが行動虚しく壁に叩きつけられる
「術者の抹殺……これは不味いなぁ」
部屋の出口は一つ、逃げ場は無い
何体かの骸骨を部屋の中に召喚する
次々とやられていく通路に居る骸骨を見ればこの数では心許ない
カエデにはゴーレムと渡り合う戦闘力は無い
「貴様は隠れてろ、余裕があれば骸骨に魔術を使わせろ」
ベルが部屋を出る
言われた通り骸骨に指示を出して魔術を放たせる
「危険度優先、魔物、特殊防護システム」
魔術を避けるでも防ぐでもなくベルに襲いかかる
魔術が当たりダメージが蓄積されていくがそれでもベルに襲いかかる
「矢張りな」
ゴーレムの攻撃を避ける
速度の上がっていない攻撃であれば避ける事に集中すれば回避は対して難しくない
「業火よ」
魔術の詠唱を始める
ゴーレムはそれに気付き行動を取る
「魔術使用を確認、特殊防護システム解除、防護システム展開」
詠唱を辞めたベルから高密度の魔力を込めた拳が放たれる
ゴーレムの胴体に直撃し大きい損傷を与える
「おぉ!」
「貴様はそのシステムとやらは同時に使えない、魔術か魔力かはたまた速度か威力か、魔力の方はどういう訳か魔術を防げない」
鋼鉄のゴーレムはスピードアップ、威力上昇、防護システム、特殊防護システムの4つを切り替えて戦う
ベルの言う通り特殊防護システムでは魔術を防ぐことはできない防護システムでは魔術では無い魔力を使った攻撃は防げない
魔力を込めない攻撃はゴーレム元々の頑丈さがあれば問題は無い
何度も拳を叩き込む
「特殊防護システム起動」
「業火よ眼前の敵を焼き払え……」
攻撃を辞めてプロミネンスの詠唱を再び始めて詠唱を終える
特殊防護システムでは魔術は防げない
「特殊防護システム解除、防護シ……」
「止めて!」
カエデの指示を聞いて骸骨達は武器を持ち一斉に飛びかかる
骸骨達はゴーレムを囲み一心不乱に叩きまくっている
魔術も使わずに邪魔をする為に囲んで腕に掴まったり身体に登って頭を叩いたりし始める
「威力上昇」
一撃で薙ぎ払われるが修復される事を利用して妨害を続ける
「ベルの魔術が当たるように全力で妨害して! 何度倒れてもいい!」
修復されて何度も立ち上がる
その度にカエデの魔力はどんどん減っていく
そして一体の骸骨が叩きながら背後に居るベルに目線をやる
ベルはその意味に気付き軽く笑う
「これで終わりだプロミネンス!」
「魔術の使用を確認、防護……」
骸骨のどれかの一撃が響きゴーレムはよろめく
防護システムを起動出来ずに炎に包まれる、囲んでいた骸骨も巻き込まれるがそれでも攻撃を辞めない
抵抗しても薙ぎ払っても何度も蘇って炎に包まれながら襲いかかってくる正しくホラーな光景
鋼鉄の体はどんどんと壊れ溶けてやがて急所のコアを破壊されて動きを止める
すると赤く点滅していたのが止まり再び緑色に光る
「これで終わりだ。おい終わったぞ」
部屋に戻るとカエデが疲弊して座り込んでいる
「どうした?」
「ちょっと魔力使いすぎたみたい」
魔力が尽きれば体を操る魔術が解除されて正真正銘の死を迎える
それなのに
「死ぬぞ」
「まだ平気、あとどのくらいか分からないけど数ヶ月は行ける筈……それより何か無かった?」
「まだ見ていない」
倒れるゴーレムを確認するが特にめぼしい物は持っていない
通路を通り今まで見つからなかった最初の部屋を見つけ魔導具を見つける
その魔導具は魔力を注ぐ事で発動場所から一定範囲で過去に起きた出来事を見る事が出来る魔導具
「目的の物ではなかったな」
「そうだねぇ」
「遺跡かダンジョンに向かうか」
「そうだね」
階段を登り遺跡の外へ向かう
魔力を使った事で操れる期間が大幅に減った
元々短かった期間が更に短くなり急がねばならない状況になった
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