迷子
通路の先の部屋の中央に設置された箱の中に魔導具が一つ入っていた
その魔導具の見た目は小さなバックだった
手に持って確認する、見た目は本当にバックで中を見ても何も入っていない
「血を操る……ようには見えないなぁ」
目的の魔導具のようには見えない
「この魔導具は見覚えがある。この見た目で多くの物を入れられる魔導具だったはずだ」
「あぁ、カレンって子が言ってたのと同じのかな。一杯入って重さを感じないって言う便利な道具だったかな?」
「恐らく同じだろう」
「ラッキー」
今持ってるバックを詰め込んでバック型の魔導具を装備する
目的の魔導具では無かったが荷物運びに使える優秀な魔導具を手に出来たのはデカい
部屋にあった下に降りる階段を降りる
「避けろ」
「えっ? うわおっ」
ベルが言った直後、カエデ目掛けて物凄い速度で矢が飛んできてギリギリで避ける
「危ないなぁ」
「遺跡やダンジョンには罠がある。注意しろ」
何個か矢が飛んできたがベルは回避すらせず受ける
纏っている高密度の魔力が矢を当たる直前で防ぎ矢は地面に落ちる
ベルの真後ろにカエデは移動して隠れるように進む
次の階層から周りの見た目が変わる
階段を降り切ると壁や天井に埋め込まれた線状の何かが緑色に光り出し辺りを照らす
今までのような石のような材質とは違い鉄のような材質の物体で作られた部屋であった
「何これ凄い! 古代技術みたいな?」
壁に触れるとひんやり冷たい
「冷たっ!」
「これは我も知らん。こんな技術聞いた事も無い」
長く生きるベルでも聞いた事の無い技術
少なくともこの技術が今も残っていれば今以上に文明は形を変えて発達していただろう
(彼女なら分かるのかな? これが彼女の言ってた科学都市なのかな?)
この部屋を見てからカエデが心の中で言っていた科学と言う言葉が引っかかる
この世界に産まれてからの記憶しかない裏のカエデはその科学と言う物については詳しくないが現在の技術より高い技術を持つと言う事は心の中で言っていたのを記憶している
「これ鉄だよね?」
「恐らくな。……これは扉か?」
周りの壁と一部の形が違い人が通れる程度の大きさで丁度真ん中に切れ込みがあり木製の扉と似たような印象を与える
手前に引っ張る取っ手が無いので軽く押して開けようとするかビクともしない
「動かん」
「取っ手も無いから引っ張れないし……どうやって開けるんだろ?」
「開かないのなら壊せばいい」
空気を圧縮して魔力を込めた斬撃を放つが壁に当たると同時に斬撃は霧散する
「何!?」
鋼鉄製の扉に傷一つ付かない
カエデが助走をつけて全力で微量の魔力を纏った拳を振るう
大きな音を立てるが扉はビクともしない
衝撃でカエデの腕の骨が折れる
「痛くないけど痛っい! 凄い硬いねぇ。この扉魔力は込められてないよね?」
のそのそと後を着いてきていた骸骨が治癒魔術を使い腕を治す
腕を動かしてしっかり治ったか確認する
「少し待て」
超級魔術のプロミネンスを発動し扉に放つ
魔法陣から出た小さな炎が扉に当たると広がることもなく消滅する
「あれぇ!? 炎が消えた!?」
「どうやらこの扉、いやこの部屋を構成する物質は魔力に干渉するようだ」
「干渉? もしかしてここだと魔力が使えないとか?」
「いや、魔力操作や魔術の発動には問題は無い。魔力に干渉するのは物体に魔力が触れた場合か……」
「うーん、多分魔力が触れるだけなら大丈夫だよ?」
「何?」
「だって今も床に触れてるけどセーフだし殴った時さっきの魔術みたいに魔力消えてないから」
ベルは高密度の魔力を纏っている、壁に触れて確認するが何も起きない
「なら触れた魔術に対してか」
「そもそもベル、魔物だよね? 魔力で出来てるから魔力その物を消滅させるなら入った瞬間に消えてたと思うよ?」
魔物は魔力の塊、触れた魔力そのものに干渉して消滅させるのなら入った時点でベルは最低でも足首辺りまでは失っていた
「それもそうか、これなら差程影響は無いな」
「そうだねぇ……この扉どうやって開くんだろ?」
「殴るか」
「さっき私腕折れたよ?」
「貴様とは纏う魔力の質と量が違う」
ベルは拳を振るう、ドゴンと音を立てて扉の殴った部分が凹む
「数発で壊せるな」
「わぁお……」
見た目は身長もあって子供だが本性は1級の魔物
その拳は容易く石や鎧を砕き人体を貫く程の威力を持つ
その拳は身体能力の高いカエデの拳よりも強い
数回殴りつけるとどんどん鋼鉄の扉の凹みが大きくなり扉は限界を迎えて最後の一撃で扉は吹き飛ぶ
部屋と同じような鋼鉄で出来た通路が続いている
緑色の光が発生している線も続いている
カエデはベルが吹き飛ばした扉を確認する
だいぶ厚い扉が物の見事に原型を留めていない
(私が言えたことじゃないけどベルだいぶ脳筋だなぁ)
大半の魔物は知性や知能を持ち合わせて居らず弱い魔物は強い魔物に食われる
そんな魔物の中で最上位に君臨する魔物、知性や知能があっても本能で動く事が多く立ちはだかる壁は全て力で薙ぎ払ってきた
その結果ベルは取り敢えず力づくで突破しようとする脳筋寄りの思考をしている
「どうした来ないのか」
「行くー!」
鋼鉄の通路を進む
道はかなり入り組んでいる
扉を見つけたら殴って壊して部屋に入る
(壊さず開く方法は探さないんだねまぁ楽だから良いけど……)
部屋の中にはベットや棚などが置いてあり生活感のある部屋でここ最近まで使われていたような形跡がある
「もしかして遺跡に人が生活してる?」
「2級の魔物が生息しているような場所だ。人が生活出来るような場所では無い」
ホコリも少なく定期的に清掃をしている者が居ると思えるほど部屋は綺麗
「3級位の魔物が生息する所に研究所立てて住んでる人が居るとは聞いたよ」
「なんだその変人は」
魔物が生息するような場所で生活するような人間は基本的に変人である
(そう合えばその人魔術師だしワンチャン異系魔術知ってるかな?)
「アルドシアって人なんだけど」
「あの魔術師か」
「知ってるの?」
「40年ほど前にあの洞窟に入ってきた者だ。奴は強い人間だった」
アルドシアはベルとの戦いで勝てこそしなかったが五体満足で生還した唯一の人間
「まだ生きていたとはな」
「生きてるけどもうそんな長生き出来ないかもって聞いてる」
「あれほどの人間を失うのは勿体無いな」
部屋を出て通路を歩く
進んでも景色はほぼ変わらず進んでいる実感がない
曲がり道や別れ道を通って探索する
「あれ?」
進んでいると何かの破片と空いている部屋を見つける
近づくと無惨に破壊された扉が転がっていて見覚えのある部屋があった
「先程の部屋だな」
「だね……えっ? もしかして一周した?」
「ここまでの部屋に次の階層への道は無かった。ここが最下層か? 魔物も見かけなかったな」
「魔導具の一つもなかったよ!?」
「上の階層で手に入れたバックだけの可能性はあるな」
「確かにこの魔導具便利だけど……割に合わなくない?」
強い魔物が生息するような高難易度の遺跡で手に入ったのは今までにも見つけられている魔導具のみ
「割に合う方が珍しい。もう少し調べるか」
暫く歩き新しく見つけた部屋の扉を壊して探索する
魔導具や金目の物は見つからず収穫は何も無い
「仕方ない帰るぞ」
「はーい」
帰る為に来た道を進むが一向に階段のあった最初の部屋に着かない
何個も扉を壊した部屋を通る
「……迷子?」
「どうなっている?」
「道が分かりづらいから今何処にいるのかとかわからないもんねぇ」
暫く最初の部屋を探して彷徨うが一向に見つからない
「なんだと……」
「これは……迷子だね」
「まさかこの我が迷うだと……」
「いや、君別にこの場所に詳しくないでしょ」
「貴様はわかるか?」
「残念ながら全く分からないよ。骸骨君わかる?」
着いてきていた骸骨は首を横に振って分からないと意思表示をする
骸骨を一体追加して最初の部屋に置いておけば迷子の原因が分かったが魔力の消費を抑えたいカエデにその発想は無かった
今更その発想をしたとしても時すでに遅し
「分からないって」
「困るな」
「まぁ歩いていればいずれ着くよ」
1時間以上同じような景色を彷徨う
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