ガーゴイル
サイクロプスを倒した後通路を進むとまた大きな空間が広がっていて今度は二つの道がある
「また魔術使うか?」
「いやぁ、この調子だと時間かかるし適当に選んで行こう。行き止まりだったら戻ればいいし」
「そうか。どちらを行く?」
「左行こう」
2人は左側の通路に入る
遺跡の場合は最下層でなくても所々に魔導具や魔導書が封印されている場合がある
大体そう言う時は罠が仕掛けられていて下手に触れればその罠が起動して命を落とす場合もある
ダンジョンには宝箱があり偶に魔導具が入っているが大体は魔物が擬態している
暫く通路を歩くが魔物に遭遇しない
「居ないなぁ」
「もっと魔物は居ると思っていたのだが」
「これなら攻略楽そうだねぇ」
「奥に進めば進むほど強い魔物が生息している。恐らく2級の中でも強い魔物がこの遺跡の奥に居る」
「君より?」
「それは無い」
そのまま奥まで進むが先は無く行き止まりであった
「よし戻ろう~」
別れ道まで戻ってもう一つの通路を進む
魔物に遭遇すること無く下に降りる階段のある部屋に着く
「あの二体だけだったねぇ」
階段を下って次の階層に向かう
次の階層は周りの見た目は変わらず階段を降りて直ぐにサイクロプスが居た
今回はカエデが前に立ちサイクロプスと戦う
高速で移動して剣で切りかかる
魔力を込めていない剣ではサイクロプスに傷を付けることが出来ない
「あれ……」
攻撃が入らない事に驚いて反応が遅れ棍棒の一撃を食らって吹き飛ばされる
壁に激突して血を吐く
「これは不味いなぁ」
痛覚は無く痛みは感じないが今の一撃で骨が折れている事に気付き治癒魔術の使える骸骨を召喚する
「治癒魔術」
骸骨に命令をして治癒魔術を使わせる
骸骨の治癒魔術で傷が治っていく、ゆっくりと立ち上がり剣に魔力を纏う
何度も切りかかるが纏っている魔力量が少なくろくに傷を付けられない
攻撃に集中していて再び攻撃を喰らい吹き飛ばされる
「全然無理!」
サイクロプスは2級の魔物、その強さは今のカエデではとてもじゃないが勝てる相手では無い
身体能力がバグっている今のカエデでもそれは同じである所か魔力操作の技術に関しては表のカエデの方が高く裏のカエデではあのレベルの魔力操作は出来ず極少量の魔力しか纏えず密度も薄い
再び骸骨の治癒魔術を受けてもう一度戦おうとするカエデに呆れてベルは仕方なく前に出てサイクロプスを一撃で仕留める
「言わば生まれたばかりの存在、高度な魔力の操作が出来る訳が無いか」
裏のカエデはようやくこの世界に生まれたと言っても過言では無い
記憶だけあっても経験はゼロ、表のカエデの持つ知識があったとしてもそれを実戦で使える程簡単な話では無い
技術は特に何年も繰り返し行う事でようやく技術として身に付く物
「行けると思ったんだけどなぁ」
「少なくとも貴様では無い方のカエデとやらは高密度の魔力を纏えていた。同じ肉体であっても魂が違えば変わるという訳か」
「なんたって君を斬れるくらいだからね」
封印が解けて表に出てきた時丁度ベルが最後の一振りで斬られて驚いている所を見ていた
「何故斬られたか分からない。高密度の魔力だけでは我の魔力を斬るなど不可能だ」
「さぁ、なんでだろうね? 私に分かることはあの一振りは彼女の生きていた人生の中で最高の一振りだったってくらい」
表のカエデが死ぬ直前の記憶として残っていた
記憶以外でもあの一振りは死んだ身体が覚えている
剣を握った時の感覚
高密度の魔力を纏った感覚
息を整え無駄の無い動きで剣を振るう感覚
それらは記憶が身体が覚えていて裏のカエデもその感覚を理解している
そしてあのレベルの一振りを自分が振るえない事も理解していた
「もう過ぎた事だ。どうでも良い」
「そうかなぁ。まっ、ベルが良いなら良いか。行こう!」
話を終えて一つしかない通路を進む
ここからはベルに戦闘を任せてカエデは後ろで待機する
戦っても勝てず参戦すれば足手纏いになる
骸骨を召喚して索敵や戦闘は出来るが限られた魔力を使う事になる
その為もうほぼカエデは何も出来ない
(人任せで何も出来ない……私には目的だって無いし身体を奪った奴の願いなんて聞く意味もない。こんな事ならそのまま死んでた方が……)
「どうした?」
「ん? なんでもないよ~。どんどん進もう!」
通路を進みサイクロプスを倒しつつまた大きな部屋に着く
ただその部屋には道は無く部屋の中央には一体の魔物が佇んでいた
尻尾と翼を持つ黒い魔物、翼で身体の殆どが隠れておりその姿は見えないが大きくは無い
「なんかサイクロプスより強そうな魔物だねぇ」
「奴はガーゴイル、2級の魔物であり厄介な魔物だ」
「厄介?」
「2級の中でも頑丈な魔物、奴はサイクロプスよりも強いぞ」
等級が高い魔物は身体を作る魔力が多くなるので相対的に下の等級の魔物より頑丈な魔物が多くなる
サイクロプスは良い例で2級相当の魔力を持つ魔物だからこそ並の魔力や魔術では突破出来ない防御力を持つ
そして目の前にいるガーゴイルは持つ魔力の殆どを身体の構成に使っている
高密度に圧縮された魔力で身体を構成している為2級の中でもトップクラスの頑丈さを持つ魔物、代わりにガーゴイルは魔術の行使が出来ない
ガーゴイルはその場から動かない
「襲ってこないよ?」
「ガーゴイルは守護者、何かを守ってる場合が多い。基本手を出さなければ攻撃してこない」
守っている宝物や通路などを無視すれば無駄に戦わず済む相手
ただ今回は通路の先にある物を守るガーゴイルの為倒さないと通路自体が現れない
「て事はガーゴイルがもし魔導具とか守ってるなら倒さないと手に入らないってこと?」
「そうだ」
「スルーする?」
「魔導具であった場合、目的の物の可能性があるぞ。それにここから先の道その物を守護している可能性もある。見た感じ先に通路が無い」
「ほほう、成程ぉ? えぇっとつまり?」
「どちらにせよ倒すという事だ、貴様は下がっていろ」
ベルは佇むガーゴイルに近付く
するとガーゴイルが目を覚まし翼を広げる
皮膚は黒く痩せ細ったかのような細い胴体と手足、手足の指は鉤爪のように鋭い爪が生えている
顔は人ではなくヤギの頭部のような形をしていて角が生えている
空気の弾丸を放つが軽く傷を付ける程度でその傷も一瞬で治る
素早く爪で襲いかかってくる
ベルは連続で攻撃を仕掛けてくるガーゴイルの攻撃を全て躱して空気を圧縮した斬撃を放つ
不可視の斬撃は命中し傷を負わせるが浅い
「矢張り浅いな」
何度も攻撃をするがダメージは少ない
攻撃を受けながら突っ込んでくるガーゴイルの猛攻を凌ぐ
「魔術は使わないの?」
「少し黙れ」
「はーい」
「業火よ眼前の敵を焼き払え」
魔術の詠唱を始める、頭上に大きな一つの魔法陣が現れる
攻撃を避けながら詠唱を続ける
「その姿を大きく恐ろしく身を踊らせろ、何人も防げぬ程の灼熱を我が前に、プロミネンス」
詠唱が終わり魔術名を言うと魔法陣から小さな炎が現れてガーゴイルに向かってゆっくりと飛んでいく
ガーゴイルは飛び退き炎が近づいてきたら爪で引き裂く
すると炎が爆発したかのように突如広がりガーゴイルを包み込みその身体を燃やし始める
焼かれている痛みで苦しみ暴れる、
炎は消えること無くむしろどんどん強くなっていきやがてガーゴイルを焼き尽くす
ガーゴイルだった物が消えて魔石が落ちる
魔術は下級、中級、上級と等級が上がっていく事に魔力の消費詠唱の長さなどが増えていく(詠唱の長さは物による)
プロミネンスは超級魔術という上級の更に上の魔術の一つ、大量の魔力を使う分その威力は上級の数倍はあるとされている
人の中には超級魔術を使える者は居ないと言われる程習得難易度が高く使えたとしても持つ魔力のほぼ全部をつぎ込む程の魔力を要求される
「開いたか」
ガーゴイルを倒した事で隠れていた通路が現れ二人は通路の先に進む
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