旅の始まり
まず二人で生き返るには何が必要か考える
大きな部屋の中央、魔導具の隣で座って話す
本来の魂のカエデは体操座り
座るのに邪魔4枚の翼を仕舞った1級の魔物ベルリールフェルグライズことベルは可愛らしくペタン座りをしている
「死という概念を覆す力」
カエデが既に死んでいるという事は決まっている
となれば死を覆す事が必要となるとベルは考えている
「多分ねそんな難しい話じゃないんだよね。まず血でしょ。それから血を操る魔術と多分雷系の魔術で行けるかな?」
「雷系魔術であればすぐに習得可能だ。血を操るか……確か前に見た事があるな」
魔術の事についてはベルはかなり博識である
この部屋から出たことの無いベルがどうやって新しい魔術などを知っているかは謎である
出処不明の情報でも今はかなり役に立つ
「ほんと!」
「たった100年前の話だ」
「100年かぁ……それはたったでは無いんだよねぇ」
「そう言えば人間は100年程度も生きられない脆弱な種族だったな」
「100年生きられる種族ってそんな居ないと思うんだけどなぁ……まぁ100年前ならワンチャン手がかりあるかな」
「魔導書に記されている可能性はあるが異系魔術であった場合、習得は不可能に近い」
「多分異系なんだよねぇ」
異系魔術は原理不明で現代の魔術技術では解明が出来ていない
それを半年で習得するのは困難を極める
魔導書となれば人前に出る必要がある
「魔術の刻まれた素材を使って作る装備とか?」
「血を操る魔物なぞ聞いた事は無い」
「なら魔導具!」
「そのような魔術の魔導具を聞いた事は無いがまだ掘り出されていないとも考えられる。少なくとも異系魔術習得よりは可能性は高い」
「それじゃダンジョンか遺跡に行こう」
魔導具であればダンジョン、遺跡などで新しく見つかる事がある
魔導具自体レアな上目的の魔導具である確率はかなり低いが半年以内に原理不明とされる異系魔術を習得するよりはまだ希望が持てる
「それで近くにダンジョンか遺跡はあるの?」
「ここは王都に近い、付近の遺跡は殆ど掘り起こされている」
「それじゃ遠く? まぁ他国なら隠れずに済むから楽だけど……」
「話は終わっていないぞ」
「ん?」
「付近にたった一つだけ高難易度と呼ばれる遺跡がある。あそこはまだ攻略されてないはずだ」
エルティ森林の中央にその遺跡は存在する
その遺跡の中には強い魔物が蠢いていて未だに攻略した者が居ない遺跡
攻略した者が居ない遺跡なら攻略された遺跡やダンジョンに比べて魔導具がある可能性が高い
それも等級の高い魔物の出現する遺跡やダンジョンほど強い魔導具が手に入る
「高難易度?」
「2級相当の迷宮遺跡」
「それって勝てる?」
「余裕だが?」
ベルの等級は1級、2級程度は余裕も余裕で攻略出来る
そのベルの攻撃を避けてベルの認識できない速度で移動し異系魔術
それも骸骨は一体一体が強い
2級の遺跡の難易度は準備万端のアレックスが4人に分身してクリアできるかどうか位の難易度
余談だがそのアレックスは激怒したカレンに全力でぶん殴られる
「それじゃ向かおう。何処にあるの?」
「この森林の中心」
「思っていたよりも凄い近い」
「ここからなら徒歩で数十分と言った所だ。最も我は一瞬で着くが」
「ゆっくり歩こうよ~。そう急いでもあれだし」
「貴様は自らの命が半年な事忘れてるのか?」
「それはそれ、話そうよ~」
「雑談をする気は無い」
立ち上がり歩いていく
土が掃けて別の道が開く、来た道よりも広く曲がっても居らず真っ直ぐ出口まで続いている
急いで移動する気のないカエデを置いて行く訳にも行かずベルも徒歩で向かう
「幾つもあったんだね」
「貴様ら人間用の道は一番長くここが一番外に近い」
「成程~」
カエデはベルに着いて行く
「ねぇ君って何歳? 性別はどっち?」
その間も話しかけるが無視される
10分足らずで外に着く、外は崖、入っていた入口の近くであった
冒険者などにバレないようにすぐに道を塞いで森の中に入る
少し進むと崖が登れる部分がありカエデは自力で登りベルは翼で飛翔する
「それは狡過ぎない」
「使える物を使っただけだ。己の力でも無い武器を使う人間にだけ言われたくない」
「むー、武器はあっても人間には翼はないんですー」
「知るか」
崖を登り翼を仕舞って森の奥へ進む
数十分で遺跡に着く
何かの石を加工して作られた古びて半壊している柱、瓦礫の山、何かの建物の入口であったと思われる門
手入れなどされていないボロボロの建物
「迷宮があるのは地下?」
「あぁ、地下にある。そしてここが地下に行く階段だ」
門を通って門と同じ材質で出来たボロボロの床を歩いて剥き出しになった下に続く石の階段を見つける
階段の先へ向かう
先は松明が壁に置いてあり火が未だに付いている
松明のお陰で明るく順調に階段を降りる
石の階段を一歩進む度に音が響く
「うへぇ響くねぇ」
「この先に大きな空間がある」
「なんで分かるの?」
「音の反響だ」
ベルの言う通り大きな空間があった
作りは外に使われていた材質と同じ物が数え切れない程大量に使われている
大きな空間の先に3つの大きな通路があり奥に続いている
「これは迷いそう」
「この先は我も知らん。さて、どうするか」
「こういうのは人海戦術って奴で行こう」
魔術の詠唱を始める
足元の影が広がり大量の骸骨が這い上がってくる
身体を操っている魔術と同じだが骸骨の召喚には別で詠唱が必要となる
「それじゃヨロシク!」
骸骨は三手に別れてそれぞれ道に入っていく
「我々は待つのか?」
「うん、待つ」
カエデはその場に座り込んで待機する
ベルは暫く立っていたが時間がかかると考えて座り込む
(戦闘入ったね)
ベルが座った後暫く待機していると何かに気付いた座っていたカエデが立ち上がる
「どうした?」
「右側の通路に行った骸骨がやられた」
魔術の効果で骸骨の数と位置、状況を常に把握していて骸骨が戦闘していたり撃破されると分かる
索敵に使えて戦闘力もある上、魔術発動者の命令を聞き意思がある為状況次第では自ら動く事もあるかなり便利な魔術
「ほう、あの骸骨がか」
「ここの魔物強いみたいだね」
「仮にも2級だからな」
骸骨の強さはピンキリではあるが大体が2級相当の実力
骸骨の強さは元からの力と不死という点
何度倒しても骨を砕いても魔術の効果で身体は治り何度も立ち上がる事が出来る
但し復活する度に多少の魔力を消費する、復活させるかどうかは任意で決められる
つまり骸骨を召喚して倒れれば倒れるほど身体を操れる期間が減っていく
「魔術の使用は魔力が減るぞ」
「数回程度ならそんな減らないから、と言うかそれは発動前に言って欲しいかな!?」
「……今思い出したが魔力ならポーションとやらを使えばいいだろ?」
「無視は酷くない……?」
傷を回復するポーションの他に魔力を回復するポーションもある
「ポーションはね多分効かないんじゃないかな? この身体は死んでる訳だし」
本来なら高額の魔力回復のポーションを使えば魔力を回復出来るのだがカエデの体は死んでいる為その効果を得られない
「そうか、行くぞ」
右側の通路に入っていき骸骨がやられた所に向かう
「あっ、全滅した」
右側の通路に送っていた骸骨の集団が魔物に敗北し全滅する、カエデは骸骨を復活はさせず影の中に戻す
「そろそろ」
数分歩き骸骨がやられた場所に付く
通路の途中に大きな魔物が居る
一つ目の緑色の大男、手には大きな棍棒を持っている
恐らくこの棍棒で骸骨達は叩き潰されたのだろう
「大きいなぁ」
「サイクロプス、2級の魔物だ」
二人に気付くとサイクロプスは雄叫びを上げて襲いかかってくる
棍棒で攻撃を仕掛けてくるが二人は軽々と後ろに飛び退き回避する
棍棒は床に勢いよく叩き付けられ衝撃で風が巻き起こる
「だいぶ凄い一撃だねぇ、これじゃ骸骨もやられるのも分かる」
「力は強くとも遅過ぎる」
ベルは片手を前に出して人差し指を向ける
魔力で空気を圧縮して高速で放つ、不可視の弾丸
見えない上速く貫通力が高い、並の人間や魔物では回避も防御も許されない
魔術は無い攻撃方法、ベルの得意技の一つであり使い勝手が良く好んで使う
サイクロプスはその巨体故に動きは遅い、反応出来ずに頭蓋を撃ち抜かれて黒いモヤとなって霧散する
魔石が落ちる、2級とだけあって大きい
「大きいなぁ。このバック2個入るかな?」
「人間は不便だな。貸せ」
魔石をカエデから受け取るとベルは魔術で開いた異空間に放り投げる
「何それ魔術!?」
「我の持つ異系魔術は空間干渉の魔術だ。魔石は異空間に入れた」
戦闘の時に見せた目に見えない移動は魔術によって空間に干渉する事で可能とした瞬間移動であった
「便利だね!」
「あぁ、便利な魔術だ。進むぞ」
先に進むとまたサイクロプスに遭遇する
サイクロプスが気づく前にベルが一撃で仕留め魔石を異空間に放り投げる
「どうした?」
カエデが不満そうにしている
「私も戦いたい!」
戦闘と言う戦闘をした事の無いカエデは戦いに興味がある
「好きにしろ」
ため息をついて返答をする
ベルはさっさと進む為にサイクロプスを倒したが戦うことには興味が無い
「なら次私ね」
「後の戦い全部貴様がやればいい。我は雑魚との戦いになぞ興味は無い」
「それは疲れるからやだ~」
我儘を言うカエデに冷たい眼差しを向ける
カエデは冷たい眼差しを向けるべルに首を傾げる
「早く行くぞ」
「うん!」
二人は迷宮を進んでいく
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