アゼの実

最後の一体を倒しその場に座り込む

(ダメだ暫く動けねぇ。アドレナリンでも出てたのな。ただもう少し持っても良くないか)

疲れと痛みで暫く立てない

二人共治癒魔術は使えずポーションも持っていない

カエデが座っている間にカレンは倒した魔物の魔石を回収していく


「あっ、素材落ちてたよ。また角だね」


落ちた角をポケットに突っ込む


「おぉ、またなんか武器作ってもらおうかな。金があればだけど」

「その斧凄いよね。あの戦闘で刃こぼれ1つしないんだね」

「本当に凄い、この武器無かったら最悪今回死んでたよ……元々持ってた剣は壊れたし」


だいぶ乱暴に扱ったにも関わらず刃こぼれ1つしないホーンディアの斧

(耐久性に優れている素材も使ってるって言ってたけど凄いなぁ)

王国でも1.2を争う技術を持つ者が作った武器とはカエデは知らない


「剣拾っといたよ」

「ありがと、てかアゼの実めっちゃ生ってるね」

「そうだね。ここのだけで依頼分は足りそうだね」

「それは助かる。もう探す体力も無いし重い一撃受けて戦闘もキツい」

「休んでていいよ」


折れた剣を受け取る

カレンはアゼの実を依頼分だけ大木からもぎ取る

二人では取り切れないほど大木にはアゼの実は生っている


「追加報酬分までは流石に持って帰れないかも」


魔導具にしまっている武器と魔石を入れる用の小さな袋以外は何も持っていない、採取に来たのに物を入れるバックも持っていない

二人はアゼの実を素手で持って帰るつもりである

アカムソウは魔石を入れる用の袋に詰め込んでいるがアゼの実は入らない

知っているアゼの実より大きく想定より数を持てないが依頼分はなんとか持てる


「このアゼの実大きいなぁ。この大きさは村じゃ見た事ないな」

「そうだね、王都だとこれが当たり前なのかな?」

「環境違うと育ち方とかも違うって言うしそうかもね。バック買っておけばよかった……」

「帰ったらバック買わないとね。出来れば収納用の魔導具欲しいけど無いよね~」

「収納用の魔導具? この腕輪みたいな?」


カエデは自分が付けている腕輪を指で差す

カレンは同意の意味で頷きどういう魔導具が説明する


「収納用の魔導具って幾つかあるんだけどそのうちの一つは見た目が小さいバックなのに大量に物が入って入れた物の重さを感じないんだって」

「何それ便利すぎる。荷物多いと持ち運ぶのキツイんだよね。大きいバックを買うにしても持ち運びがぁ」


大きいバックを持つと色んな物を持ち運ぶ時に使えるが咄嗟の時に行動に影響が出る

小さいと行動に影響は少ないが持ち運べる物はかなり限られてしまう

(小さくても良いとは思うけど傷薬とか大量に持ち運びたいなぁ)


「私は魔術師だし大きなバックでもそこまで影響はないかな。サーチもあるし」


支援系魔術サーチで基本的には魔物の接近にいち早く気付くことが出来る


「多分重いよ?」

「そんな大量に道具を持ち運ぶ事は無いと思うしもし大量に持ち運んで重くなりそうならカエデちゃんが持つ?」

「そうだね、そういう時は力のある私の方が持つかな。魔物が出たりしたら流石にその場に下ろすして戦うけど……」

「それでいいと思う」


暫く休憩して痛みもだいぶマシになり体力も回復したカエデは立ち上がる


「よし回復した。帰ろう」

「うん、帰ろう」


アゼの実を抱えて王都へ向かう

落とさないように慎重に進む

依頼の内容は良品のみつまり変な傷が付いたりしたらそれはカウントに入らない

道中魔物に会うことも無く城門付近まで行ける

門番に冒険者カードを見せる

犯罪行為などは一切していないカエデだが門番が確認していて許可が降りるまでの数秒の間が緊張する


「よし通っていいぞ」


問題無く通る事が出来る

安堵の息を漏らす


「こういうの緊張するなぁ」

「そう?」

「しない?」

「しないかな」

「まじかぁ」


ギルドに戻り受付に向かう

受付嬢は入ってきた二人に気づいた後手に持つアゼの実を見て驚いている


「それは大木に生っていたアゼの実ですよね?」

「はい、そうですがダメでした?」

「い、いえ、そうでは無くて……その大木の付近には5級の魔物が居ませんでしたか?」

「あぁいましたよ」

「どうやって取ったんですか?」

「周りの魔物全員倒して取りました」

「はい?」

「魔物を倒しました。これが証拠の魔石です」


アゼの実を机に置いてから袋から魔石とアカムソウを取り出して机に置く


「この数を!? 二人で?」


新米冒険者が5級の魔物を倒したという話はごく稀にあるが複数体を倒したという話は聞いた事は無い

冒険者になる前から鍛えている人なら不可能では無いがそう言った人達は5級魔物を倒す前にさっさと依頼を済ませてランクが上げている


「本当は離れようとしたんですけどね。バレちゃって戦闘になって何とか」


(まぁ殆どカレンのお陰なんだけども)

魔術による削りと足止め、それが無ければ勝ち目は無かった

カエデの力を最大に発揮出来る魔物との1対1もカレンという後衛が居なければ出来なかった

倒した数自体はカエデの方が多い


「確かお二人は修理費分を引いて計算するんですよね?」

「そうです」

「何割か決めれますがどうします?」

「どうする?」

「早めに払いきった方がいいから多めにしよう。五割?」

「今回予定より稼げたし五割でいいかも」

「分かりました」

「ちなみにこれで後どのくらいになります?」

「計算してみます」


(払い切れたりしないかな)

受付嬢はメモに計算を書いている

(まぁ電卓とか無いよねぇてか字書くの早っ!?)

凄い速い速度で数字を書いて計算をしている

数分すると受付嬢は計算を終えて二人の方を向く


「今回採取依頼のアゼの実、アカムソウの確認が取れアカムソウに関しては20個、追加報酬が発生します。そして倒した魔物は4等級の依頼にあった討伐依頼の内容ですのでその依頼の報酬分も上乗せしてみたところ、残りは三割と言った所です」


今回で七割払った事になる

4等級の依頼の報酬上乗せと5級の魔石の金額が大きかった


「それならその分も払い切ります」

「でしたら八割頂いて二割をお渡しします」

「それでお願いします」

「よし借金無くなった」

「昨日の今日で払いきったか。どんな依頼を受けたんだ? てか仮免許だよな?」


アレックスが会話を聞いて近寄ってきていた


「アゼの実のある大木に居た5級の魔物を倒しました」

「あぁなるほど、それでか。4等級の依頼達成かそれならもう6級に上げてもいいかもな。いや5級でも良い」

「本当ですか!?」

「ただこの依頼を達成したらが条件だがな」


二人に依頼書を見せる

5等級の依頼書であり内容は5級の魔物の討伐依頼

数は一体

依頼は受けてから半月の期間がある

(5級一体なら余裕だと思うんだけど……)


「受けるか?」

「受けます!」

「依頼は受けてから1ヶ月……時間あるからカエデちゃん準備整えて向かおう」

「そうだね、場所はエルティ洞窟? この洞窟は何処にあるんですか?」

「エルティ洞窟はエルティ森林の奥にある洞窟です。森林には獣道があって真っ直ぐ進めば着きます」

「成程、わかりました。ありがとうございます」


アレックスからの依頼を受ける

達成すれば5級、こんなチャンス逃す訳には行かない

6級から5級に上がるには実績を積まないとならず幾つもの依頼をこなさないと行けない

普通にやれば上がれるのがいつになるか分からない


「今日は他に依頼は受けますか?」

「いえ、魔物との戦闘で攻撃受けましてそれに買いたい物もありますから」

「無理はするなよ。実力はあっても無理をすれば全力を出せずに魔物に負ける事もある」

「はい、分かってます」


村に居た時ライアンから何度も聞いていた言葉

それをカエデは肝に銘じていた

報酬の二割を貰いギルドを出る

二割でも本来の採取依頼の報酬以上に手に入っている


「バック買おう。道具屋かな? 後鍛冶屋行ってけん買いたい」

「多分道具屋に売ってると思うよ。剣折れちゃったもんね。作ってもらう?」

「それは見積もりを確認して考えるかな。やっぱ魔物素材の武器が良いけど……高そうだし」

「高そうだよねぇ」


バックを道具屋に買いに行く

道具屋に入りバックを探す

傷薬や包帯などが大量に並んでいる、ポーションも数本置いてあるが値段が高い


「纏めて包帯とかも買うか」

「そうだね、バックは……あった。色々サイズあるね」


様々な大きさをしたバックがずらりと棚に並んでいる

(人によっての欲しいサイズは変わるからこのくらいあった方が助かるか。ガンガって人みたいな大男も居る訳だし)

カエデは小さい方のバックを見る

背負うタイプや肩に掛けるタイプなど複数の種類も置いてある


「ふむ……悩むなぁ」

「私はこのサイズかな」


カレンは自分の身長に合う大きいバックを持つ

身長に合うサイズなので若干容量は制限されるが小さいバックに比べてばかなり入る物

バック自体は軽量で大きくても楽に持ち運べる、その上耐久性が高く重い物を入れても破れない

冒険者が使うなら多少の傷を負っても使えるような頑丈な物でないと売れない


「おぉ結構入りそうだし良いね」


20分近くバックの前で悩み唸る

唸るカエデを置いてカレンは傷薬や包帯が並ぶ棚を見て買う物を探す


「私はこのサイズかな~?」


肩に掛けるタイプのバック、行動に邪魔にならない程度の大きさを選ぶ

小さいバックの値段は安く大きいほど値段が上がる


「カレン決めたよー」

「こっちも一通り傷薬とか包帯選んどいたよ。そっちのバックにも何個か入れておこう」

「纏めて大きい方に入れた方が良くない?」

「傷負って尚且つこっちのバックが破損した時に困持ってた方が良いでしょ?」

「あぁそういう事も有り得るか」


傷薬、包帯、バックを購入する

想定より安く済み先程得た報酬分以内で収まった

道具屋を出て鍛冶屋に向かう

道具屋から近くすぐに着き扉を開けて中に入る

すると冒険者が何人か居て武器を選んでいる


「おぉ嬢ちゃんか。どうした?」


若い男性が二人に気づき声をかける

斧を受け取りに来た際に対応した男性だ


「剣の代わりが欲しくて」


折れた剣を見せる

剣を受け取り見るが一つ疑問が浮かぶ


「剣? あれ斧は使ってないのか?」


斧を受け取った時に居たからカエデがホーンディアの斧を持っている事を男性は知っている


「斧も使ってます。ただ今日戦った魔物は斧で戦うには相性が悪くて剣を使ったら折れました」

「あぁ成程、ホーンディアみたいな魔物かな? あいつらの角硬すぎて斧でも相当の威力を叩き込まないと厳しいんだよな」

「はい、それで軽量の剣を試したら攻撃を受けた際に……」

「成程な、それで市販の武器を買うか? それともオーダーメイドか?」

「オーダーメイドの場合幾らになります?」

「細かなサイズの注文なら銀貨一枚で特殊な形、機能の武器の注文なら銀貨5枚、魔物素材を利用して作る武器なら大銀貨だな。そして時間は細かなサイズの注文と魔物素材武器の注文は数日、特殊な形や機能の注文なら半月くらいになるな」

「あれ思ったより安い」

「うん? あぁ爺さんが作るなら小金貨5枚~金貨一枚くらいかな。あの斧は多分金貨一枚かな」

「高っ」


(あの人そんな高いの払ってくれたの……? えぇ)

今になって斧の値段を知り驚く

高いとは思っていたがそこまでとは思っていなかった

今持つ金では到底買える物では無い、それどころか普通に稼ぐには高い等級の依頼を幾つもこなさないと届かないレベルの金額である


「入学試験はどうだった?」


奥の部屋から老人が現れる

手に持つ武器を棚に置いて近くに来る


「合格しました!」

「私も合格しました」

「それは良い。彼奴も喜んでいるだろう。それで剣が欲しいのか?」

「はい、ただオーダーメイドは無理そうなので市販の剣を買います。予備の武器なので」

「ふむ、魔物の素材はあるのか?」

「はい、ホーンディアに似てる魔物の角です」


ポケットから取り出して見せる

老人は受け取り角を確認する


「これはホーンディアの亜種の角だな」

「亜種?」

「姿形は似てるが別物の魔物の事だ。こいつはレアなのだがな。どこで見つけた?」


亜種は姿形が似ていて基本は強さも同じくらいだが攻撃方法が全く異なる事がある厄介な敵

魔力量が違い等級も異なる場合がある、ウルフナイトも元は二足歩行の獣型の魔物の亜種として扱われていた


「アゼの実の大木の前に陣取ってました。それを倒したら1本だけ落としてまして」

「あぁ、アゼの大木の魔物か。新米や6級、5級冒険者まで何人も被害被ってた」


(それは先知りたかったなぁ……倒せたからいいけど)

5級の魔物が複数体居たがそれは本来5等級の依頼であったが5級冒険者が何人も依頼を失敗していてその結果5級冒険者では達成出来ないとして4等級に上がっていた


「これなら良い剣が作れるぞ。数日時間をくれ」

「あの……お金が無いんですがそれに予備ですし」

「あの斧以来仕事が無くてな、腕が鈍らないように良い武器を打ちたいのじゃ。金は請求せん、予備でも万全な方が良いじゃろ?」

「……それならお願いします」

「任せておけ」


角を持って奥の部屋に消えていく

その姿を見届けて男性はため息をつく


「相変わらず自由な爺さんだ。遅くても3日後には出来てるはずだから3日後また来てくれ」

「は、はい分かりました」


(苦労が滲み出てるため息だったな)

鍛冶屋を出て用が済んだので宿に戻る

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