採取依頼

翌日朝のルーティンの筋トレをこなす

前世では筋トレはしていなかったが今世では毎日必ずこなしている


「おはようー」

「おぉ起きたか。ギルドで早く行って依頼を受けるぞー」

「もっとゆっくり~」


カレンは眠そうに布団に再び潜っていく

カエデは布団を引っ張る、カレンは尋常ではない力で布団を掴んで離さない

このままだと布団が破れかねないため手を離す


「起きたんだから起きろ~」

「あと5時間」

「長い! 5分なら待つ!」


5分後無理やり起こして支度を手伝って宿で朝食を取る

昨日とは違うメニューが出される

(見たことない食べ物)

カレンはまだ眠いらしくウトウトしている

フォークを持とうとして机をガシガシ掴んでいるくらいには寝惚けている


「そんな眠い? これ美味いぞ」

「昨日は色々あったからね。少し眠れなくて」

「あぁ確かに色々あったね……昨日は本当に色々ありすぎたね」

「もう少しで目が開きそう」

「まだ開いてなかったのか」


数分後目を開けたカレンと会話をしながら朝食を取る

朝食を済ませてギルドに向かう


「アルドシアさんに会うためにも強くならないとな」

「そうだね。訓練もつけて欲しいから早く3級の魔物を倒せるようにならないとね!」


しっかり目が覚めて元気になったカレンは言う

ギルド長のアレックスの話によれば研究所付近には3級相当の魔物が生息している


「あぁ確かに魔術師の技術を学ぶには丁度良さそうだよね」


(アルスさんから学べればいいけど……騎士団の団長は忙しいだろうし頼んでも流石に断られそう)

研究所に籠っているアルドシアと違ってアルスは騎士団の団長、日々多くの職務をこなしている


「うん、多分才能だけじゃなくて技術が優れてるんだと思うから同時発動使えると思うからその辺も学びたい」

「まぁ強いなら使えるよね」


会話中にギルドに着く

冒険者ギルドの扉を開き中に入ると視線を向けられるがすぐに一部以外の視線は元に戻る


「ガンガを圧倒した子でしょあの子」

「そうらしいな。相方の方も強いのか?」

「そっちは参加してないからわからんな」


(まぁ音がすればそっち見るよね……てか結構朝早いのに人多いなぁ)

今日は絡まれることなく受付に着き受付嬢に話しかけると受付嬢は笑顔で対応する


「すみません」

「はい、どうかしましたか?」

「昨日ギルド長と話した時に今日来れば仮免許貰えるようにしておくって言われて来たんですが」

「お二人はカエデさんとカレンさんでよろしいですか?」

「はい、そうです」

「ギルド長から話は聞いています。これが仮免許用の冒険者カードです。無くしたら再発行となって数日は依頼を受けれなくなるのでお気をつけて」


二枚のカードを渡される

冒険者(仮)と書いてありそれぞれ二人の名前が記されてる

(冒険者用の身分証明書か。身分証明が出来る物があるのは助かるな)

この冒険者カードは冒険者にとってかなり重要で本来は城門を通る際に人数分の通行料を支払うことになるが城門に居る門番に見せれば通行料を払わずに中に入れる

魔術学園の生徒にも似たような物が配られる


「依頼を数回達成すれば等級が上がります」

「早速受けたいです。どういう依頼なら受けれるんですか?」

「仮の場合は……採取依頼ですかね。魔物は6級以降なので」

「何を採取する依頼ですか?」

「今あるのはアゼの実の採取とアカムソウの採取です、見た目を見せますので少し待ってくださいね」

「大丈夫です、その2つなら村で採取したことあるので」


村に居た時周辺に生えてる薬草を採取していた

その中にアゼの実とアカムソウもあった、アゼの実は傷薬にアカムソウは傷口を縛る包帯になる

魔術があるとはいえ治癒魔術は全員が使える訳でも無く治癒魔術を使えても軽度の傷にまで魔力を使うことは少なくその場合は傷薬などを使う為需要は多いが何せ報酬が少ない為受ける人が少ない

魔物が倒せるようになるまでの餓死を凌ぐ方法と言われる始末

ポーションと呼ばれる道具の場合ある程度の傷であればその場で完治するがポーションに使う材料が貴重で多くは作れず市場に流れる事が少ない


「分かりました。生えている場所はエルティ森林、王都の付近にある森の中に生えています。数は最低10個ずつ、品質は良品に限られます。各20個までは追加報酬がありますが21個目からは報酬の加算はされませんので注意を」


受付嬢は地図を開いて指で場所を指して説明する

数に制限を設けているのは取りすぎると周囲の生態系に影響が出てしまうのと採取しまくって報酬の荒稼ぎが可能だからである


「成程ぉ」

「森には6級魔物が生息しているのでお気をつけて」


採取依頼をこなす最中に魔物と遭遇する事はよくありそれで怪我をして帰ってくる新米冒険者が後を絶たない


「もし魔物と遭遇して倒した場合、魔石はどうすればいいんです?」

「魔石と不要な素材は受付に渡して貰えればお金と交換出来ます」

「冒険者になる前に得た物も交換出来ますか?」

「はい、大丈夫です」


ホーンディアと6級魔物の魔石を机に並べる

魔石の数と5級の魔石を見て一度驚くが昨日の出来事を聞いていた受付嬢は納得する


「6級と5級の魔石……はい、分かりました。この数なら……この金額になります」


お金を手渡される

(おっ、想像より手に入った。5級が混じってたからかな)

6級は数を倒していたとしてもそんなに稼げないが5級になると6級とはだいぶ変わる


「依頼が終わったら受付に採取した物を渡してこちらで確認が終わったら報酬を渡す流れになります。これで説明は終わりですがなにか質問はありますか?」

「いえ、ありません」

「それでは行ってらっしゃいませ」


二人はギルドを出てエルティ森林に向かう

エルティ森林は城門を抜けて30分程度で着く所にあり6級の魔物くらいしか居ないため新米冒険者の狩り場として有名である


「この辺に生えてるかな?」


森に入口付近で周りを見渡す

様々な実や薬草が生えているが目的の物は見つからない

アゼの実は木の実で木に生っている。分かりやすい色で遠くからでも見つけられる


「無いね」

「無いね……森の入口付近に結構生えてる印象だったけど森が違うと生える場所違うのかな」

「周辺探してなかったら奥入って見よう」

「そうだねぇ」


入口付近で上を見て木の実を確認したり四つん這いで草むらを掻き分けて探す

アカムソウは形が独特だが色は緑で他の草に同化して見づらい為じっくりと見て探す

手分けして探す

アゼの実を探しているカエデは1時間ほど探すが見つからない


「ダメだ! 見つからない」

「アカムソウ見つけたよ~、1箇所に凄い生えてた」

「おぉ、なら後はアゼの実だね。奥行くかぁ」

「だねぇ」


森に入って進んでいく

上を見て探すが一向に見つからない


「見やすいはずなんだけどなぁ」

「遠くを見ても見つからないね。あっ、魔物」

「何処?」

「左側一体、距離は50」

「やってくる」


斧を取り出して魔物の居る方向へ突っ込む

草を掻き分けて魔物と接敵する

魔物は気付いて石の斧を構えるが気付いた時には凶刃が襲いかかっていた

為す術なく切り裂かれ魔石が落ちる


「はい終了……この辺も見とかないとな。うん、無いわ」


カレンと合流して奥に進む

しばらく歩いてほぼ変わらない森の景色に見慣れて来た頃に遠くにアゼの実らしき姿を見つける

ようやく見つけたと駆け出す


「カエデちゃん!?」

「あった!」


すぐにカレンもカエデの視線の先を見てアゼの実を見つける

二人は走ってその場所へ向かう


「カエデちゃん待って!」


カレンは急停止をしながら叫ぶ

カエデはその声を聞いて止まろうとするが勢い止まらず目の前の木に激突する


「ギャフっ」


激突した痛みで頭を抱える

(痛っい!)


「カエデちゃん大丈夫?」


カレンはすぐに駆け寄り声をかける


「何とか大丈夫……それで急にどうしたのさ」

「魔物の反応が複数あった」

「魔物? 弱い魔物なら倒しちゃえば……」

「5級相当の魔力が数体居る。多分そのまま突っ込んでたら危なかった」

「まじ?」

「マジ」


近くの草むらから顔を出して木の生えてるところを確認する

だいぶ近くまで来ていたようでアゼの実が生えた木が見える


「ええっとどこだァ……って居た」


アゼの実の生っているのは大木でその周辺に視認出来る所に四体の5級魔物が居る

周囲には背の高い草や木は無く開けている

まるで大木を守るかのように周辺を歩いている

ホーンディアに姿形は似ているが体格は小さく角の形が違う

(多分大木の裏にも居るよなぁ)


「視認出来るだけで四体、流石にきついなぁ。一体二体なら何とかなるけど」

「そうだね。他の場所でアゼの実を探してなかったらギルドに報告しよう」

「ようやく見つけたと思ったのに……」

「戦う?」

「いや無理、多分大木の裏にも居ると思うしゆっくり離れよう」


二人は屈みながらゆっくりとその場を離れようとするが身体に触れて草が揺れる

魔物の一体が不自然に揺れる草に気付き鳴き声を発する

(何この声)

すると周りにいた魔物がその声に気付き草むらに近づいている

裏に居た魔物も集まり数が増える


「ヤバいバレたし数増えた」

「迎撃するよ。炎よ敵を焼き払え、ファイアブレス!」


カレンは杖を取り出して詠唱をする

下級魔術のファイアブレス、現状使える中では2番目に強い魔術

先手で近づいてきていた魔物に魔法陣3つの同時発動で放つ

魔物の数体は魔術を後ろに飛び退き回避する

数体は回避し切れずに魔術を食らうが直撃は避けていていてダメージは少ない


「流石5級、カエデちゃん突っ込みすぎるとフォロー出来ないからね」

「分かってる、合図くれ纏」

「わかった」


魔物は戦闘態勢に入り突っ込んでくる

魔力を纏って合図が来るのを待つ


「……今!」


カレンの合図とともに草むらから飛び出て先頭に居た魔物に取り出した斧で切りかかる

(一撃でぶっ叩く)

奇襲に反応出来ず先頭に居た魔物は斧の振り下ろしが直撃する

斧の重さを利用した全力の重い一撃は直撃すると魔物の頭を叩き割り魔物を倒す

大量の霧のような魔力を出して魔物は姿を保てなくなり魔石だけが残る

突進しようとしていた魔物は全員止まる

奇襲に対しての警戒だろう、逆にカエデは助かったそのまま突っ込まれれば捌き切れない

カレンが後衛に居るとは言え何せ魔物の数が多い

出来れば逃げたいがそう簡単に逃がしてくれるとは思えない


「どうしたかかってきなよ」


魔物を煽る、特に効果は無い

数体が突撃してくる

斧を構えて待ち構える、カレンの魔術が魔物を襲いあえて狙わなかった一体とカエデが戦う


「氷よ礫となれ、アイス!」


他の魔物が近寄らないように魔術による牽制をし続ける

斧を振るう

魔物は角で受け切る


「硬いなぁ」


最初の一体は斧の重さを利用した全力の振り下ろしによって角をへし折ることも出来たが対峙してる状態であの一撃を放つのは難しい

振り上げて振り下ろすという動作は隙が大きい、横薙ぎでも全力の一撃はどうしても隙が大きくなってしまう

そしてその攻撃が当たればいいが避けられると無防備で攻撃を受ける事になる

カレンは他の魔物の牽制に集中しているため手を借りれない


「早く倒さないとならないんでね!」


斧に纏う量を増やして何度も斧で切りかかる

その度に角で攻撃を受ける為どんどん角が欠けていく

斧は耐久性が高く魔力も纏っているので刃こぼれ1つしていない


「これで終わりだ!」


角を切り落とすことに成功し怯んだ魔物に一撃を叩き込んで倒す


「ごめん時間かかった」

「大丈夫、連戦行くよ」

「おっけー」


一体だけ魔術の標的から外してカエデが戦う

先程の魔物より魔術によってダメージが入って動きが若干鈍い

角による攻撃を避けて攻撃を叩き込むが横に飛ばれ入った傷は浅く致命傷には程遠い


「時間かかるなぁ」


角と斧がぶつかり合う

角が欠け始めるが何度も打ち合わないと行けず時間と体力を使う


「埒が明かない……これならどうだ!」


もう一度角での攻撃を仕掛けてきた時槍のように柄の方を突き出して迎撃する

急には止まれず額に柄の攻撃を受けて魔物はよろめく

すぐに持ち方を変えて切り裂く


「よしこれなら楽!」

「次行くよー」

「おっけー」


次の魔物にも試そうとするが額に上手く当てるのは難しく外してそのまま突進が直撃し吹っ飛ばされる


「カエデちゃん!」

「がっ……くっ……」


魔力を纏っていても直撃した突進は重く纏う魔力を大きく削り衝撃は内蔵に響く

(纏ってた魔力がごっそり削れた。重いなぁ)

よろめきながらも立ち上がり斧を構える


「大丈夫! 牽制そのまま続けて」


時間がかかり体力もかなり使うが安定して倒せる角を切り落としてからトドメを刺す戦法を取る

体力の消耗で更に時間がかかる

倒し終えた時には息を切らしていた

魔力との親和性の高い武器とはいえ元は重い斧、剣より重く振り回すのにも力を使う

(剣に変えるか? 剣なら攻撃が速いが)

剣は念の為に腰につけている

斧が破損や使用不可になった時用の予備として持っている


「物は試しだ」


斧をしまって剣を鞘から抜く

剣に魔力を纏わせて突っ込む、寸前で突進を避けて横薙ぎ

入りは浅いが傷口から黒い霧のような魔力が流れる

(浅いがこっちの方が楽か。ただホーンディアの時に刃こぼれしてたか)

ホーンディアの角を切り落とした時に剣は刃こぼれをしていた

突進以外にも角を振り回して攻撃をしてくる

角での攻撃を剣で受けて弾いて隙が生じた所を上手く切り裂く

 

「なんとか倒せた……この相手は剣の方がやりやすいかな、次行ける」

「分かった。結構削ったけど油断はしないでね」

「分かってる」


同じように戦い剣で角の攻撃を防ぐとピシッと音を立てて剣は砕ける

(げっ……)

咄嗟に飛び退き斧を取り出すが防御が間に合わず角による一撃を食らう

今回は魔力の量を増やした為先程よりは受けるダメージは少なく済んだ

すぐに立ち上がり剣を放り投げて斧を取り出す


「ある程度は体力温存出来たけど……このままはきついなぁ。カレンは牽制で手一杯だし」


カレンは手を緩めずずっと魔術を放っている

カレンは体力の消耗したカエデを見て残していた4つ目の魔法陣を戦っている魔物に放つ

カエデに集中していた魔物に直撃しよろめく

そこを斧で仕留める


「カエデちゃん下がって魔術使おう。魔力はあるよね?」

「魔力はまだ余裕ある! わかった。炎よ敵を焼き打てファイア!」


魔術を放ってカレンのいる草むらに戻り魔術を構える


「炎よ敵を焼き打てファイア!」


カエデが使える魔術はこれ一つのみ

炎が魔物目掛けて放たれるが躱される、ファイアブレスと違い範囲が狭い

魔物は中距離攻撃の手段を持たず突進を試みる

カレンは魔術の一つを魔物の前方の地面に放つことで突進を阻んでいる

カエデは必死に放つが当たらない


「当たらない。中級魔術のトルネードは?」

「トルネードは多分大木ごと持ってくから使えないかな。大木に炎魔術当てると多分燃えるから気をつけて」

「大丈夫、私の魔術じゃあそこまでは届かないから……まぁ魔物に当たりもしないけど」


二人の居る草むらから大木までは距離がありファイアだと大木までは届かない

魔術を放ち続けて何度か当てて数を減らす

魔物の残りは三体程度


「体力回復した、二体ならやれる」

「了解、なら牽制しながら一体を倒す」


魔法陣を4つ展開して1つは一体を牽制する為に使って三つは倒す一体に目掛けて放つ


「氷よ礫をなれアイス!」


魔法陣から複数の氷の礫が放たれる

それと同時にカエデが駆ける、斧は持っていない

魔物の懐に入り素早く拳を連続で叩き込み魔物が離れようとすると足を蹴り顔面をぶん殴る


「はあぁぁぁ!」


斧を取り出して振るい斬り倒す

そのタイミングで丁度カレンも魔物を倒していた

残り一体

斧を持ったまま真正面から突っ込む

後ろからカレンの魔術が魔物目掛けて飛んでいく

最初の二発を避けるが時間差で放たれた二発の魔術を受けよろめく


「終わりだ!」


真っ直ぐ走っていたカエデは引き摺っていた斧を力一杯持ち上げてその勢いのまま目の前に振り下ろす

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