カレンVSウェイン・ロードリス

審判がルールの説明をし終える


「カエデちゃんは手加減してたけど私はもう二度と舐めた口聞けなくなる程度には叩き潰すから」

「やれるもんならやってみろ。あいつが強くてもお前が強いとは限らねぇだろ」

「それはその通り」

「それもどうせ弱い魔物に襲われてできた傷だろ」

「さぁどうだろうね。早く始めよう」

「二人共準備は良いですか?」

「はい」

「大丈夫だ」

「それではバトル開始!」


杖を取り出し様子を伺う


「くたばれ! 炎よ敵を焼き打てファイア」


ウェインは炎の魔術ファイアを放つ


「炎よ敵を焼き払え、ファイアブレス」


オルガが使っていた魔術、下級魔術の中でも習得難易度が高いがカレンはとっくに習得済み

相殺どころか押し負けウェインは障壁が削られる


「グッ……ファイアブレスだと……村出身の雑魚に使える訳が」

「次、炎よ敵を焼き打て、ファイア」


間髪入れずに詠唱して放つカレンに対抗して詠唱をする


「炎よ敵を焼き打てファイア」


すぐに詠唱をして相殺する

何度もウェインは炎の魔術を放つが全て相殺される


「攻撃魔術はファイアだけかな。他にはないの?」

「舐めるな! 炎よ敵を焼き払えファイアブレス」


カレンは詠唱を聞いてため息をつく

先程カレンが使った魔術、それはつまり


「炎よ敵を焼き払え、ファイアブレス……それさっき私が使ってるんだけど」


同じ魔術を詠唱して意図的にぶつけると炎が拮抗し消える

同じ魔術、込められる魔力量にもよるが相当の差がなければ相殺されてしまう


「氷よ礫となれ、アイス」

「下級魔術何個使えんだよ……クソが」


氷の礫がウェインに襲いかかる、ウェインは回避行動を取り避ける


「あれカレンなんで魔法陣1つなんだろ?」

「何か策があるのかそれとも手加減してるのか……どちらにしろ余裕と言っていたのは強がりでも過大評価でも無かったという事か」

「まぁ私より強いですし現状私は模擬戦でカレンには一度も勝てていないので」


何度かやっている模擬戦で一度として勝てていない


「そうなのか」

「カレンは纏……あぁ戦士の魔力纏う技術も習ってて私と何度か打ち合えるくらいには近接も強いので接近してもやり合いながら魔術展開されると厳しいです。まぁ流石に近接のみなら私の方が上ですが」

「魔術師の弱点である近接も使えるのか……だが魔術と戦士の技術2つ併用では魔力が切れると思うが」

「カレンは魔力めっちゃ多いです。魔術の訓練を本格的に始めてなかった頃で平均の魔術師よりも高い魔力量を持ってましたし今回の入学試験希望者の中で1番多いと思いますよ」

「恐ろしいほどの才能を持っているな」


ウェインは距離を取り様子を伺う


「来ないならこちらから行きますよ。氷よ礫となれ、アイス」

「風よ敵を吹き飛ばせウィンド」


礫が風に吹き飛ばされ散っていく


「厄介、風よ敵を吹き飛ばせ、ウィンド」


同じ風魔術ウィンドを使い対抗する、風はぶつかり消える


「嘘だろこれもか」

「驚くにはまだ早いのだけど氷よ礫となれ、アイス」


ウェインは驚きが隠せていない

下級魔術とは言えど習得には時間がかかる、ウェイン自体使えない下級魔術が多い

今使った魔術が現在使える下級魔術、これ以上の魔術は使えない

(奴だってこれ以上の魔術は使えないはずだ。魔力切れを狙えば)

基本貴族は平民よりも魔力が多い、それもウェインやオルガは中でも魔力が多い部類

ただそれでもカレンの魔力量には遠く及ばない

魔力の操作技術によりカレンの本来の魔力量の極一部しかウェインは認識出来ない

炎魔術ファイアを使って氷魔術アイスを消滅させる


「この程度?」

「舐めるな! 炎よ敵を焼き払えファイアブレス!」

「まさかもうネタ切れ?」


再び同じ魔術を使い相殺する

魔力切れを狙うウェインは何度も魔術を放つが全て相殺される


「それならもう終わりでいいか……吹き荒れろ風達よ」


カレンは詠唱を始める


「風魔術……ウィンドじゃない。何をする気だ!お前ぇ!」


ウェインは思わず叫ぶ

自分の知らない詠唱、下級魔術の中には無い詠唱を唱えている

1つの可能性が脳裏を過ぎる

それは中級魔術、下級魔術よりも習得の難易度が高く入学試験時点で使えるのは極々一部数十年に一人と言われている


「私の力となり眼前の敵を薙ぎ払え」


魔法陣が3つ現れる


「はぁ? 魔法陣3つ? ……嘘だろ。なんだよこれは」


観戦していた人々も驚く


「あの詠唱はトルネードか中級魔術だぞ!?」

「あの娘何者だ!」

「やべぇのは中級魔術よりも魔術同時発動の方だろ!3つだぞ」

「意味がわからん、現役の魔術師でもそんな芸当出来るのなんて何人いる!?」

「彼女は貴族か?」

「いや、姓が呼ばれていないから貴族では無い筈だ」


観戦席が騒いでいる


「中級魔術使えたんだカレン」


模擬戦では一度として中級魔術は使っていない

もし使っていればカエデは為す術なくやられるだろう


「即戦力、学園どころか王国直属の魔術師団にスカウトされるレベルの逸材」


王国直属の部隊が存在する

騎士団と魔術師団、騎士とは戦士を指す言葉で他の戦士と区別するために騎士団所属の者は騎士と呼ばれている

魔術師団は魔術学園を卒業した者の中でも優秀な者が所属する団である


「カレンつおい……」


(カレン強すぎでしょ。そりゃ余裕ですわ。でも確か4つまで同時発動出来るって聞いたんだけど……)

中級魔術の3つ同時発動、このレベルは魔術学園が出来て初の出来事

それも使っているのが貴族でも無ければ王都住みの平民でも無い小さな村出身の人物

観戦席の人々が騒ぐのも仕方がない、そのくらいの出来事が今この場で起きているのだ


「トルネード」


3つの魔法陣から風が吹き風が周りの空気を巻き込みながら3つの竜巻を形取りウェインに襲いかかる


「炎よ敵を焼き払えファイアブレス!」


必死に魔術を唱えて抵抗しようとするが抵抗虚しく3つの竜巻に襲われ障壁が破壊され場外に吹き飛ばされる

ドチャと音を立てて地面に落ちたウェインは動かない


「あっ、死んじゃったかな?」

『医療班急いでください!』


ドタバタと医療班がウェインに駆け寄り治癒魔術をかけながら状態を確認する

一人の医療班員がカレンに近づく


「怪我はしていますか?」

「いえ、してません」

「でしたら席に戻ってもらって大丈夫です」

「えっと……そちらのウェインさんはご無事ですか? やり過ぎてしまったようですが」

「確認したところ息があったので大丈夫です。幸い障壁のお陰で酷い傷は無さそうなので後は我々に任せてもらえれば」

「それは良かったです」


カレンは待機室を通り観戦席に向かう


「もう少し削ってから撃てば良かったなぁ。殺す気でやったんだけどな。余りにも退屈過ぎて……」


小声で呟く

ウェインは後ろからカエデを蹴った人物、それはカレンにとっては到底許せる物では無かった

自分の身体に残る傷がなんと言われようと別に気にしない

オルガ、ウェイン両名は敵対しては行けない二人に手を出してしまった


「おっ、おかえり~カレン、中級魔術使えたのか凄いなぁ」

「何とか習得間に合ったの」

「合格おめでとう、それどころかおそらくスカウト来ると思う」

「スカウト?」

「お前は王国直属の魔術師団が欲しがる人材だ。スカウトが来るのは確定では無いが来てもおかしくは無い」


稀に魔術学園の在校生を魔術師団や騎士団がスカウトする事はあるが入学試験時点でスカウトは歴史上を見ても存在していないが入学試験は毎年騎士団や魔術師団の団員が見に来ている

この時点から優秀な人材に目を付けている


「もし来てもまだ未熟だから遠慮したいです」

「何、拒否権はしっかりある。来たとしても断っても問題は無い」

「なら良かった……」

「……そろそろ仕事の時間だ。二人と話せてよかった」

「お疲れ様です」

「お疲れ様です、話し相手になってくれてありがとうございました」


ルースはそう言って仕事に戻る

二人は試験が終わるまで雑談を交わしながら戦いを見る


「あの魔術何?」

「あれは……下級魔術の土系魔術アース、小さい土の礫を飛ばす氷系のアイスと似た魔術」

「土系魔術か……あぁそういや下級って沢山あるんだったな」


昔スーザンに教わっていたことを思い出す


「結構あるね。私もまだ全ては使えないかな。先に中級魔術の習得してたから」

「中級魔術はあれ1つ?」

「1つだね、次なんの魔術覚えるか悩んでる所」

「トルネードと同じ風系統の魔術を覚えるのが手っ取り早いですが別の属性系魔術を覚えるのも良いかと、それか支援系の防護魔術を覚えるのもありです。難易度が高いですがあるとかなり頼もしいですから」


先程ルースが座っていたところに1人の少女が座り会話に混じる

防護魔術は中級魔術よりも習得難易度が高い

専門の魔術師が居るくらいには優秀な魔術だが使う魔力量が多く乱発が出来ない


「あぁ……確か同じ系統の魔術は覚えやすいんだっけ?」

「はい、魔法陣に刻まれた術式の一部が同じなので他の系統の魔術よりは覚えやすいです。ただ魔術の属性に関しては属性の相性が存在しますので同じ属性魔術だけというのは相性の悪い相手と戦う時に厳しくなります」


相性が悪い魔術に対しては同じクラスの魔術だと押し負ける

魔術に込める魔力の量の差があれば覆せるが基本撃ち合いでは押し負けてしまう


「成程、覚えられるなら他の属性の中級魔術を覚えた方がいいと、確かに他の属性系魔術か防護魔術が良さそうですね」

「最も魔力が多く相性の良い系統の魔術を極めた人なら相性をほぼ無視出来ますよ」

「相性を上から潰すって発想自体がもう脳筋過ぎないかなそれは……防護魔術はあれば便利だよね」

「そうだね」

「正しく強者の特権と言う奴です」

「……ところで誰?」


ようやく違和感に気づきカレンは少女に聞く


「うん? ……自然過ぎて気付かなかったわ」


カエデは言われてようやく少女の存在に気づく


「私は結構影が薄いので忍び寄るのが得意です」

「それは自慢に……はえっ?」


カエデは少女の姿を見て変な声を上げる


「どうしたの?」

「どうかしましたか?」

「い、いや、えっ……あ、貴女は……」


余りにも想定外の出来事に脳の処理が追いついていない

カエデはこの少女に見覚えがあった

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